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第57話 模擬戦/ジュリウスVSティア

前回のあらすじ

レティシアが模擬戦をした

 

 フィールドに上がると、いつもよりも少し真面目な顔付きのティアの表情が目に映る。

 彼女の背後には、彼女自身が呼び出したシルフィードの姿がある。


 魔法は両親からの遺伝を強く受ける傾向があり、ティアやオリバーみたいに両親の魔法をそのまま受け継ぐパターン、僕みたいに両親の魔法が掛け合わされて複合的な能力を手に入れるパターンがある。


 前者は良く起こるけど、後者に関しては両親の魔法の相性がとても良くないとほとんど起こらないらしい、って実家の近所に住むダビデ爺さんが教えてくれた。


「こうして向かい合うのは去年以来ね」

「そうだね」

「去年は負けちゃったけど……その雪辱をここで晴らさせてもらうわ!」

「出来るの、ティアに?」

「出来るわよ! 《サラマンダー》!」


 そう叫ぶと、ティアは今度は全身を燃え盛る炎に包まれた巨大なトカゲを呼び出す。

 それに対抗するように、僕も魔法を発動させる。


「《クリエイト:ソード》!」


 僕の背後に無数の剣が生み出され、それらを一斉に精霊達に向かって飛ばす。

 それと同時に、ティアに向かって接近していく。


「【炎の弾】、《ファイアバレット》!」

「《ブレイク》!」


 ティアは僕を接近させないように炎弾を飛ばしてくるけど、それらを魔法で全て破壊していく。

 剣の方は、精霊達の風と炎によってそのほとんどを撃ち落とされていた。

 でも無事だった剣の何本かは、精霊の体に突き刺さっている。


「ホンット厄介ね、アンタの魔法! 《ウンディーネ、ノーミード》!」


 ティアは僕との距離を一定間隔に保とうと後退しつつ、新たに二体の精霊を呼び出す。

 ウンディーネは体の全てが水で出来たウミヘビ、ノーミードは鱗に似た外殻を持つモグラみたいな姿をしている。


 ティアが呼び出せる精霊は確かこの四体だけだったハズだから、総力戦と言うには少し戦力過多な気がしないでもない。

 まあ、去年はこの布陣を真正面から打ち破ったんだけどね。


「そっちがその気なら……《サモンブレイク》!」


 今度は破壊魔法で、()()()()()()()()を破壊する。

 破壊魔法の中には、特効効果のある魔法が存在する。

 その魔法で、召喚魔法を破壊した。


 召喚魔法を破壊したから、精霊達が元の世界へと帰って行く。

 召喚魔法には、同じ個体を再召喚するためのクールタイムが存在し、それが終わらないと再召喚する事が出来なくなる。

 基本的には、丸一日のクールタイムが存在する。


 だからこの模擬戦の最中はティアはもう精霊を召喚する事が出来ない。

 それでも、ティアが弱体化したとは思っていない。

 ティアにはもう一つ、母親譲りの才能があったからだ。


「【虹の矢】、《レインボーアロー》!」


 ティアの手から、全ての属性の矢が次々と飛んで来る。

 一々破壊していると効率が悪いから、生み出した剣を両手に握って矢を弾き返しつつティアに再び接近していく。


「【土の壁】、《アースウォール》!」


 するとティアは、僕を接近させまいと土の壁で自身と僕とを隔てる。

 それを魔法で破壊――しようとして、思い留まる。


 魔術で造った壁だけで僕を足止め出来るなんて思っていないハズだ。特にティアなら。

 で、あるならば……。


「《クリエイト:シールド》!」

「《アクアバレット》!」


 勘で左側にシールドを張るのと同時に、ティアが壁の向こう側から現れて魔術を放ってきた。

 あとちょっとでも防御が間に合わなかったら、ティアに主導権を握られてそのまま押し切られていたかもしれない。


 でも、ティアは魔術の発動で足を止めている。

 それは逆にチャンスでもあった。


「《クリエイト:チェーン》!」

「なっ!?」


 ティアの足下からチェーンが生えてきて、そのままティアの身体を縛り上げる。

 警戒心を少しだけ残しつつ、ティアに近付いて行く。


「くっ、このっ……ジュリウス! このヘンタイ! 女の子縛り上げて楽しいの!?」

拘束(そう)でもしないとティアを止められないじゃん」

「くっ……良い気になるのは早い……ぶべっ」


 なんだか反撃されそうな気がしたから、チェーンを操ってティアをうつ伏せの状態で組み伏せる。

 そして今度こそ何も出来ないように、チェーンの上からティアの身体を軽く踏みつける。


「ティア。降参する?」

「…………ょ」

「ティア?」

「良い気になるのは早いわよって言ったのよ!」


 ティアはそう叫び、僕はティアの右手に視線を向ける。

 人差し指と中指を綺麗に揃え、その指先を僕に向けていた。

 そしてその先端には、小さいながらも水の球が生み出され……って、まさか!?


 全身に一気に緊張が走り、僕は慌ててティアから大きく離れる……いや、離れようとした。

 ほんの少しだけ回避するのが遅れ、水の球から放たれた一筋の水流が僕の頬を掠める。


 たたらを踏み、仕方なくティアの右腕を少し強めに踏みつける。


「くっ……」

「いたっ、痛いから、ジュリウス!」

「……こうでもしないとまた反撃してくるでしょ?」

「降参! 降参するから!」

「本当に?」

「本当に!」


 ティアは約束は絶対に破らないから、この言葉は信じられる。

 だからティアの右腕から足を退けて、チェーンによる拘束もほどく。

 ティアは起き上がり、身体の調子を確かめるように手首や肩をぐるぐると回す。


「それにしても……いつの間に無詠唱で魔術を発動出来るようになったの?」

「うん? 出来てないわよ?」

「えっ、でもさっき……」

「ジュリウスに聞こえないくらいの小さな声で呪文を唱えてただけ。ジュリウスには聞こえてなかったから、無詠唱だって勘違いしても仕方ないわね」

「そっか……」


 そう言って頷き、ティアに手を差し出す。

 ティアはその手を取り、立ち上がる。


 その後、軽い反省会をしてから今日の模擬戦を終えた―――。






幼馴染同士の対決は今回はジュリウスに軍配が挙がりました。




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