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第15話 夫婦の時間②

前回のあらすじ

スタンピードを退けた

 

 スタンピードの終結から一週間くらいは、街の被害状況の調査や復興計画、事件の詳細を纏めた書類の作成などバタバタしていたお陰で、カストールはほとんど休んでいなかった。

 それも今日ほとんど終わり、やっと一息つける状況になっていた。


 カストールはわたし達の自室のソファーに、ぐで〜っと身体を投げ出してリラックスしていた。

 ちなみにこの部屋の隣は寝室で、室内のドアから寝室に出入り出来る仕組みになっている。


 わたしもソファーに座り、お疲れな様子の旦那に労いの言葉を掛ける。


「お疲れ様、カストール」

「……うん。本当に疲れたよ」

「ずっと働きづめだったもんね」

「……そうだね」


 わたしの問い掛けに一拍遅れて答える辺り、疲労は限界まで達しているに違いない。

 だから、ちょっとしたご褒美を上げても問題は無いハズだ。


「カストール。少し休んだら? もし眠るんならわたしの膝貸すよ?」

「……それじゃあ遠慮無く」


 カストールはそう言うと、いつもよりもゆっくりとした動作で横になり、わたしの膝に頭を乗せる。


「あ……この枕良いね。良い感じに柔らかいし、丁度良い高さだ」

「なにそれ? 柔らかいって、わたしの足がむちむちだってこと?」

「そこまでじゃないけど、そうだなぁ……女の子特有の柔らかさ、みたいな?」

「ふぅ〜ん」

「……うん。本当に、気持ち良くて……」


 うとうとしたかと思うと、カストールはそのまま目を閉じて眠ってしまった。

 カストールが少しでもゆっくりと休めるように、片手でカストールの頭をゆっくりと撫で、もう片方の手で赤ちゃんをあやすように規則正しいテンポでカストールの胸を軽く叩く。


 カストールは気持ち良さそうに眠っていて、その寝顔を見ているだけでわたしもなんだか幸せな気持ちになる。

 だから無意識に顔を近付け、眠っているカストールの唇に軽くキスをする。


 顔を離した後、自分が何をしたのか自覚して急に恥ずかしくなってくる。

 カストールはぐっすりと眠ってるから、わたしが何をしたのか気付いていない、ハズ……いや。気付かないでいてくれた方が助かる。


「………………はぁ」


 一人溜め息を吐き、カストールの顔を見つめる。

 良い夢でも見ているのか、口元が僅かに緩んでいた―――。




 ◇◇◇◇◇




「…………………………ぅ」


 ゆっくりと目を開け、夢の世界に沈んでいた意識も引き上げる。

 なんだか幸せな夢を見ていた気がするけど……まだ夢の中みたいだ。

 だって、うつらうつらと舟を漕いでいるポルクスの寝顔が目の前にあったんだから。


 ポルクスを起こさないようにゆっくりと起き上がり、代わりにポルクスが良く眠れるように、彼女を起こさないようにゆっくりとその身体を横たえる。

 僕の膝を枕代わりに貸したけど、幸いにもポルクスは起きなかったようだ。


 ふと窓の外を見ると、青空に朱が混ざり始めていた。

 結構な時間、僕は眠っていたらしい。

 逆に言えば、それだけ疲労が溜まっていたっていうことなんだけど……。


 窓の外から視線を戻し、ポルクスの方に目を向ける。

 規則正しい寝息を立てていて、ちょっとやそっとのことでは起きそうになかった。


 イタズラでもしようかと思ったけど、気持ち良さそうに眠るポルクスを起こして怒らせるのも悪いと思い、なんとか踏み留まる。

 その代わり、頭を撫でるくらいなら許されるだろうと思い、ポルクスを起こさないように注意しながら頭を撫でる。


 ポルクスの髪はサラサラしていて、いつまでも撫でていたくなる触り心地だった。

 髪をすくように指を通すと、スルッと毛先まで流れた。


 ……大丈夫だよね?


 そう思いながら、ポルクスの髪を何房か手に取る。

 そして編み編みと、ポルクスの髪を三つ編みに編み込んでいく。

 ポルクスはあまり髪型を弄らない方だから、色んな髪型のポルクスを見たい僕としてはそこだけがちょっとした不満点だった。

 まあ、普段のポルクスが一番可愛いから、言う必要が無かっただけだけど……。


 ポルクスは目覚めず、その間に三つ編みが一本出来上がる。

 もう一本作ろうかな? と思っていると、ポルクスが身動ぎをする。

 そしてゆっくりと目を開け、にへらと微笑む。可愛い。


「おはよう、ポルクス。もう夕方だけどね」

「……うん。おはよう、カストール……って、あれ? わたし、何でカストールに膝枕されてるの? わたしがしてたんじゃないの?」

「ポルクスも寝てたからね。座ったままじゃキツいと思ってね」

「そっか……ありがとね、カストール」


 ポルクスはそう言い、起き上がる。

 そこでようやく、自分の髪が編み込まれていることに気付いたようだ。


「あれ? 三つ編み……カストールがやったの?」

「うん。嫌だった?」

「ううん。嫌じゃないけど……カストールって三つ編みが好きなの?」

「うん? 何で?」


 ポルクスの質問の意図が分からずに聞き返すと、ポルクスは頬を染めながら答えてくれた。


「えっと、その……カストールにはいつまでも可愛いって思われていたいから。だから、カストールの好きな髪型にしても良いかなって思って……」

「そっか……しいて挙げるならポニーテールだけど、普段のポルクスが可愛いから、そんなに無理しなくて髪型変えなくていいよ?」

「そ、そう? えへへ……」


 僕に可愛いと言われて嬉しいのか、ポルクスははにかむ。めっちゃ可愛い。結婚したいくらいだ……結婚してたわ。


 それから僕とポルクスは、夕食の準備が出来たと呼びに来るまでの間、久しぶりに他愛のない会話をして二人きりの時間を過ごした―――。






やっぱりいちゃラブを書くのは難しい……。


あ、次回から新章です!




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