第14話 スタンピード③
前回のあらすじ
何処もヤバい
最短距離で西門に向かうべく、近くの建物の壁を駆け登り屋根の上へと上がる。
そしてそのまま、屋根伝いに西門を目指す。
普通の人間なら、壁を駆け登ったりピョンピョンと跳んで屋根から屋根へ移ることなんて出来ない。そんな、極東にいるニンジャじゃあるまいし。
こんなことを可能にしているのは、身体強化魔術のお陰だった。
コレを使っていたから、そんな芸当が可能だった。
そんなこんなで西門までたどり着くと、アタランテがガルーダに押し潰されている場面に出くわした。
彼女を助けるべく、ボクは弓を構え矢の照準をガルーダの首元に定める。
距離は少しあるけど、ボクの狙撃魔法で目の前にあるみたいに拡大して見えている。
すると、イゾルデがボクの肩に手を置く。
「サポートするね。《エンチャント:パワー》、《エンチャント:ファイア》」
イゾルデの魔法である付与魔法で矢が強化される。
そしてそのまま放つと、大砲の砲弾でも撃ち込まれたみたいにガルーダの頭部がドガン! と吹き飛ぶ。
矢に付与されていた炎は断面を焼いて、血肉が飛び散るのを防いだようだ。
頭を喪ったガルーダの体はゆっくりと地面に倒れ込み、アタランテも起き上がってくる。
ボク達も屋根から飛び降り、彼女の下へと向かう。
「大丈夫だった、アタランテ?」
「え、ええ……助けてくれて、その……ありがとう」
「どういたしまして。……それで、ここから侵入した魔物は?」
「あたしがあらかた討伐したけど……もしかしたら討ち漏らしがあるかも」
「分かった。この場はボク達に任せて、アタランテは避難を」
「何で? あたしだって戦えるわよ?」
「あそこにいるのはアタランテちゃんのお友達なんじゃないの?」
イゾルデがそう言うと、アタランテは瓦礫になりかけてる山へと目を向ける。
ボクもそちらに目を向けると、そこには逃げ遅れたのか子供が数人その場でじっとしていた。
「……そういうこと。分かったわ。あたしはあの子達と一緒に避難するわ」
「そうしてくれると助かる。それと、避難するなら屋敷ね。あそこは今一番安全な場所だから」
「分かったわ。……ああ。門の近くに罠設置してあるから、有効活用してちょうだい」
アタランテはそう言い残すと、子供達の方へと向かう。
そして子供達と一緒に、この場を去って行った。
それを見送った後、ボクは崩壊した門の方に目を向ける。
見える範囲には魔物はいないけど、何が起こるか分からない。
だからイゾルデと共に、警戒して門の方を見ていた―――。
◇◇◇◇◇
何もかも焼き尽くすドラゴンの炎は確かに恐ろしい。
恐ろしいが――当たらなければどうということはない。
ドラゴンの炎が迫り来る中、僕は自らの魔法で目の前の空間をおもいっきり殴り付けて破壊する。
空間の連続性を破壊されて一種の断層となったその空間に炎がぶつかった瞬間、炎はそれ以上僕の方へと迫って来ることは無かった。
炎に焼かれてない僕を見て不審に思ったのか、黒いドラゴンは再びブレスを放つ予備動作を見せてきた。
だけどそれは、こちらが攻撃を仕掛けるチャンスでもあった。
シグルドとブリュンヒルデはいつの間にかドラゴンの懐まで接近しており、ブリュンヒルデの魔法でシグルドが空高く打ち上げられる。
「墜ちろ、トカゲ野郎! 《ソードダンス》!」
シグルドは魔法で何本も剣を生み出し、それらを自由自在に操ってドラゴンを斬り刻んでいく。
それが我慢ならなかったのか、ブレスの矛先を宙にいるシグルドへと向ける。
しかしそれはブリュンヒルデが許さなかった。
「させない! 《アイスケッテ》!」
刻印魔法で氷の鎖を生み出し、ドラゴンの口を塞ぐ。
これでドラゴンはブレスを放てなくなった。
そうなったらもう、二人の独壇場だった。
シグルドの剣で斬り刻まれ、ブリュンヒルデの魔法で追撃が加えられる。
一分と立たずにドラゴンは地へと墜ち、本当にただのデカいトカゲと成り果てた。
そのトカゲに二人が止めを刺したのを見届けた後、僕達も魔物の群れの討伐に加わる。
夕方まで掛かった討伐戦は多少の負傷者を出したものの、死者は誰一人としていないという奇跡の戦果を挙げた―――。
なんとかスタンピードを退けることが出来ました。
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