第16話 招待状
新章開幕です!
スタンピードが発生してから二ヶ月後。
先の騒動で被害を受けた地域の復興もそれなりに進んでいた。
復興費用はウチの資産からいくらか捻出したのと、国に申請していた災害復興支援金、それと討伐した大量の魔物の亡骸を専門の業者に買い取ってもらい、その買取金額の五割で賄っていた。
ちなみに、買取金額の三割は被害を受けた住人への手当金として配布し、一割五分をスタンピード終結に尽力してくれた騎士達に配布、残りをウチの資金にさせてもらっていた。
討伐した魔物の中にドラゴンもいたから、買取金額は予想よりも高額になった。
そしてまさかドラゴンを討伐したという事実が新たな事件……事件? を運んでくるとは、この時のわたしもカストールも夢にも思っていなかった―――。
◇◇◇◇◇
「……行きたくないなぁ……」
「わたしもカストールと一緒。絶対何か言われるよ。もしくは罠に嵌められるとか?」
「お二人共……滅多なことを言うものではありませんよ?」
ケイローンさんは肩を竦めるけど、それだけ行きたくない内容と差出人だった。ケイローンさんが持ってきたカストール宛ての手紙は。
差出人はまさかのポセイドン殿下で、手紙の内容は「自分とアンフィトリテ嬢の結婚披露式典に出席せよ」と書かれていた。
命令形な辺り、なんとしてもわたし達二人には出席して欲しいらしい。
どうせ結婚生活が上手くいってないとか何とか難癖付けて、わたし達を貶して式典の肴にする腹積もりなのだろう。
でも残念ながら、わたし達の結婚生活は順調そのものだし、殿下の期待には添えられない。
まあ、ここまでわたしの完全な想像だから、実際にそうなるとは限らない。
「もうさあ、街の復興が忙しくて出席出来ませんって返事しちゃ駄目かなぁ? 別に嘘言ってるワケじゃないしさ」
「それで良くない?」
「お二人共……そんなにご出席されたくないのですか?」
「「はい」」
ケイローンさんの質問にカストールの声を揃えて即答すると、彼は深い溜め息を吐く。
「……ならば、王都にいらっしゃるご両親に会いに行くついでにご出席なさっては如何ですか?」
「両親にか……そうだね。しばらく会ってなかったし、顔くらい見せた方がいいのかな?」
「でも見せたら見せたで、「孫はまだか?」とか言われるかもしれないよ?」
「ああ……そういうこともあるのか。う〜ん……」
カストールは腕を組んで、ウンウンと唸っている。
ここ最近、カストールとは夫婦の営みをする頻度を減らしていた。
というのも、もうしばらくはカストールとの二人きりの時間を過ごしたいと思ったからだった。
カストールはわたしの意思を尊重してくれて、少しでも長く夫婦の時間が過ごせるように尽力してくれていた。
こんなに良い旦那さんのお嫁さんになれて、わたしは本当に幸せ者だと思う。
閑話休題。
カストールは結論が出たようで、組んでいた腕をほどく。
「……うん。甚だ不本意だけど、式典に出席しよう」
「いいの? わたしが言うことじゃないけど、元婚約者と顔を合わせることになるんだよ?」
「そうだね。だけど殿下達の思惑はどうあれ、僕達の仲が良いことを見せつけられたら意趣返しにもなって面白いかなって」
「意趣返し? 何の?」
「あの時、婚約破棄したことに対する、さ」
カストールは普段はそれほどでもないけど、ちょっとだけ性格が悪いところがある。
その証拠に、カストールは今とっても悪い笑みを浮かべている。
「え、何? 婚約破棄されたこと根に持ってるの?」
「いいや。逆に感謝してるくらいだよ」
「じゃあ、何で……」
「ポルクスを一方的に振った殿下に対して思うところがあるからね、僕は。だから、ポルクスの今の幸せな姿を見せたら、殿下に一泡吹かせられるかと思ってさ。貴方が手放した女性は、今とても幸せですよってさ」
「別にそんなことしなくてもいいのに……」
でもそう言ってくれるのは素直に嬉しい。
だって、カストールはそれだけわたしのことを愛してくれて、そして大切にしてくれていることの証左でもあったから。
「だろうね。まあ僕の自己満足だから、ポルクスは知らんぷりしててもいいよ?」
「そういうことなら、わたしだってアンフィトリテ嬢に思うところはあるよ? 見ようによっては、彼女は他人の婚約者を取った形になるんだから。しかも自分の婚約者を捨ててだよ?」
「……字面だけなら、アンフィトリテは悪役令嬢みたいなムーブしてるね」
「本当にね」
「じゃあ、その二人を見返しにでも行きますか」
「うん」
そうして一週間後、殿下達の結婚披露式典に出席するために王都へと向かった―――。
婚約破棄系の物語のある意味大事なイベント、元婚約者を見返すイベント発生です。
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