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第59話 条件

前回のあらすじ

ジュリウスの婚約者(仮)はレティシア

 

 取り敢えず婚約の件は当事者である僕達に任せると言って、父さん達は僕達の前から離れて行った。

 残された僕は、まだ理解が追い付いていない委員長を落ち着かせるために、近くにあったベンチに座るよう促す。


 委員長は座ると同時に頭を抱え、深い溜め息を吐く。


「はああああああぁぁぁぁぁぁ〜〜〜……」

「えっと……委員長?」

「………………うん。まだ納得は出来てないけど、理解はしたわ」

「本当に?」

「本当に。……でも、ジュリウス君は良いの? 私が婚約者で?」


 そう言って委員長は上目遣いで僕の顔を見上げてくる。

 委員長は客観的に見ても美少女の類だし、クラスの皆から『委員長』っていう役職がそのまま愛称になる位には器量も良い。

 ……あれ? 委員長って結構優良物件なのでは?


「まあ好きな女子もいないしね。委員長さえ良かったら、だけど」

「う〜ん……私も今好きな人いないし、ジュリウス君の事嫌いってわけでも無いから……うん。婚約しても良いかな」

「そっか……それじゃあ一つ、条件を付けよう」

「条件?」


 委員長がそう聞き返してきて、僕は頷く。


「うん。僕達はお互いを好きになって婚約するわけじゃないから、どっちかが本当に好きな人が出来たら婚約を破棄しよう」

「えっ、良いの?」

「うん。まあ、この学園を卒業するまでっていう期限は設けるけどね。人生何が起きるか分からないんだ。これくらいの条件を付けたって大丈夫でしょ」

「そんな楽観的な……」

「僕の両親が互いに婚約破棄された後に結婚したからかな? 初めから婚約破棄っていう選択肢があるのは。それに、委員長にもし本当に心の底から好きな相手が出来た時に、僕と婚約してるっていうのが足枷になると悪いしね」

「そうなんだ……さて、と」


 委員長はベンチから立ち上がり、右手を差し出してくる。


「改めてよろしくね、ジュリウス君。婚約者として」

「こちらこそよろしく、委員長。婚約者として」


 そう言って、僕は委員長の手を握り返した―――。




 ◇◇◇◇◇




 クラス対抗戦の会場である修練場に戻り、続く二戦目の対戦相手であるC組もアーニャと委員長だけで倒し、休憩時間にお互いの両親にさっきの事を伝える。

 すると父さんも母さんも、特に異論は無いようで納得してくれた。


「ジュリウスがそれで良いならわたし達から言う事は特に無いけど……婚約破棄も見越して婚約するなんて聞いた事が無いんだけど?」

「だって、お互いが好きで婚約するわけじゃないし。もし委員長に本当に好きな人が出来た時に、僕と婚約してるのが足枷になるのは僕としても不本意だからね」


 そう返すと、母さんはやれやれと言った風に肩を竦める。


「優しいと言うか、薄情と言うか……まあ良いわ。ジュリウスらしいって言ったららしいし」

「それで、婚約発表はどうする?」

「父さん達の都合が良いタイミングで良いよ。委員長にもそれで良いっていう意思は確認してる」

「手際が良いな……なら分かった。婚約発表は僕達でやっておくよ。……ああ、そうそう。レティシアちゃんと婚約したっていう話はまだしないでいてくれると助かる。打ち明けても良いのはオリバーくらいかな?」

「分かった。父さん達の発表まで隠しておけば良いんでしょ?」

「そうだね。……それじゃあ最後の対戦、頑張れ」

「応援してるね」

「ああ、うん。ありがとう」


 そう返し、手を繋いで観客席へと戻っていく両親の背中を目で追う。


 まったく……二人共良い年なのに、未だに新婚みたいにアツアツなんだから……。

 まあ、不仲であるよりは遥かにマシだけどね。


 そんな下らない(?)感想を抱きつつ、僕も会場の方へと戻って行った―――。




 ◇◇◇◇◇




 会場に戻ると、今日最後の対戦である僕達A組とアルがいるB組の対戦予定時間十分前の、代表者集合時間だった。

 入場口にはもう、アーニャと委員長の二人の姿があった。


「お待たせ、二人共」

「いいえ。わたくし達も今来たところです」

「……ジュリウス君。ちょっと……」


 委員長にそう言われ、アーニャに聞こえないところまで離れる。

 アーニャは首を軽く傾げていたけど、僕達に何かあるとは考えていないようだ。


 それでも、アーニャに声を聞かれないようにひそひそと声を抑える。


「……何?」

「……さっきの件、パ……父に話したわ」

「……それで? 委員長のお父さんは何て?」

「……『二人の意思を尊重する』って」

「……分かった。たぶん後で話があると思うけど、僕達の関係は父さん達が正式に発表するまで秘密って事でお願い」

「……秘密の関係か……なんだか悪い事してるみたいでわくわくするわね」


 ……実は委員長って、結構ノリが良い……?


 何て思っていると、開始五分前のブザーが鳴り響く。

 代表者入場の合図だ。


 僕は気持ちを切り替え、アーニャの下に委員長と戻り、このチームの大将として最後の激励の言葉を送る。


「アーニャ、委員長。あと一つだ。あと一つだけ勝てば僕達の優勝だ。そしたら……今日はパァ〜っとクラスの皆全員で大食堂で打ち上げをしよう」

「良いですわね、それ」

「ええ。すごく楽しそう」

「うん。そのためにも……二人には絶対に負けるなとは言わない。最後は僕に任せて欲しい。負けないからね、僕は」

「頼りにしてます」

「任せたわ」

「……よし。それじゃあ行こうか!」

「はい!」

「ええ!」


 二人の今までよりも気合いの入った返事を受け、僕はそんな二人を引き連れる形で入場口をくぐっていった―――。






これでジュリウスが婚約破棄される下地は出来ました。

……モンスターをハントするゲームをしてる最中に思い付いたなんて言えない(小声)。




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