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第47話 ある提案

前回のあらすじ

ポルクス達の子供が帰って来てる

 

 実家に滞在したのは二週間程で、僕達はオーロラの街へと戻って行く。

 別れ際、妹達が僕よりもティアとの別れを惜しんでいたのは解せない。

 僕の方が血の繋がりがあるって言うのに……。


「はぁ〜……やっぱりジェシカちゃんとジェニカちゃんって可愛いね。本当の妹にしちゃいたいくらい」


 馬車の中、向かい側に座るティアはニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべて、叶わぬ願いを口にする。

 僕の隣に座るオリバーは、剣を抱き抱えたまま居眠りをしていた。


 僕の護衛のハズなんだけど……まあ良いか。

 屋敷にいる間、シグルドさんに滅茶苦茶しごかれた様だし、今はゆっくりと眠らせてあげよう。


 そんな事より……。


「やらないよ?」

「何でよ。一人くらい頂戴よ」

「ティアにだって弟はいるでしょ?」

「でもわたし、弟よりも妹が欲しかったんだもん」

「じゃあ頼めば良いじゃん」

「今更? それにそれって……」


 返しを間違えたかな? って思っていると、一体ナニを想像したのか、ティアは顔を真っ赤にして俯く。

 同い年とは言え、二ヶ月くらい早く産まれたからって僕に対しても姉ムーブをよくかますティアを、日頃の不満込みで上手くからかって気も晴れた僕は、窓に肘をついて馬車の外の景色を眺め始めた―――。




 ◇◇◇◇◇




 ルージュの街から半日程で、オーロラの街に戻ってきた。

 この街は交易都市として建造されているだけあって商人の出入りが激しく、街全体が活気付いている。

 それと教育機関もだいたい揃っていて、街の規模だけで言えば帝都に勝るとも劣らない。


 そんな街を治める領主がティアの母親であるソロモンさんで、その屋敷に新学期が始まるまでお世話になる事になっている。

 聞く所によると、ソロモンさんはルージュの街がまだ村と言える規模の時、そこの領主を務めていたらしい。

 それから色々あって、今は父さんが領主を務めている。


 だから……と言って良いのか分からないけど、ウチとティアの家は家族ぐるみでの交流がある。

 そうじゃなければ、お互いの家に自分の子供を預けるなんて事はしない。


 閑話休題。

 馬車がティアの実家である屋敷の正門前で停まる。

 馬車から降りると、屋敷の方からソロモンさんが歩いてくる。


「やあ、お帰り、ティア。それとジュリウス君とオリバー君は久しぶりだね」

「ただいま、お母さん」

「「お世話になります」」


 ティアはソロモンさんに抱き着き、僕とオリバーはお世話になるから頭を下げる。

 ……と、そうだ。


「ソロモンさん。コレ、僕の母とアビシャグさんからです」

「ポルクスちゃんとアビ姉からだから……中身は焼き菓子とかかな?」

「はい」

「後でお礼の手紙を出しとかないとね」


 ソロモンさんはそう言って、僕から焼き菓子の入ったバスケットを受け取る。


「さあ。ここで立ち話も何だから、早く中に入って。移動で疲れたでしょ? ゆっくりすると良いよ」

「あまり疲れてないけど……うん。そうするね」

「……あ。ティアは後で執務室に来てね。ちょっと話があるから」

「……? うん、分かった」


 ティアはそう返事し、僕達は屋敷の中へと入って行った―――。




 ◇◇◇◇◇




「それで? 話って何?」


 執務室に入って早々、わたしはお母さんにそう尋ねる。

 お母さんは机に肘をついたまま、笑顔で聞き返してくる。


「それよりも……ティア。今好きな人とかっているの?」

「好きな人? え、いないけど……何で?」

「本当に? ジュリウス君と仲良いでしょ? 好きなんじゃないの?」

「ジュリウスは幼馴染として仲が良いだけだよ。異性として見た事なんて一度も無いよ」


 これは嘘偽りの無いわたしの本心で、ジュリウスは異性と言うより家族みたいな感じでいつも接してる。

 きっとあっちも、わたしの事なんて一人の女の子として見てはいないだろう。別に良いけど……。


 それよりも……。


「それで? 話ってわたしの恋愛事情についてなの?」

「ある意味では関係してるからね。……はい、これ」


 お母さんはそう言って、一通の封筒を差し出してくる。

 それを受け取り、中から一枚の紙を取り出す。

 その紙には、どこぞの貴族子女の名前や情報が記されていた。


「……? 何これ?」

「ティアの婚約者候補」

「へぇ〜、婚約者候補………………誰の?」

「ティアのだよ」


 聞き間違いだと思ったけど、聞き間違いじゃなかったみたいだ。

 わたしも貴族家に産まれたからそういう話は無いわけじゃないってほんの微かに意識してはいたけど、あまりにも急過ぎる。

 と言うか早い気がする。


「早くない? わたしまだ十四才だよ?」

「まあ相手が相手だからね」

「相手?」


 そこで改めて、紙に記されている情報にしっかりと目を通す。

 わたしに婚約を申し込んできたのは、アースガルド帝国の公爵家の子息らしい。

 公爵……つまり、皇族の血縁者って事か……って、えええ!?


「はっ……ええっ!? 公爵家って、はあっ!?」

「驚くのも無理は無いよね。僕もユフィリア陛下からこの話を持ち掛けられた時に驚いたんだもん」

「えっ? 皇帝陛下から?」


 ……それって王命とほぼ同義なんじゃ……。


 なんて言う思いが顔に出ていたのか、お母さんは肩を竦める。


「陛下は別に断っても良いって仰ってたから、この話を断っても良いんだよ?」

「う〜ん……婚約するかどうかは別にして、一度会ってはみたいかな?」

「分かった。それじゃあ、学校が始まる前までに一度会えるように提案しておくよ」

「ありがとう、お母さん」


 話はこれで終わりだったようで、わたしは執務室を後にした―――。






今回は婚約破棄される場面まで、比較的スローペースで進んでいくと思います。




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