第52話 代表選出
前回のあらすじ
ティア、アルマ、アーニャは同室になった
新学期が始まってから二ヶ月が過ぎた。
アーニャもクラスに馴染んできたようで、すっかりクラスの中心人物となっていた。
護衛兼世話役を発表するとなった時にクラスメイト―主に男子―が一縷の望みに掛けたみたいに湧き立ったけど、それが僕とティアだと明かされた時には反論が出る……事は無く、「やっぱりなぁ〜」という表情を浮かべていた。解せぬ。
そして今日、ロングホームルームでは―――。
◇◇◇◇◇
「今年もこの時期がやって来ましたねぇ〜。今日は来月に開催される、『学年別クラス対抗戦』のメンバーを決めたいと思いますぅ〜」
教壇に立つマリー先生がそう言うと、ざわざわとざわめきだす。
そんな中、アーニャが手を挙げる。
「マリー先生。その……対抗戦、ですか? それはどのようなモノ何ですか?」
「ああ……アナスタシアさんは初めてでしたねぇ〜。それでは改めて説明しますねぇ〜」
マリー先生はそこで一旦言葉を区切り、続ける。
「学年別クラス対抗戦と言うのはぁ〜、読んで字の如くそれぞれの学年のクラスがぁ〜、その学年で一番のクラスを決める戦いですぅ〜。各クラスからは代表者を三人選ぶ決まりですねぇ〜」
「なるほど……理解しました」
「良かったですぅ〜。……それでは皆さん、話し合って代表者を決めて下さいねぇ〜」
マリー先生がそう言った途端、皆の視線が僕に集中する。
「ジュリウスは決まりだろ」
「そうだな」
「そうだね」
「そうね」
「去年の活躍を知ってるとね」
「そうだよなぁ……」
「……ちなみに聞くけど、僕に拒否権は……」
「「「あるわけ無いだろう(でしょう)、そんな物」」」
僕の意思に関わらず、出場はほぼ強制のようだ。泣いて良いかな?
何て思っていると、唯一と言っても過言では無い味方が待ったを掛けた。
「皆さん。そんな、ジュリウスさんの意向も聞かずに決めるのは……」
「でも絶対に勝ちに行くにはジュリウスは外せないのよ」
「勝ちに? どういう事ですか?」
アーニャが聞き返すと、ティアはその疑問に答える。
「優勝賞品がね、あるのよ」
「……? まあ、あってもおかしくは無いですね。その優勝賞品というのはいったい何なんですか?」
「大食堂と購買で使える無料券、一ヶ月分」
「出ましょう、ジュリウスさん」
驚くほどの早さでアーニャは手の平を返して、ティア達クラスメイト側に立つ。
味方が一人もいなくなった僕は観念する。
「はぁ……分かったよ。出るよ」
「決まりね。……後二人か……なら、わたしも――」
「あ、ごめんなさい〜、言い忘れてましたぁ〜。ジュリウス君とティアさんはどちらかしか出場出来ないですぅ〜」
ティアが立候補しようとしたその時、思い出したかのように……と言うか実際思い出したのだろう。マリー先生がそうアドバイスをしてくる。
まあ、ティアも去年大活躍していて、しかも今年は僕と同じクラスと言うんだから、何かしらの縛りがあってもおかしくは無かった。
「む……残念」
「代わろうか?」
「お断りよ。わたしが出たら勝率が下がるもの」
もしかしたら出たがっていると思ったけど、それは僕の幻想だったようだ。
するとアーニャが、小さく手を挙げる。
「あの……でしたらわたくしが出場しても構いませんか?」
「良いと思うけど……どうしてまた?」
「このような行事に参加した事が無いので、出てみたいなぁ……と思いまして……」
「アーニャ本人の意思ならそれで良いけど……皆は?」
そう言ってクラスメイト全員を見回すけど、皆から反論が上がる事は無かった。
むしろ、アーニャを鼓舞する応援の声の方が大きかった。
「応援ありがとうございます。皆さんの期待に応えられるように頑張りますね」
「……僕とアーニャと、後一人か……誰かいない?」
「なら私が出ても良いかな?」
すると、一人の女子が真っ直ぐに手を挙げる。
彼女はレティシアで、このクラスの学級委員を務めていた。
如何にも優等生と言った感じに長い金髪を三つ編みに結んでいて制服もきっちりと着こなし、かと言って堅苦しさを感じさせないフレンドリーな性格から皆から『委員長』の愛称で呼ばれていた。
「良いと思うけど……何でまた?」
「編入生のアーニャさんが出るのなら、学級委員である私も出た方が良いかなって思って」
「……僕が出る事には?」
「えっ? 何とも思わないけど? むしろ優勝は固いと思ってるわ」
……うん。僕に味方は本当にいないみたいだ。
こうして、結構サクッとA組のクラス代表は選出された―――。
そこそこ不憫な主人公、ジュリウス。
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