第60話 クラス対抗戦
前回のあらすじ
ジュリウスとレティシアが婚約(未発表)した
B組との対戦は今までの二戦と違い、激戦と言う言葉が相応しかった。
どちらのクラスも二勝してるから、この対戦の勝者が優勝するというのもあるのかもしれない。
アーニャは先鋒として相手の先鋒には勝ったけど、次に出て来た中堅には接戦の末に敗北を喫した。
まあ、先鋒として十分に役目を果たしたと言える。
中堅の委員長は若干劣勢になりながらも、一瞬の隙を上手く突いてそのまま勝利をもぎ取った。
この逆転劇には観客も湧き立ったけど、次の相手が悪かった。
B組の大将として出て来たアル相手に為す術無く、すぐに敗北を喫した。
特設ステージを降りた委員長は、僕に謝罪の言葉を述べる。
「ごめんなさい、ジュリウス君。負けちゃった……」
「いや、相手が悪かったよ。それに始まる前にも言ったでしょ? 最後は僕に任せて、そこで待ってて。勝ってくるから」
「頑張ってね、ジュリウス君」
「頑張って下さい、ジュリウスさん」
委員長とアーニャの二人から激励の言葉を貰い、僕はステージに上がる。
アルは所定の位置に着いて、僕が上がってくるのを黙って待っていた。
腕や肩を軽くほぐしつつ、僕も所定の位置に着く。
「待たせたね、アル」
「それほどでもないさ。……それじゃあ早速」
アルは腰を低く落とし、彼の得物である双剣を逆手に構える。
僕も姿勢を低くして、どんな攻撃が来ても良いように構える。
「それでは――始め!」
審判の合図と共に、僕とアルは同時に動いた。
「《クリエイト:アロー》!!」
「《ミラージュ》!!」
僕は創砕魔法で大量の矢を生み出して、アル目掛けて一斉射する。
アルもアルで、アルの魔法である幻影魔法で自身の分身を複数生み出して大量の矢を次々と迎撃する。
そんな中で本物が僕に向かって一直線に突撃してくる。
ご丁寧にも、自分に向かってくる矢を次々と弾き落としながら、だ。
軽く舌打ちしつつ、こんなのは想定の範囲内だから次の魔法を発動させる。
「《ウェポンブレイク》!」
僕の魔法が発動した瞬間、アルの双剣の刀身が根元から粉々に砕け散った――けど、瞬きの後には順手に構えた状態で元の姿に戻っていた。
もしかしても何も、さっきのアルの魔法で刀身すらも分身させていたようだ。
なら逆手に構えていたのも、僕が破壊する事を見越して対策していた事になる。
それも――予想内だ。
「《クリエイト》!」
僕がまた魔法を発動させた瞬間、アルはその場で足を止める。
僕が何を生み出したのか警戒しているのだろう。
実際に創造魔法の使い手である母さんから教わった事だけど、創造魔法は創る物に指向性を持たせれば消費する魔力を抑えられるらしい。
だから僕は破壊魔法も使う関係上、魔力消費を抑えるためにいつも創造魔法に指向性を持たせていた。
そして今回、その指向性を持たせなかった。
去年一年間一緒にいたアルだ。警戒するなと言うのが無理な話だろう。
だからこそ、この魔法が決まる。
フッと、ステージ全体に影が差す。
僕は何が起こっているのか分かるから見上げなかったけど、アルは見上げて驚いたように目を見開いていた。
僕達の頭上には――それだけでステージを破壊出来る質量の巨岩が落下してきていた。
アルは慌てた様子で、僕の方に視線を戻す。
「おい、ジュリウス! これは反則だろう! 互いに死ぬぞ!?」
「そんなヘマしないよ! 《ブレイク》!」
アルの言葉にそう返し、自分で生み出した巨岩をわざわざ自分の魔法で破壊する。
そして無数の礫となって、雨のようにアルとその分身に向かって降り注ぐ。
これは自棄でも何でも無く、れっきとした作戦だった。
相手が魔法で分身するのなら――それを上回る質量で本物もろとも押し潰せば良い。
……まあ、死なないように手加減はするけど……。
アルは数秒悩んだ後、再び僕に向かって突撃してくる。
押し潰される前に僕を片付ける事にしたらしい。
これは――残念ながら、想定内だ。
僕は右手をアルの方に向け、チェックメイトを掛ける。
「《クリエイト:ブレイク》!!」
父さんによれば、破壊魔法は点・面での破壊は出来るけど、線での破壊は基本的に不可能らしい。
まあ父さんは、連続的に点・面を破壊する事で一見線で破壊したように見せかけた事があるって言ってたけど……。
では問題。
その点・面でしか破壊出来ない破壊魔法を、創造魔法で指向性を持たせて発動したらどうなるか。
それは―――。
バリバリバリパリパリパリ! とガラスを割るような音と落雷の音を足したような音を立てて目の前の空間を破壊しながら、空間破壊の津波と言う形でアルに向かって迫る。
アルは双剣を交差させて防御態勢を取る――けど、無駄だった。
創造魔法で生み出した破壊魔法の威力を押し留める事が出来ず、そのままステージ外まで押し流されていく。
この魔法、普段の破壊魔法を使うよりも五倍以上も魔力を消費する。
創造魔法で指向性を持たせてるから魔力消費が抑えられているにも関わらず、だ。
だから余程の事が無い限り、この手札は切らないように心掛けている。
去年はこの手札を切る事は無かったから、アルが対処し切れなくても無理はない。
僕が挙げていた右手を下ろすと、審判が声を上げる。
「そこまで! 勝者、A組! 今年度のクラス対抗戦・二年生の部の優勝は――二年A組!!」
優勝を告げられた瞬間、観客席から割れんばかりの歓声が轟いた―――。
主人公らしい能力を手に入れたんじゃないでしょうか、ジュリウスは。
……あ。次回から新章です。
更新は二週間後の予定です。
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