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第20話 帰省

前回のあらすじ

荒くれ者達を退けた

 

 ちょっとした(?)イレギュラーがありつつも、わたし達は無事に王都に辿り着いた。

 ここでコジロウさん達と別れ、わたし達は王都滞在中にお世話になるカストールの実家へと向かう。

 ……なんとなくだけど、コジロウさん達とはいつか何処かで再会しそうな気がする。


 そんなことを思いつつも、カストールと雑談している間にカストールの実家の屋敷に着いたようで、屋敷前で馬車が停まる。

 馬車を降り、門をくぐって庭を突っ切る。


 すると……。


「ポルクスお姉ちゃん!」


 生け垣の影から現れた金髪碧眼の少女がその長い髪を靡かせ、わたしに抱き着いて来た。

 彼女の背中に腕を回し、わたしも抱き締め返す。


「久しぶり、クリュネちゃん。少し見ない間に大きくなったね」

「ポルクスお姉ちゃんも元気そうで嬉しいよ」


 少女――クリュネちゃんはそう言うと、わたしの胸に顔を埋める。

 クリュネちゃんはカストールの妹で、小さい頃からわたしのことを実の姉のように慕ってくれていた。

 わたしにはお姉ちゃんと弟だけはいたから、わたしもクリュネちゃんのことを実の妹のように可愛がっていた。


「クリュネ。僕も帰って来てるんだけど……」


 カストールがそう言うと、クリュネちゃんは埋めていた顔を上げて実の兄の方に顔を向ける。


「うん? ああ……お帰り、カストールお兄ちゃん」

「あっさりしてるなぁ……まあ良いけど。……ところで、クリュネ。父さんと母さんは今いる?」

「お母さんならいるよ。何なら、アルヘナお兄ちゃんもヘレネお姉ちゃんも、後ついでにワサトもウチにいるよ」

「「……うん?」」


 クリュネちゃんの言葉に、わたしとカストールは首を傾げる。


 アルヘナお兄ちゃんはカストールの実の兄で、ヘレネお姉ちゃんとワサトはわたしの実の姉と弟だった。

 アルヘナお兄ちゃんはヘレネお姉ちゃんと結婚していて、クリュネちゃんとワサトも家同士が決めた婚約者同士でもあった。


 長子同士と末子同士を結婚させるというのは予め約束していたようで、家同士の繋がりを強固にするという側面も孕んでいた。

 まあ、わたしもカストールと結婚したから、これでもかってくらいに家の繋がりは端から見れば強固なモノになっているのだろう。


 それ自体は別に良いんだけど……まだ未成年のクリュネちゃんが屋敷にいるのは全然問題じゃないし、その婚約者であるワサトがいるのも、まあ……問題はない。


 問題なのは、姉夫婦の方だ。

 アルヘナお兄ちゃんは家督の殆どを引き継いでいて、ジェミニアス子爵家が治める領地を治めているハズだった。

 だから普通なら、王都にいるハズがないんだけど……。


「……え? 何で?」

「あれ? 聞いてないの?」


 カストールが理由を尋ねるけど、クリュネちゃんは不思議そうに首を傾げる。

 今度は、わたしの方からクリュネちゃんに尋ねる。


「聞いてない? 何を?」

「……本当に? とぼけてるんじゃなくて?」

「「うん」」


 カストールと一緒にそう答えると、クリュネちゃんは何処か嬉しそうな表情を浮かべて答えてくれた。


「ヘレネお姉ちゃん、妊娠してるんだよ。それで、出産は王都でするって言うから、アルヘナお兄ちゃんも帰って来てるの」

「へぇ〜、妊娠……」

「へぇ〜、出産……」

「……」

「……」

「「………………はああああああっ!?」」


 遅れて理解したその内容に、わたしとカストールは揃って大声を上げた―――。




 ◇◇◇◇◇




 クリュネちゃんの案内でリビングに向かうと、アルヘナお兄ちゃんとヘレネお姉ちゃんがソファーに並んで座っていた。

 二人は常に微笑んでいて、幸せオーラを周囲に撒き散らしていた。


「アルヘナお兄ちゃん、ヘレネお姉ちゃん」

「うん? 何だ、クリュネ……って、ああ! カストールにポルクスちゃん! 久しぶり!」


 アルヘナお兄ちゃんは立ち上がり、わたし達の方に近付いて来る。

 そしてカストール、わたしの順で抱擁を交わす。


「兄さんも元気そうで良かったよ……っと、そうだ。クリュネに聞いたよ? 姉さん、妊娠おめでとう」

「おめでとう、お姉ちゃん」

「ありがとう、二人共」


 ヘレネお姉ちゃんはそう言い、ふわっと柔らかい笑みを浮かべる。

 お姉ちゃんはいつもふわふわとした雰囲気を纏っていてとても優しかったけど、妊娠したからなのかその雰囲気に磨きが掛かっているような気がする。


「そうだ、兄さん。兄さんもこっちに来ちゃって大丈夫だったの? 仮にも領主が領地を空けてちゃダメなんじゃないの?」

「そこは大丈夫だ。俺の代わりに父さんが領主の務めを果たしてくれてる」

「なるほど……だからクリュネはさっき、母さんだけはいるって言ったのか」

「……あれ? ワサトは?」


 部屋の中を見回すけど、弟の姿が何処にも無かった。

 てっきりここにいるのかと思っていたけど、どうやら見当違いだったみたいだ。


「ワサトならあたしの部屋にいるよ、ポルクスお姉ちゃん。呼んでこようか?」

「ううん、大丈夫。いるのが分かればいいから」

「カストール達は、確か……ポセイドン殿下の式典に出席するんだったんだよな?」

「うん。だからしばらくお世話になるよ、兄さん」

「短いが、久しぶりの兄妹水入らずの時間か……楽しみだ」


 そう言うアルヘナお兄ちゃんは、本当に心の底から楽しそうに微笑んだ―――。






ヘレネ&クリュネ(ヘレネー&クリュタイムネーストラー)は神話上のカストール&ポルクスの姉妹、アルヘナ&ワサトは現実の双子座を構成する恒星の一部が元ネタです。




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