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第28話 海賊の襲撃

前回のあらすじ

海賊が現れた

 

「うわっ!」

「……っとと」


 船が突然大きく揺れ、バランスを崩す。

 幸いにも座った状態だったから、転ぶなんてことは無かった。

 ただ……外がさっきよりも少し騒がしい。


「何なんだろう?」

「ちょっと見てくるよ」

「待って。わたしも行く」


 そう言い、カストールと一緒に客室を出る。

 隣の部屋のブリュンヒルデ達も気になったのか、部屋から出て来ていた。


「ブリュンヒルデ。何が起きたか確認して来てもらっても良い?」

「はい」


 ブリュンヒルデは頷き、近くを慌てた様子で通り過ぎた乗客に近付く。

 その間にも船は揺れ、何かの音が断続的に聞こえてくる。

 すぐにブリュンヒルデは戻ってくるけど、その顔はひどく真面目なモノになっていた。


「何か分かった?」

「はい。この船は現在、海賊の襲撃を受けているようです。何人かの有志が迎撃に当たっているらしいのですが……」

「……海の上だもんね。自由には動けないか」

「はい」


 カストールの言葉に、ブリュンヒルデは頷く。


「どうしよっか?」

「安全策を取るなら、部屋の中に引き籠ってるべきなんだろうけど……」

「……あれ? クリームヒルトは?」

「「えっ?」」


 辺りを見回すけど、いつの間にかクリームヒルトさんの姿が消えていた―――。




 ◇◇◇◇◇




 砲撃は止むこと無く、船を取り囲むように着弾する。

 そうしている間に、船団の一隻が近付いてきた。

 その船はこちらの船と並走するように進むから、恐らくこちらに接近して乗り移ろうとしているのだろう。


「ジーク!」


 すると、ブリュンヒルデと共に中に居たハズのクリームヒルトがジークフリードの下へと駆け寄ってくる。


「クリームヒルト。ここは危ない。中に居た方が安全だ」

「中も十分危ないわよ。だって、パニックになった乗客でいっぱいなんだもの」

「じゃあ――」


 ジークフリードが次の言葉を紡ごうとしたその瞬間、船が今までよりも大きく揺れた。


 その理由はすぐに分かった。

 近付いて来ていた海賊船がとうとう、こちらの船にピタリと貼り付いてしまっていた。

 そしてその接触した場所から、海賊が次々と乗り込んでくる。


「男は殺せ! 女子供は捕らえて売り飛ばす! 金目の物は全て回収しろ!」

「ちっ……仕方ない! シグルド、クリームヒルト、協力してくれ! 海賊達を一人でも多く退ける!」

「分かった!」

「了解! 《メタモルフォーゼ:ドラゴンウイング》!」


 ジークフリードの指示に俺は頷いて剣を抜き、クリームヒルトは魔法を発動させて背中から竜の翼を生やして立体的な動きで海賊達を翻弄しつつ攻撃を加えていた。

 クリームヒルトの竜化魔法は、身体を部分的に変身させる事も可能らしい。


 ……そう言えば、ジークフリードの魔法を聞いた事が無かったと思い、海賊達と交戦しつつ尋ねる。


「ジークフリード! お前の魔法は何なんだ!」

「竜滅魔法だ! 読んで字の如く竜種を倒す事に特化しただけの魔法だ! 対人戦だと全く役に立たない!」

「そうか……《ソードダンス》!」


 創剣魔法で生み出した何本かの剣をこっちの船に乗り移ろうとしていた海賊達に向かって飛ばしつつ、ジークフリードの背後に回った海賊を斬り伏せる。

 そしてそのまま、彼と背中合わせとなる。


 戦っているのは俺達以外にもいて、客室への侵入はギリギリの所で防いでいるみたいだった。


「キリないぞ、これだけの数を相手するのは」

「早目に片付けないと、増援が来るか……」

「何だこの(アマ)?」


 すると、海賊の一人が、甲板にいくつか並べてあったビーチチェアの一つに寝転がっている人物に目を向ける。言い方からして、女性なのだろう。

 それよりも……これだけの騒ぎが起きているにも関わらず、一向に起きる気配が無い。


「ジークフリード!」

「ああ、分かってる!」


 名前を呼んだだけで俺の意図が伝わったらしく、ジークフリードと共にその女性の方に向かって走り出す。

 彼女を守ろうとした行動はしかし、海賊が振り下ろす剣よりも遅かった。


 だけど……。


 ズバッと、突然剣を握っていた海賊の右腕が宙を舞う。

 それだけでなく、その海賊の頭も何者かによって吹き飛ばされていた。

 突然の出来事に、俺やジークフリードだけでなく、周りで戦っていた乗客や海賊達でさえもその手を止める。


 やがて、その正体が判明する。

 海賊の頭を吹き飛ばした張本人は、何故今までその場に居た事に気付かなかったのかと言うくらいの異彩を放っていた。


 見目麗しい中性的な容姿とは裏腹に、まるで物語に出てくる悪魔のような角に翼、尻尾を生やしていた。

 本能的に、俺達のような人間とは異なる存在という事だけは理解出来ていた。


 そして何よりも異彩なのが、まるで女性を守るように立っている事だった。

 そこでようやく、女性が起き上がる。


「うぅ〜〜〜ん……良く寝たぁ……ありがとう、グシオン。僕が寝ている間の護衛お疲れ様。《帰還せよ、グシオン》」


 すると、異彩を放っていた人物は霧のようにその姿を忽然と消した。

 女性はビーチチェアから起き上がり、俺達や自身の周りを一瞥する。


 その女性は、ポニーテールに髪を結んでもなお長い茶髪が腰の辺りまで伸びており、何でも見透かすような瞳はアメジストのように紫色に輝いていた。

 そして、旅人が着るような丈の長いマントを羽織っているのが特徴的だった。


「なるほどなるほど……海賊の襲撃を受けてるのか。なら僕も迎撃に参加しよう」


 状況を理解したらしい女性はそう言うと、右手を軽く振り下ろす。

 たったそれだけの動作で、彼女の近くにいた海賊の何人かの身体を稲妻が貫いた。


 天候も悪くない中、突然雷が落ちてくるなんてあり得ない。

 なら考えられるのは魔法か魔術だが……無詠唱での発動なんて聞いた事が無い。


 だが、ジークフリードの反応は俺と違っていた。


「……いや、まさか。あの女性……いや、あのお方は……」

「……? 知ってるのか、ジークフリード?」

「ああ、恐らく。オレの予想が正しければ、あのお方は――」


 ――『魔術王』ソロモンと、ジークフリードは言った―――。






えっと……ハイ。

こっちのソロモンは、あっちのソロモンとは完全に別人です。


何言ってるんだ? って人は、作者の処女作&代表作の『魔物使いの弟子』を一読していただければ(宣伝)。




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