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第32話 新しい領地

前回のあらすじ

皇帝陛下に謁見した

 

 一週間後。

 ソロモンさんの先導で、彼女が領主を務めるルージュ村へとやって来ていた。


 ちなみにシグルドはスルーズ達を迎えるために単身ブラウの街へと戻り、ブリュンヒルデは皇帝陛下が少し気になる事があると言って帝城に引き留めていた。


 その代わり、ジークフリードさんとクリームヒルトさんがついてきていた。

 二人はそろそろ何処かに定住しようとしていたらしく、それならと使用人として雇う事に決めた。


 閑話休題。

 ソロモンさんが言っていたように、街としては小さく、村としては大きい規模の集落だった。

 それでも、書類上は村という分類らしい。


「ここが一応領主の屋敷になるのかな?」


 ソロモンさんがそう言う屋敷はわたし達の目の前にあり、大きさはジェミニの街の屋敷より二回りくらい小さかった。

 それでも、この村では一番の大きさを誇っていた。


 中に入ると、使用人とかを雇っていなくて掃除をしていなかったのか、少し埃っぽかった。

 廊下の窓を開けながら、屋敷の中を進んで行く。


「……埃っぽいね。ごめんね、二ヶ月くらい留守にしてたから」

「使用人とか雇ってなかったんですか?」

「まあね。僕のお爺ちゃん……先々代の時から、最低限自分達で出来る事は自分達でやるっていう方針だからね。雇ったとしても、庭木の剪定のために庭師を呼んだ時くらいかな? それに屋敷としては小さい方だからね。使用人を雇うほどでもないしね」

「本当にここに僕達が暮らしていいんですか?」

「うん。僕の部屋もあるけど、そこを残しておいてくれるなら好きにして良いよ」


 家主がこう言ってるんだから、本当に好きにして良いのかもしれない。


「それにしても……本当に埃っぽいね。掃除でもしようか。……あ。でも、掃除道具が……」

「《クリエイト》」

「……あるね」


 創造魔法で掃除道具を生み出すと、ソロモンさんはちょっとだけ驚いたような表情を浮かべる。


「今の、ポルクスちゃんの魔法?」

「はい」

「創造魔法みたいだったけど……ポルクスちゃんのは次元が違うみたいだね」

「そうなんですか?」

「うん。普通の創造魔法って、一度に一種類、多くても二種類のモノしか生み出せないんだよ。数に限らずね」

「……普通に複数種類生み出せてますね」

「だからポルクスちゃんのは特殊だね」


 まさか、いつも使ってる魔法が特殊なモノとは思わなかった。

 ……あれ? それなら……。


「カストールの破壊魔法もまあまあおかしくない?」

「そう? 普通だと思うけど……」

「どうおかしいのかな? 教えてくれると助かるね」

「僕のは普通ですよ」

「でも、空間を壊したり、やらないけど相手の精神を破壊出来たりするんでしょ?」

「まあね」

「……どっちも普通の破壊魔法の性能じゃないんだよなぁ……」


 ソロモンさんは眉間にシワを寄せ、頭を抱えていた―――。




 ◇◇◇◇◇




「ふぅ〜……」


 屋敷の掃除を終え、埃で汚れた身体を綺麗にするためにお風呂に入っていた。

 わたしの他に、クリームヒルトさんとソロモンさんも一緒に入っている。


 お風呂場はそこそこ広く、湯船も大きいから三人で入っても全然問題無かった。

 湯船にはわたしとソロモンさんが浸かっていて、クリームヒルトさんは身体を洗っていた。


「ふぃ〜……生き返るぅ〜……」


 蕩けた表情でそう言うソロモンさんは、昼間のキリッとしたカッコいい印象が地平線の彼方まで吹き飛んでいた。

 それにしても……ソロモンさんの身体は出る所は出てて、引き締まっている所はきちんと引き締まっているメリハリの効いた、溜め息が出るほどに羨ましい身体付きだった。


 いくら同性だからってあまりジロジロと見るモノじゃない事は理解してるけど、ついつい視線がそちらに引き寄せられてしまう。

 ぐいーっと両手を交差させて伸びをしているソロモンさんの左手薬指には指輪がキラリと輝いて……って、あれ?


「……ソロモンさん。結婚してたんですか?」

「うん? 言ってなかったっけ?」

「はい」

「隠してた訳じゃないけど……って、ああそうか。僕手袋してたもんね。そりゃあ分からないか」

「それで……旦那さんは今何処に?」

「ミッドガルにいるよ。そこの王族に家庭教師として勤めてる」

「へぇ〜。離れ離れってなると、お互い寂しくないんですか?」

「寂しくないって言ったら嘘になるけど、手紙のやり取りはしてるからね。寂しさは和らいでるよ。でも……早く会いたいなぁ……」


 そう呟くソロモンさんの顔は、恋する女の子の様だった―――。




 ◇◇◇◇◇




 お風呂を上がった後、カストールとジークフリードさんが買ってきてくれた材料を使ってる夕ご飯を作る事になった。

 わたし達で綺麗にした厨房には女性陣が集結していて、男性陣は順番に汗を流すようだ。

 こうなる予定だったから、わたし達は一緒に入って時間を短縮していた。


「さて、と……それじゃあ夕飯を作る訳だけど、二人の腕前は?」


 エプロン姿が様になっているソロモンさんの問い掛けを、クリームヒルトさんが先に答える。


「それなりに」

「ポルクスちゃんは?」

「……」

「ポルクスちゃん?」

「……学生時代、同級生に『作るよりも食べる事に専念して』って言われてたくらいで……」

「……つまり、下手だと?」

「あはは……」

「……分かった。僕がイチから教えるよ」

「よろしくお願いします」


 そう言い、ソロモンさんに向かって頭を下げる。

 それから、ソロモンさんの手解きを受けつつ夕ご飯の準備をした―――。






実は既婚者だったソロモン。

お相手はいつか出る……かも?




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