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第35話 用心棒

前回のあらすじ

行き倒れた人を助けた

 

 鍋の中身を空っぽにした女性はお腹が満たされたのか、満足そうな笑みを浮かべる。


「いやぁ〜、助かりました。ようやっとちゃんとした食事にありつけました」

「簡単なスープでしたけど……って、えっ? それじゃあ今までどうやって……」

「路銀が尽きた後は、そこら辺に生えてた野草で何とか飢えを凌いでたんですけど、身体が限界を迎えてしまったみたいで……」


 あはは……と女性は笑うけど、全然笑い事じゃない気がする。

 すると女性は、ベッドの上で姿勢を正す。

 彼女の服装はコジロウさんに似ているけど、裾の丈は膝辺りまでしかないくらいに短かった。


「申し遅れました。あたしはムサシと言う旅の者です。この度は助けて頂き、そしてこのような施しも受けさせてもらって感謝の念しかありません」


 女性―ムサシさんはそう言うと、深々とお辞儀をする。

 ベッドの上で正座した状態で頭を下げるものだから、見ようによっては土下座しているみたいだ。


「いえいえ、感謝されるような事じゃないですよ。困っている人を見掛けたから助けただけです」

「そうですか。……見た所、それなりの身分のお方とお見受けしますが?」

「ああ……まだ名乗って無かったですね。僕はカストール。この村の統治をある人から任せられてる領主代行です。それとそっちが僕の妻のポルクスで、そっちが我が家の使用人の一人のオルトリンデ」

「カストールの妻のポルクスです」


 そう自己紹介し、ムサシさんに向かって頭を下げる。

 結婚してそれなりの時間が経ったから、妻と名乗るのも紹介されるのにもある程度慣れてきた。


「お貴族様でしたか。これは大変ご迷惑をば」

「迷惑だとは思ってないので、気にしないで下さい」

「そうですか……でもこのご恩は返させて下さい。と言っても、今は一文無しの身なので、出来る事と言ったらこの身体を使って返す事しか……」

「……では、その身体を使って返してもらいましょうか」


 ……うん?

 何だか今、カストールの口から変な言葉が飛び出したような〜? (怒)




 ◇◇◇◇◇




 怖い怖い怖い! ポルクスの笑顔が怖すぎる!

 誤解しか生まない事を言った自覚はあるけど、そんなに怒らないで!


 冷や汗を大量にかきつつ、ムサシさんにある事を提案する。


「……ムサシさん。今お金が無いんですよね?」

「はい、恥ずかしながら……」

「ではある程度貯まるまで、我が家で用心棒として雇われませんか?」

「ふむ……用心棒として何をすれば?」

「この屋敷に侵入しようとする不届き者の対処と、僕とポルクスが遠方に出掛ける時の護衛役を」

「給金のほどは?」

「我が家で雇っている使用人達と同じ額、でどうですか?」


 僕がそう提案すると、ムサシさんは顎に手を当てて考え込む。

 だけど考え込んだ時間は一分と掛からず、ムサシさんは結論を出す。


「その条件でよろしくお願いします」

「では契約書は後で作りますね。それとこの部屋はムサシさんが使って下さい。……オルトリンデ。ムサシさんに屋敷内を案内してあげて」

「畏まりました……では案内しますね」


 そう言うオルトリンデの後を、ムサシさんは壁に立て掛けてあった二振りの剣を両腰に差してからついていく。

 二人が部屋から出た後、ポルクスが笑顔のまま近付いて来た。


 その迫力に圧されて思わず後退りするけど、すぐに背中が壁についてしまった。

 そして間髪入れずに、ポルクスが両手を突き出して僕の逃げ場を無くす。

 まさかポルクスに壁ドンされるなんて思わなかった……。


「……カストール」

「はい」

「あんな誤解を招く言い方、しない方が良いと思うよ?」

「誤解したのはそっち……」

「何か言った?」

「いえ。何でもございません、ポルクス様」


 あまりにも迫力のある笑顔だったものだから、思わず様付けの敬語で返事をしてしまった。

 僕の反応で満足したのか、ポルクスの雰囲気が柔らかいモノへと変わっていく。


「まったく……もしムサシさんも誤解してたら、大変な事になってたよ?」

「それは……うん、ごめん」

「反省してる?」

「うん、してる」

「そっか……でも、罰は必要だよね?」

「……どんな?」

「奥さんのご機嫌を取るべきじゃないかな?」


 ポルクスはそう言うと、何かを期待するような眼差しを僕に向ける。

 その視線を真っ直ぐに受け止め、とりあえず半歩だけ前に出てポルクスの身体をぎゅっと抱き締める。

 正解だったようで、ポルクスも腕を僕の背中に回してくる。


「これで満足?」

「うん」

「なら良かった」

「それはそれとして、カストールの今晩のおかず一つ減らすね」

「……」


 ……理不尽だと思ったけど、ポルクスの()()笑顔を思い出すと反論なんて出来そうに無かった―――。






ポルクスの尻に敷かれつつあるカストール。




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