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第38話 盗賊の王 前編

前回のあらすじ

大盗賊団が村を狙ってる

 

 ロビンフッドと名乗った少女とムサシさんは早速、その大盗賊団がいるとおぼしき場所に向かって出発した。

 朝ご飯を食べてからでもいいんじゃ? って思ったし言ったけど、ロビンちゃん曰く、「こういう事は早さが肝心」らしい。

 だから二人には昨日の残りのパンをいくつか渡し、見送った。


 二人の姿が消えた後、屋敷に戻る。

 するとクリームヒルトさんと出会した。


「おはよう、クリームヒルトさん」

「おはようございます。……? 誰か来ました?」

「実は……」


 そう切り出し、昨夜の出来事を伝える。

 するとクリームヒルトさんは、驚いたような顔をする。


「ロビンフッドって……あのロビンフッドですか!?」

「……? どのロビンフッドか分からないけど……」

「……コホン、失礼。ちょっと取り乱しました。ロビンフッドって言うのは、この帝国内で知らぬ者はいないくらいの義賊なんです」

「へぇ〜、義賊……」

「義賊かぁ……」

「……」

「……」

「「……いや、盗賊じゃん!」」


 カストールとハモりつつそう叫ぶと、クリームヒルトさんは頷く。


「ええ。ですけど、ロビンフッドの目標は悪徳領主が不正で不当な手段で貯めに貯めた金銭を奪い民衆にばら蒔くか、もしくは善意の忠告ですね……うん? ここに来たって事は、カストールさんも不当に金銭を貯めてたり……」

「これでも清廉潔白な身なんだけど……」

「冗談です。……なら、善意の忠告ですか?」

「うん。何でも、『アラジン』って言う大盗賊団がここを狙ってるらしい、って……」


『アラジン』の名前が出た瞬間、クリームヒルトさんの顔色が蒼白に変わる。


「……え? 『アラジン』、ですか……?」

「……? うん、そうだけど……」

「悪い事は言いません。今すぐ逃げましょう」

「突然どうしたの、クリームヒルトさん?」


 おかしな事を言い始めたクリームヒルトさんだけど、その眼差しは真剣なモノだった。


「この国……いえ、近隣諸国でも有名で残虐非道な盗賊団、それが『アラジン』なんです。彼等に襲撃された村や集落は数知れず、男は殺され、女は彼等の慰みモノになった後に殺され、子供も遊び感覚で殺す、とても人とは思えない所業を繰り返す盗賊団なんです。なので彼等の目撃情報があった地域に暮らす人々には、その情報が入り次第遠くに逃げろとまで言われているんです」

「……そんな集団を潰せるって言ってたよね、あの娘は」

「そうだね……」


 ……いったいどれ程の実力を持っているんだろう? と、カストールと共に首を傾げた―――。




 ◇◇◇◇◇




 あたし達が向かっているのは村の北西部に位置する山岳地帯、その麓にある洞窟に、件の大盗賊団のアジトがあるらしい。

 道中、腹ごしらえにポルクスさんから貰った昨日の夕飯の残りのパンを食べる。

 若干パサついているけど、食べられないという感じでは無かった。


 隣を見ると、前髪で片目を隠したロビンももっきゅもっきゅとパンを頬張っている。

 その動作だけなら、年頃の()()にしか見えなかった。


 ポルクスさんも、それとたぶんカストールさんも誤解してるけど、ロビンは男の子で間違いないと思う。

 昨日地面に組み伏せた時、男性特有の筋肉の固さがあったからだった。

 まあ、それが無ければ、あたしもロビンを女の子だと誤解してたと思うけど……。


 でも一応確認しておく。


「ねえ。貴方って男の子で間違いない?」

「そうだよ……よく女子に間違われるけど……」


 何でだろう? って言う風に、ロビンは首を傾げる。

 言っちゃ悪いけど、ロビンの仕草は所々女性らしさを感じさせる時がある。


 狙ってやっているのか、それとも天然なのか……前者なら自分の武器というモノをよく理解している。

 後者なら後者で、余計にタチが悪い。誤解する人だって出て来るだろう。


「ん……そろそろ奴等の縄張りに入る……気配は極力殺して……」

「了解」


 ロビンの指示に従い、意識して自分の気配を殺す。

 ロビンはと言うと、マントのフードを被り、素顔が見えないようにしていた。

 素顔を晒す気は無いのか、それとも素顔を見られるのは不都合があるのか……どっちにしても、あたしには関係無かった。


 木々の合間を通り、背丈の高い草に隠れるようにして進んでいく。

 ロビンのマントは保護色にもなっているらしく、油断してたら目の前にいるにも関わらず見失いそうになる。


 しばらく進むと、前を進んでいたロビンが立ち止まる。

 あたしも立ち止まり、ロビンが指差すので草木の隙間からそちらに目を向ける。


 すると、洞窟の入口らしき場所に、如何にも盗賊ですっていう見た目の人が何人かいた。

 恐らく見張りか何かだろう。


「……それで? どうする、の……?」


 小声でそう尋ね隣を見るけど、そこにロビンの姿は無かった。

 変わりに、ドサドサッという物音が洞窟の入口の方から聞こえてきた。

 見ると、ロビンが見張りの盗賊全員を倒していた。


「殺したの?」

「ん、当然……この国に蔓延るゴミ虫野郎共は、一刻も早くこの世から消し去るに限るから……」


 物陰から出つつそう尋ねると、見た目とは裏腹にトゲのある……と言うかトゲしかない答えが返ってきた。

 それと、今の答えに若干違和感を覚えたけど、何処がおかしいのか上手く言語化出来ない。


「それじゃあ、とっととゴミ虫野郎共の掃除をしようか……」


 気怠げで儚い印象とは裏腹に、鋭利な刃物のような鋭い言葉と共に洞窟の方へと歩を進めていく。

 そんな彼の後を、あたしは慌てて追い掛けて行った―――。






それなりに口の悪いロビン。




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