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第31話 謁見

前回のあらすじ

皇帝陛下登場

 

 皇帝陛下と呼んだ女の子の腕を掴み、ソロモンさんは真っ直ぐ帝城へと向かう。その後をわたし達も追う。

 女の子のフードはもう外されており、真っ白い長髪を風に靡かせ、赤と青の瞳は不満を訴えていた。


「ちょっと、いい加減離して下さい! 自分で歩けます! ソロモン、聞こえてますわよね!?」

「離したら逃げるでしょう。お城に着くまでの辛抱ですよ」

「うぎぎぎぎ……」


 ……何だろう。

 家庭教師と生徒と言うより、ワガママな妹とその面倒を見るお姉ちゃんみたいに見える。


 わたし達が歩く大通りには他の人の目があるけど、いつもの事なのか最初は驚いたような視線を向けるけど、すぐに視線を逸らすか微笑ましいモノでも見るような視線に変わるのが大半だった。


「……あ、そうだ。ちょっとこの小娘の説教してくるから、キミ達は喫茶店か何処かで待ってて。飲み物とかは僕の奢りにするから」

「あ、ソロモン! 不敬、不敬ですよ! 皇帝たるわたくしに対して小娘だなんて! そう年齢は変わらないでしょうに!」

「はいはい、少し黙ってて下さい。……これで好きなの頼みな。それじゃあまた後で」


 ソロモンさんは財布をポイッと放り投げるから、わたしは慌てて受け止める。

 その当の本人はと言うと、女の子を肩に担いでものすごい速さで帝城の方へと走って行った。


 取り残されたわたし達は、それぞれ顔を見合わせる。


「どうしよう……?」

「とりあえず、言われた通りお茶でもしておこうか……」

「そうだね……うん?」


 違和感を覚え、ちょっとだけ悪いと思いながらも財布を開ける。

 中身を確認すると、紙幣も小銭も何にも無かった。


「「「「「「……これでどうしろと……」」」」」」


 偶然にも(?)、わたし達の心が一つとなった感想だけが飛び出した―――。




 ◇◇◇◇◇




 仕方ないから、この国の貨幣を持っているジークフリードさんとクリームヒルトさんが立て替える形を取ることにして、わたし達はすぐ近くにあった喫茶店で時間を潰すことにした。


 ……そう言えば、わたし達ってオリュンポス王国で流通してたオリンピア貨幣しか持ってなかった。

 シグルドはこの間の海賊騒ぎの謝礼でこっちの国の貨幣をいくらか貰ったらしいけど、それも微々たるモノだった。


 わたしはオレンジジュースを、カストールはアップルジュースを頼み、シグルド達もそれぞれ飲み物を頼む。

 しばらく雑談していると、ソロモンさんが戻ってきた。


「やあ、お待たせ」

「あ、ソロモンさん。お帰りなさい」

「……うん、みんな居るなら丁度良い。ちょっと僕と一緒に帝城に来てくれないか?」

「……? 何でですか?」

「皇帝陛下が呼んでるからさ」




 ◇◇◇◇◇




 と言う訳(?)で、帝城の王の間までやって来た。

 正装でも何でもない服装だけど、ソロモンさんが言うには皇帝陛下はそういうのに拘らないお人らしい。


 その当の本人はと言うと、不貞腐れた表情で玉座に腰掛けていた。

 さっきと違うのは、赤い瞳を隠すためなのか右目に眼帯を着けていることくらいか。


「陛下。お望み通り、件の人達を連れてきましたよ」

「……ええ、ご苦労様」


 皇帝陛下はそう言うと、姿勢を正して表情も引き締まったモノへと変わる。

 気持ちの切り替えが早いと思ったけど、国家元首ならそれくらい朝飯前なのだろう。


「我が国へようこそ、旅のお方。わたくしはユフィリア・オーディン・アースガルド。アースガルド帝国第十六代皇帝ですわ」

「お初にお目に掛かります。私は……」


 カストールが名乗ろうとしたところ、皇帝陛下が手を挙げてそれを制す。


「名乗らなくても大丈夫です。すでに先生……ソロモンから軽く貴方方の名前は伺っているので」

「では本題から。……何故私達を呼んだのですか?」

「それは僕の事情も関わってくるんだよ」


 すると、カストールの質問に何でかソロモンさんが答えた。


「ソロモンさんの事情、ですか……?」

「うん。僕はこれでも、辺境の街……いや、村か? まあどっちでも良いや。とにかく領主なんだよ。でも今は陛下の家庭教師役もしてるから、領主業が疎かになってるんだよね。だからね……任せようかな、と」

「……領主の仕事を、ですか?」

「うん。聞けば、オリュンポス王国だと領主を務めてたみたいじゃないか。ああいうのは詳しい人に任せるに限るからね。ほら、良く言うだろう? パンはパン屋って」

「それじゃあ、ソロモンさんの後任で領主を務めれば良いんですか?」

「それもちょっと違うかな。言うなれば、領主代行だね。急に代わったとなれば、いらない角も根拠の無い噂も立っちゃうからね」

「なるほど……」

「頼まれてくれるかな? もちろん無理強いはしないけどね」

「……分かりました。そのお話、お引き受けしますよ」


 カストールはあまり悩まず、返答を出す。


「ありがとう、助かるよ」

「それでは、爵位も必要ですわよね。そうねぇ……男爵とかで良いかしら?」

「はい、構いません」


 男爵は爵位の中でも下だけど、見ず知らずの、それも外様に即座に授ける爵位じゃない。

 それだけ、カストールの手腕に期待しているのかもしれない。


 こうして、こっちの国でもカストールは領主を務める事になった―――。






大公→公爵→侯爵→伯爵→子爵→男爵(→騎士爵)の順で爵位は低くなるので、男爵が一番下で間違いないハズ。

もし間違ってたらご指摘ください。




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