第34話 行き倒れ再び
今回から新章です!
前回のあらすじ
先代領主に挨拶した
ルージュ村にやって来てから一ヶ月。
今日もわたしは、アビシャグさんに料理を習っていた。
わたしの料理の腕は最初の頃よりは上達していて、今ではカストール達に料理を振る舞っても恥ずかしくないレベルまで上がっていた。……まあ、たまに失敗する時もあるけど……。
それと、先週になってようやくシグルドがスルーズ達を連れて戻ってきた。
何でこんなに遅くなったのか聞いた所、単純に悪天候で乗る予定だった船の出航が遅れたかららしい。
それなら仕方無いし、別段責める気も無かった。
ちなみにブリュンヒルデも一緒に戻ってきたけど……何だか様子がおかしかった。
詳しく聞きたい気持ちもあるけど、本人が言いたがらないなら無理して聞き出す必要も無いと思う。
閑話休題。
今日は普段とは違い、お菓子の作り方を習っていた。習ったのはパウンドケーキだった。
初めて作って形はちょっと歪になっちゃったけど、アビシャグさんからは味は大丈夫だというお墨付きをもらった。
それらをバスケットの中に入れ、リビングの方へと目を向ける。
今日は、書類を整理してたら分からない事が出てきたと言って、カストールも一緒に来ていた。
「なるほど……そういう事でしたか。分かりました」
「お役に立てたようなら何よりだ」
「カストール、終わった?」
「うん……ダビデさん、お邪魔しました」
「ああ。また何時でも聞きに来ると良い」
「お邪魔しました」
わたしもダビデさんに挨拶し、ダビデさん達の家を後にする。
カストールと並んで歩いていると、人だかりが出来ている事に気付いた。
「……? 何だろう?」
「さあ? ともかく行ってみようか」
そう答えるカストールと共に、人だかりの方へと近付いて行く。
すると、わたし達の気配に気付いたのか、いつもお世話になっている雑貨屋のお姉さんがこっちを振り向く。
「あら、ポルクス様。それにカストール様も」
「何かあったんですか?」
「ええ。どうやら行き倒れた人がいるみたいで、どうしようかと……」
「うん? 行き倒れ?」
何かどっかで聞いたような状況だった。
もしかしてと思いつつ、人だかりを抜けていく。
すると目の前には、赤み掛かった長い茶髪の人がうつ伏せで倒れていた。
もしかしたらコジロウさん達かな? と思ったけど、違うみたいだった。
それよりも、今は目の前の人を助けるのが先だった。
「大丈夫ですか?」
カストールが倒れている人に近付き、仰向けに体勢を変える。
倒れていた人は女性のようだけど、起きる気配が無かった。
「何か、食べ物を持ってる人はいますか?」
「そんなの都合良く持って……って、あ。持ってるよ、カストール」
バスケットの中を漁り、パウンドケーキを一切れカストールに手渡す。
カストールは女性の上体を起こし、それを口元へと運ぶ。
でも食べる素振りは見られなかった。
「……しょうがない。ウチに運ぶか」
「そうだね。見過ごす事も出来ないしね」
そしてわたし達は、カストールが女性を抱き抱えて屋敷へと戻って行った―――。
◇◇◇◇◇
客室のベッドに女性を寝かせ、両腰に差してあった剣―多分刀―を壁に立て掛けておく。
しばらくすると、スープの入った皿を持ってポルクスが入ってきた。匂いからして、スープはオニオンスープのようだ。
おかわりされる事を見越してか、スープの入った鍋を持ったオルトリンデも一緒に入ってきた。
「うっ……」
匂いに釣られたのか、女性は身動ぎをする。
そしてゆっくりと目を開けると、これまたゆっくりとした動作で上体を起こす。
「う〜ん……あたしは……」
「行き倒れてた所を、僕達が助けたんですよ」
「そうですか……ありが……」
ぐおおおおおおっと、まるで獣の呻き声みたいな腹の虫が鳴り響いた。
その発生源である女性はと言うと、前のめりになって倒れ伏していた。
「……もうダメ。限界。お腹が空き過ぎて、死ぬ……」
「あの……これどうぞ。オニオンスープですけど……」
そう言ってポルクスが差し出した皿を、ガバッと起き上がった女性は引ったくる勢いで受け取る。
そしてこれまたもの凄い勢いで、スープを飲み干す。
その勢いに、僕もポルクスも若干引いていた。
「「おおぅ……」」
「おかわりありますか?」
「ここに」
「ください」
そうして、女性はもの凄い勢いでスープを平らげていく。
鍋の中身が空になるのに、そんなに時間は掛からなかった―――。
新キャラ(?)登場です。
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