第30話 到着
前回のあらすじ
海賊を撃退した
「いやぁ、助かりました! ありがとうございます!」
海賊達を退けた後、一番の功労者だと言われた俺達は船長室に呼ばれ、この船の船長から直々にお礼を言われていた。
この中には俺達の他に、『魔術王』の姿もある。
「いえいえ。僕は僕に出来る事をしたまでですよ」
「それでその……お礼と言っては何ですが、謝礼も少しですがご用意させていただいて……」
「あ。そういうのはいいです。心遣いだけ受け取っておきます。もしそれでも、と言うのであれば、レムリア大陸までの安全な航海をお願いします」
「ええ、任せて下さい。これでも船乗りの端くれ。安全な航海を約束しましょう。……そちらの方々は?」
「ではありがたく」
貰えるモノは病気以外貰っておく主義の俺は、遠慮無く謝礼を受け取っておく。
ジークフリードとクリームヒルトの二人も、俺と同じく謝礼を受け取っていた。
それから俺達は船長室を後にするけど、そこで『魔術王』の方から声を掛けられた。
「キミ達。随分と腕が立つみたいだね」
「ありがとうございます」
「レムリア大陸にはいったい何の用なんだい?」
「オレと彼女は里帰りに。彼と彼の連れは、まあ……移住、ですかね?」
俺の代わりに、ジークフリードが答えてくれた。
まあ移住と言うのもあながち間違いじゃないから、特に訂正する必要も無かった。
「そっか……ここで会ったのも何かの縁だ。レムリア大陸で……と言うより、アースガルド帝国で何か困った事があったら僕の名前を出すと良いよ。特に、帝都であるヴァルハラでなら僕の名前を知らない人はいないからね」
「……? 『魔術王』の名なら、そんな限定的で無くとも各地で轟いているのでは?」
俺がそう聞き返すと、『魔術王』は肩を竦める。
「そうなんだけどね……今の僕って、とあるやんごとなきお人の家庭教師みたいな事もしてるんだよ。今はちょっとした休暇を貰ったから旅に出てたんだよね」
「それで今回の騒動に巻き込まれた、と」
「まあね。……キミ、もし働き口を探してるのなら、僕の方から口利きする事も出来るけど?」
「そうですね……連れの方々と相談してからでも良いですか?」
「うん、良いよ。レムリア大陸に着くまで時間はあるからね。それじゃあ、また」
『魔術王』はそう言い、手をヒラヒラと振りながら俺達の前から去って行った―――。
◇◇◇◇◇
「……と言う事があったんですよ」
戻ってきたシグルドから事の顛末を聞き、わたしはカストールの方を見る。
カストールは考え事をしているらしく、眉間にシワが寄っていた。
「うん……ソロモンさんの提案は受けても良いと思う。知り合いのいない土地だから、せっかく出来た縁を使わない手は無いよね」
「では伝えてきます」
「頼むよ」
シグルドは一礼してから、わたし達の部屋から出て行く。
「まさか、『魔術王』がわたし達と同じ船に乗ってたなんてね」
「そうだね。僕も夢にも思わなかったよ」
「それにしても……ソロモンさんが紹介してくれる働き口か……何だろうね?」
「さあ? でも、そんなに変なモノじゃないと思いたいね」
……まさか、その働き口と言うのがあんな事になるとは、この時のわたしもカストールも夢にも思っていなかった―――。
◇◇◇◇◇
二週間後。
わたし達はソロモンさんの導きで、アースガルド帝国の帝都、ヴァルハラへとやって来ていた。
街の賑わいは王都とほぼ同等だけど、建物の建築方式は王都の建物と異なっていた。
王都の建物は木造建築が多いのに対して、帝都の建物はレンガ造りの建物が多かった。
「ここが帝都、ヴァルハラだよ。あそこに見えるのが皇帝陛下が住まう帝城だね」
ソロモンさんが指差す先には、立派な造りのお城が聳え立っていた。
王城と比べてはいけないとは思っているけど、お城の規模は王城の方が若干大きいように思える。
すると、わたし達の近くを赤いフードを目深に被った人物が駆け抜けて行った。いや……駆け抜けようとした。
その人物の襟首をソロモンさんが突然掴んだ。
「ちょっ、離して下さい!」
「嫌ですよ、大人しくして下さい。また城から抜け出したんですか?」
「別に良いでしょ、息抜きくらい!」
声音からして女の子のようで、恐らくだけどソロモンさんと顔見知りらしい。
ソロモンさんはと言うと、やれやれと言った風に溜め息を吐く。
「はぁ……息抜きする事自体を否定はしませんけど、ご自身の立場をよく考えて行動して下さいよ、皇帝陛下」
皇帝陛下登場。
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