第43話 エルフの姫君
前回のあらすじ
とある計画が進行中
ルージュ村に戻る最中、村に通じる街道で盗賊か何かに襲われている豪奢な馬車を見掛けた。
見掛けてしまった以上、見過ごす事は出来ない。
あたしは刀を抜きつつ、馬車の方へと走っていく。
すると襲撃者の一人があたしの存在に気付き、長剣を向けてくる。
それを振るわれる前に襲撃者に接近し、すれ違い様に刀で斬り伏せる。
そこでようやく他の襲撃者もあたしの存在に気付いたようで、一斉にあたしに襲い掛かってくる。
それらを片っ端から刀の錆びにするには、五分と掛からなかった。
「……ふぅ〜……」
倒し損ねた気配が無い事を確認したあたしは、張り詰めていた緊張の糸を解すように薄く長く息を吐く。
見ると、あたしが戦っている間何処かに隠れていたらしいロビンが、馬車の方へと近付いていた。
「……この紋章。まさか、ね……」
「……? どうかしたの?」
「もしかしたら厄介な事になると思うから、先に謝っておく。すまない……」
「厄介な事? って……」
何が何だか分からないままでいると、ロビンは馬車の扉の取っ手を握りガチャガチャと動かす。
内側から鍵が掛けられているのか、それとも襲撃された際に扉が歪んだのか分からないけど、中々開かなかった。
すると、バキッという音と共に、扉の取っ手が馬車から外れてしまった。
壊した張本人の顔を見つめると、ロビンもまた手元に視線を落としていた。
「……」
「……」
「まあ良いか……開いた事に違いは無いし……」
「いや、良くないでしょ」
あたしのツッコミを無視し、ロビンは馬車の扉を開ける。
あたしも彼の横に近付き、馬車の中に目を向ける。
中には、一目で豪華だと分かるドレスを着たエルフの少女と、彼女の護衛とおぼしき人間の女騎士の二人だけがいた。
「大丈夫か……?」
「あ、貴方方は……?」
「あたし達は怪しい者じゃないですよ、安心して下さい」
「……そう言うのは大抵、怪しい奴等だけ……」
「ロビンは黙ってて!」
あたしのツッコミをまた無視して、ロビンは二人に話し掛ける。
「ところで……貴女方は……?」
「そういう貴方は?」
「……そうか。この姿だと警戒されるか……」
ロビンはそう呟くと、変装を解く。
「……私はロビンフッド。ロビンフッド・ロキ・ラグナロクです」
「ラグナロクって……」
「『陰の皇族』が、どうしてこんな所に……」
「私の素性は明かしました。今度は貴女方が答える番では?」
「失礼しました。私はティターニア。ティターニア・エル・シルファニアです。こちらは従騎士のアリス」
「……アルヴヘイム連邦一の領土を持つシルファニア王国の姫君が何故このような所に? それと護衛の騎士は他にいないのですか?」
相手が高貴な立場のニンゲンだと分かったからなのか、丁寧な言葉遣いになっていた。
するとティターニアと名乗った少女は、悲しげに目を伏せる。
「護衛の騎士達は、その……盗賊達に為す術無く……」
「そうですか……勇敢な騎士達の冥福を祈ります。……ところで話は変わりますが、近くに村があります。そこまで案内しましょう。少しでも身体を休まれた方がよろしいかと」
「……姫様」
「そうですね……お言葉に甘えさせて頂きますね」
「分かりました。……馬車もダメージを受けてますね。村まで歩けますか?」
「ええ。この際、贅沢は言いません」
「では道中は我々も護衛しましょう」
しれっとあたしも護衛の頭数に入れながら、ロビンを先頭にしてルージュ村へと戻って行った―――。
◇◇◇◇◇
「ふぅ〜ん、なるほどね……」
ソロモンと久しぶりのデートを楽しみつつ、彼女の口からルージュ村の領主代行を任せているヒト達の話に耳を傾ける。
彼女の言葉の端々から、彼等への信頼感が窺える。
「頼りになるってのはなんとなく分かるよ」
「うん。だからね、譲ろうかなって」
「譲るって……領主の座を?」
「うん。良いかな?」
ソロモンは上目遣いで、ぼくにそう尋ねてくる。
彼女のお願いは無理難題以外は出来る範囲で叶えてきたし、愛する妻にこんなお願いをされて断れる夫なんていない(断言)。
「良いんじゃないかな? それにルージュ村の領主はソロモンなんだから、ソロモンが決めた事ならぼくはそれを支えるだけだよ」
「ありがとう、アルス。大好き」
ソロモンはそう言うと、手を繋いだまま腕を絡んでぼくに密着する。
それが彼女なりの愛情表現の仕方だし、甘え方だった。
そんな可愛らしい妻の頭を軽く撫で、デートを再開した―――。
領主代行から領主になりそうなカストール。
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