第27話 交流
前回のあらすじ
レムリア大陸の国々について説明した
「う〜ん?」
私達に宛がわれた客室に入って早々、クリームヒルトさんが私に近付いて顔をまじまじと見つめてきた。
彼女は、少しクセのある長いアッシュブロンドの髪と、サファイアのように蒼い瞳が特徴的な女性だった。
そんな彼女が、何でそんなことをするのか分からず、少したじろぐ。
「あの……私の顔に何か?」
「気のせいなら良いんだけど……貴女、ユグドラシル皇家の関係者か何か?」
「えっ? 何でですか?」
「年近そうだし、タメ口で良いわよ。そうねぇ……皇家の人に多い、白髪とオッドアイだからかしら? 後、使える魔法が刻印魔法って言ってたでしょ? それも皇家の人に多いのよ」
まさか出会ってまだ数日の彼女に、私がオッドアイと見破られるなんて思わなかった。
確かに私はオッドアイだけど、右目がコバルトブルー、左目がサファイアブルーの、パッと見だと分かりづらい色合いだった。
付き合いの長いシグだって、何年か経ってから気付いたくらいなんだから。
「たぶん関係者じゃないです……じゃないわよ。私って孤児だし、親の顔だって小さい頃に亡くなった母親の顔しか知らないから」
「それはその……ごめん」
「ううん、気にしないで」
「でもそっかぁ……気のせいか」
クリームヒルトはそう言い、二つあるシングルベッドの片方にボスンと腰掛ける。
私も反対のベッドに腰掛けると、船が大きく揺れた。どうやら船が出港したようだ。
「ねえ、ブリュンヒルデ……って長いわね。愛称で呼んで良い?」
「ならヒルデで。仲の良い人は皆そう呼んでるから」
「分かった。ヒルデって、あのシグルドって人と付き合ってたり……」
「あはは……まさか。私とシグはそんな関係じゃないわよ。同じ孤児院で育っただけだし、家族みたいなモノよ」
「そっかぁ……つまんないなぁ……」
クリームヒルトはそう言うと、ボスンと仰向けになる。
他に聞きたいことは無いみたいだから、今度はこっちから質問してみる。
「じゃあさ。クリームヒルトはあのジークフリードって人と一体どんな関係なの?」
「ん〜? 旅仲間、かな?」
「他には? ほら、二人共若いんだから、男女の関係になったりとかは……」
「あの朴念仁に期待なんて出来ないわよ!」
そう言うと、クリームヒルトはガバッと起き上がる。
「ぼ、朴念仁……?」
「そうよ! アタシがいくらアピールしても、全然無反応なんだもの! 朴念仁って言って何が悪いの!?」
「いや、悪くはない……かな?」
「ああ……思い出しただけでもイライラしてきた……聞いてよ、ヒルデ! アイツったら……」
それから豪雨のように、クリームヒルトは不平不満を並べ立てる。
感情としては怒っているんだろうけど、ジークフリードさんについて語る彼女の顔は正に、恋する乙女そのものだった―――。
◇◇◇◇◇
「へあっ!」
「何だ、風邪か?」
「いや……誰か噂でもしてるんだろう」
甲板で潮風に当たっていると、ジークフリードが盛大なくしゃみをする。
この船は客船と言うだけあって大きく、客層もレムリア大陸に渡る冒険者風の出で立ちの集団や、旅行なのか家族連れらしき人影もちらほらと見える。
そんな中、俺とジークフリードは手すりにもたれ掛かっていた。
「アースガルド帝国もレムリア大陸も初めて行くが……どうなんだ?」
「オレの主観ではあるが、良い所だぞ」
「そうか。楽しみだ」
「期待して良いぞ……うん?」
すると、ジークフリードは水平線の向こう側に目を向ける。
近付いてくる船が一隻、二隻、三隻……って、どんどん増えてくる!
しかも、帆にはこれ見よがしに特徴的なドクロのマークが描かれていた。
海の事に疎い俺でも分かる。
アレは、あの船団は……。
「「海賊か!」」
俺とジークフリードが同時にそう言った直後、船団から大砲の玉が飛んでくる。
当たり所が悪いと最悪沈むその砲撃はしかし、こちらを威嚇するように船の大分手前に着弾する。
だけど威嚇射撃としては十分で、余波で舞い上がった水飛沫が甲板を襲う。
「くっ……」
「運が悪いな。まさかこんな所で遭遇するとは……」
「……? あの船団について何か知ってるのか?」
俺がそう尋ねると、ジークフリードは神妙な面持ちで頷く。
「ああ。あの海賊達は黒髭海賊団。『黒髭』の異名を持つエドワード・ティーチが率いる、ここら一帯の海域を支配する最低最悪の海賊だ」
船旅に海賊の襲撃は付き物(偏見)。
評価、ブックマークをしていただけると嬉しいです。




