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第18話 サムライとニンジャ

前回のあらすじ

行き倒れ発見

 

「いやぁ〜、かたじけない! 助かった!」

「……ごちそうさまでした」


 長い黒髪を一つに縛った男性は笑顔でそう言い、濃い紫色のショートボブの女性は小さな声でそう言う。

 二人は空腹で行き倒れていたらしく、もしもの時のために持ってきていた鍋に材料を入れてポトフを作って振る舞った。


 それだけなら何てことのない出来事なんだけど……。


「あ……はい。満足されたようで何よりです……」

「……(絶句)」

「……二人でこの量を?」

「……夢でも見てるのかしら?」

「……残ると思ったんだけど……」

「……まあ、うん。お鍋洗ってきますね」


 まさかまさか、鍋に入っていたポトフをこの二人で食べ切ってしまった。

 僕も、そしてポルクス達もその事実に驚きを隠せないでいた。


「む……まだ名乗っていなかったな。拙者はコジロウと申す。そしてこちらは拙者に付き従っているアヤメと申す。アヤメ共々拙者達を助けて頂き、そして料理まで振る舞って頂き、誠に感謝する」


 男性――コジロウさんはそう言うと、アヤメさんと共に座ったまま頭を深々と下げてくる。


「いえいえ。人として当たり前のことをしたまでですよ。……それじゃあ、元気になったようなので、僕達はこれで……」

「あいや待たれよ」

「……? 何ですか?」

「このまま助けて頂いた恩を返さないのは侍の名折れ。拙者達に出来ることであれば恩を返させて頂きたい」

「……って言われても……サムライ?」


 コジロウさんのある一言に、僕だけでなくポルクスもピクッと反応する。

 僕達の反応が引っ掛かったのか、コジロウさんは不思議そうに首を傾げる。


「うん? 如何なされた?」

「サムライって、あのサムライですか!?」

「カタナを振るったりする、あのサムライ!?」

「そのサムライで相違ない」

「じゃ、じゃあ……アヤメさんもですか!?」

「いや。アヤメは忍び……忍者にござる」

「「ニンジャ!!」」


 ポルクスと二人、高いテンションではしゃいでいると、冷ややかな視線が従騎士達から向けられていた。


「……? どうしたの、皆?」

「いえ……そんなに珍しいですか、サムライもニンジャも? 王都にいなかったワケでもないでしょうに」

「「だってカッコいいじゃん!」」

「さいですか……」


 ポルクスと全く同時にそう答えると、シグルドは何故だか諦めたような表情を浮かべる。

 見ると、ブリュンヒルデとトリスタンも似たような表情を浮かべていた。


「……? どうしたんですか?」


 ただ一人、鍋を洗いに行って今戻ってきたイゾルデだけは、不思議そうに首を傾げていた―――。




 ◇◇◇◇◇




 変に高まっていたテンションも落ち着き、僕達も名乗った後コジロウさん達に改めて尋ねる。


「そう言えば……何でコジロウさん達はこんな所に? 見たところ、ヤマト皇国の人ですよね?」

「うむ」


 ヤマト皇国は極東にある島国で、サムライやニンジャがゴロゴロといるらしい。

 この国に皇国人がいないわけじゃないけど、とても珍しい部類に入る。


「拙者はまあ、その、何だ……諸国漫遊をしている最中なのだ」

「……主殿。そこは建前でも武者修行の旅をしていると言った方が良いのでは?」

「む、そうか……武者修行の旅をしている最中なのだ」

「な、なるほど……」


 そう答えるくらいしか出来なかった。

 それに少し言い淀んでいた部分があったから、本当に諸国漫遊かどうかも怪しい。

 もしかしたら、祖国から何らかの理由で逃げているのかもしれない。


「して、恩を返させて頂きたいのだが……」

「別に返して欲しいとか思ってないんですけど……」

「しかしこのままでは侍の名折れ。如何様な願いでも叶えてしんぜよう。雑用に小間使い、何ならアヤメにカストール殿の伽の相手をさせて……」

「だ、駄目です!」


 すると、ポルクスが僕を守るように手を広げて前に出て来た。


「む? そこで何故ポルクス殿が出て来る? ポルクス殿はカストール殿の姉妹ではござらんのか?」

「わたしはカストールの妻です!」

「そうか妻か……国が変われば法も変わる。この国では兄弟姉妹で婚姻が結べるのか?」

「違いますよ! わたしとカストールはいとこ同士ですっ!」

「なるほど。だからそんなに顔付きが似ているのか。……気分を害されたのなら謝罪しよう。すまなかった」


 コジロウさんはそう言うと、両手を着き頭を下げる。

 その様子を見て、ポルクスは毒気が抜かれたようだ。


「あ……いえ。わたしもムキになっちゃったので……」

「かたじけない。……だが、ふむ……返せるモノと言えば、後は拙者の剣の腕くらいしかないな。見たところ、カストール殿達は何処かに向かわれる途中では? であれば、道中の護衛を任せて頂きたい。少しは役に立つことを約束しよう」

「……お願いします」


 コジロウさんの提案を少し考えたけど、護衛役が増えることはメリットしかない。

 だから彼の提案を受け入れ、僕達は再び進み始めた―――。






コジロウがいるんだから、あの人も……。




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