第2話 両家への挨拶
本日二話目!
前回のあらすじ
婚約破棄された
ポルクスは自分が今言ったことが信じられないらしく、僕と同じ色の瞳を見開いてポカンとしている。驚きたいのはこっちなんだけど……。
だけどポルクスの提案に、僕は内心狂喜乱舞していた。
だって――ポルクスは僕の初恋の相手だし、何なら今だって一人の女性として好意を抱いている。
「えっと……結婚? 僕とポルクスが?」
月明かりを反射する長い銀髪に見惚れつつ、そう聞き返す。
それでようやく、ポルクスの意識も戻ってきたようだ。
それから自分が何を言ったのか理解したのか、顔をみるみると真っ赤にしていく。
「あ、えっと……えっ!? わたし何て言ったの!?」
「「わたしと結婚して」って言ったんだけど……」
「ぅえっ!?」
あたふたと慌てるポルクスの様子は、純粋に可愛いなぁ……と思う。
そんな彼女の手を取り、真っ直ぐに見つめる。
「ポルクスさえ良かったら、僕と結婚して欲しいんだけど……どうかな?」
「……カストールはそれで良いの? わたしがカストールのこと憐れんで、ただ勢いで言ってるだけかも知れないんだよ?」
「それでも構わないよ。それに……」
「それに?」
言うかどうか迷ったけど、ポルクスの目を見て長年の想いを告白することを決心する。
「……それに、僕はポルクスのことが好きだから。従姉妹とか幼馴染だからとかじゃなくて、一人の女性として。……だから改めて言わせて。ポルクス、僕と結婚してください」
「…………………………はい」
長い沈黙の後、ポルクスはコクリと小さく頷いた―――。
◇◇◇◇◇
……っていうことがあったのが一週間前。
今日は、カストールが結婚の挨拶をするためにわたしの屋敷へとやって来ていた。
応接室でわたしとカストールは並んで座り、わたしの両親と対面していた。
カストールの正面にはわたしのお父さんが、そしてわたしの正面にはお母さんが並んで座っていた。
事情が事情だから、断られると思っていたんだけど……。
「良いわよ〜」
「だな。二人の結婚を認めよう」
事情を説明すると、驚くほどすんなりと結婚の許可を貰った。
予想外過ぎて、わたしとカストールは顔を見合わせる。
「えっ……あっさりし過ぎじゃない?」
「どこが? 相手はカストール君だし、それにポルクスもカストール君のことが好き――」
「おおおお母さん!? 何言ってるの!? まだ直接言ってない……あ」
お母さんの突然のカミングアウトにわたしは慌てまくって、隣にカストールがいることを一瞬だけ忘れてしまった。
だから自分が何を言いかけたのか理解し、羞恥の感情がわたしを支配する。
顔が赤くなっているのを自覚しつつ、両手で顔を覆って俯く。
「……恥ずかしい……」
「でも事実じゃない。何を恥ずかしがる必要があるの?」
「それとこれとは別だよ……」
「そう。……さて」
羞恥心が消えない中指の隙間から両親の方を見ると、二人共真剣な眼差しをカストールに向けていた。
「カストール君。娘のこと、よろしく頼むよ」
「まだまだ未熟な娘だけど、どうか夫婦仲良くね」
「はい、お任せください」
こうして、わたしの両親への挨拶は無事(?)に終わった―――。
◇◇◇◇◇
それからさらに一週間後。
今度はカストールの両親への挨拶を行っていた。
こっちもウチの両親同様、すんなりと結婚の許可が下りた。
ここまですんなり過ぎると、逆に不安になってくる。
「すんなり許可したね?」
「まあな。ポルクス嬢が今日ウチにやって来ると聞かされた時に薄々、な」
カストールの言葉に、カストールのお父さんがそう答える。
それに続くように、今度はカストールのお母さんが口を開く。
「それにいとこ同士の結婚なんて、貴族の中じゃ珍しくもなんともないもの。反対する理由は無いわ」
彼女の言う通り、貴族家はその権力を盤石なモノとするために親戚同士で結婚することがある。
だからいとこ同士であるわたしとカストールの結婚も、そう珍しいことじゃなかった。
ただ……珍しいと言えば珍しいのは、わたし達の結婚はどちらかと言えば恋愛結婚に当たる点だ。
貴族家も、そして王家も、幼少期に婚約者が決まるのが普通だった。
だから恋愛結婚というのは、貴族家の中では珍しいと言える。
閑話休題。
カストールの両親は、わたしの方へと目を向ける。
「ポルクス嬢。カストールはまだまだ未熟者だが、どうかよろしく頼む」
「夫婦仲良くね、ポルクスちゃん」
「はい」
こうして、カストールの両親への挨拶も無事に終えた―――。
挨拶が終わったら次は……。
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