第33話 先代領主
前回のあらすじ
ルージュ村に着いた
翌日。
わたしとカストールは、会わせたい人達がいると言うソロモンさんにある場所まで連れて来られた。
ちなみにジークフリードさんとクリームヒルトさんには、昨日の掃除でやり残した場所の掃除を任せていた。
閑話休題。
ソロモンさんと一緒にやって来たその場所とは――牧場だった。
柵の中には、羊が群れを成していた。
何でこんな所に連れて来たのか分からずにソロモンさんに尋ねようとすると、ソロモンさんは牧場に併設されている一軒家へと真っ直ぐに向かって行く。わたし達も彼女の後を追う。
ソロモンさんは玄関のドアをノックすると、返事も待たずにドアノブを回す。
鍵は掛かっていないようで、そのままドアを開けて中に入る。
わたし達も中に入ると、ソロモンさんよりやや年上に見える女性と出会す。
「あら、ソロモンちゃん。いらっしゃい。久しぶりね」
「久しぶり、アビ姉。お父さん居る?」
「リビングに居るわよ。そちらは……お客さん?」
「うん。僕の代わりにここを治める事になったから、挨拶にって思ってね」
「それじゃあお茶の準備をしなきゃね」
女性はそう言うと、恐らくキッチンのある方へと向かって行った。
ソロモンさんとのやり取りからして二人は姉妹の様だけど、それにしては全くと言って良いほど似てないような……?
「あの……さっきの女性はソロモンさんのお姉さんですか?」
そう疑問に思ったのはわたしだけじゃなかったようで、カストールがソロモンさんに尋ねる。
だけどソロモンさんはカストールの質問に、首を横に振る。
「ううん、違うよ。僕は一人っ子だから、姉はいないよ」
「あれ? それじゃあ……」
「アビ姉は僕の実父の後妻……僕から見たら継母に当たる人なんだよ。年が近いから、僕が姉呼ばわりしてるだけ」
「じゃあ、ソロモンさんの実母は……」
「あの女は自分を寝取った間男と駆け落ちしたよ。何処かでくたばってくれてると助かるんだけどね」
てっきり亡くなったかと勝手に想像したけど、そうじゃなかったみたいだ。
と言うか、実の母親に対して当たりが強い気がしなくもない。
多分それだけ自分と実父を置いていった実母の行動が業腹なのだろう。
と考えている内に、リビングへと辿り着いていた。
リビングのソファーには、白髪が目立つ茶髪の老年に差し掛かった男性が何かの書類を眺めていた。
男性はソロモンさんに気付くと、掛けていた眼鏡を外す。
「おや、ソロモンか。ウチに来るとは珍しい」
「久しぶり、お父さん。元気に……」
「違うだろう?」
「うん、何が?」
「お父さんじゃないだろう?」
男性の雰囲気が剣呑なモノへと変わる。
多分ソロモンさんの実父なんだと思うけど、もしかして実父との関係も悪いんじゃ……。
「お父さんじゃない? じゃあ……お父様?」
「違う」
「父上?」
「違う!」
「これも違うの? じゃあ……親父殿?」
「違うっ!! 昔みたいに『パパ』って呼びなさい!!」
……なんて思っていた時期がありました。
そこにはただただ娘を溺愛する父親の姿しかなかった。
「お父さん」
「……悲しい。愛娘が『パパ』って呼んでくれないなんて……」
「僕ももう良い年だし、結婚もしてるんだよ? 子供の頃ならともかく、大人になった今は呼ばない……って、何で泣いてるのさ。しかもガチ目に」
「まあまあ、ダビデさん。私だってソロモンちゃんに一度も『ママ』って呼ばれた事無いんですよ?」
すると、さっきの女性がトレイに人数分のお茶を持ってリビングに現れた。
「アビ姉はアビ姉でしょ? いやまあ、確かに継母とは言え母親である事に変わりは無いけどさ。でも母親って言うより、お姉ちゃんみたいな感じだし、アビ姉は」
「あら、うふふ……嬉しい事を言ってくれるわね、ソロモンちゃん」
「……ああ、ごめんね。適当に座って」
ソロモンさんにそう促され、カストールと並んでソファーに座る。
対面にはソロモンさんの実父と継母が座り、側面の一人掛け用のソファーにソロモンさんが座る。
「じゃあ二人に紹介するよ。僕の実父と継母のダビデとアビシャグ。お父さんはここの先代領主で、今は隠居して羊飼いの仕事をしてる。何か困った事があったら頼ると良いよ。……お父さん、アビ姉。領主代行として、僕の代わりにここを治める事になるカストール君とその奥さんのポルクスちゃん。僕の代わりに二人を支えてくれると助かるよ」
「ソロモンの父親のダビデだ。聞きたい事、困った事があったら何時でも頼ってくれて構わない」
「カストールです。若輩者ではありますが、ソロモンさんの代わりが務まるよう努力します」
ダビデさんとカストールはそう挨拶し、握手を交わす。
「あ……そうだ、アビ姉。一つ頼んでも良い?」
「ええ、良いわよ。何かしら?」
「ポルクスちゃんに料理を教えてやってくれないかな? 彼女、料理に関しては素人だから。それにほら、アビ姉って料理が上手いし、教えるのも上手でしょ? 僕が教えたいのも山々なんだけど、帝都での仕事もあるからね」
「分かったわ、任せて。……ポルクスちゃん、でしたっけ? 頑張りましょうね」
「はい、よろしくお願いします」
そう言い、アビシャグさんに向かって頭を下げた―――。
次回から新章です!
次回更新は二週間後を予定しています。
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