第13話 スタンピード②
前回のあらすじ
スタンピードが発生した
現場に辿り着くと、騎士団の面々はすでにスタンピードの群れと交戦状態に入っていた。
指示出しやら準備やらで時間が掛かっていたとはいえ、報告を受けてからまだ一時間も経っていない。
すると、ゴブリン達を一網打尽にした騎士団長が僕の下へとやって来る。
騎士団長は動きやすさを重視した鎧を身に着け、両手に双剣を握っていた。
「騎士団長、これは?」
「我々の予想よりも早く、群れが到達してしまいまして……今騎士団総出で討伐に繰り出しているところです」
「では僕達もすぐに加勢します」
「有り難く」
騎士団長は短くお礼を言うと、再び群れの中へと混じって行った。
そして両手の剣を振るい、次から次へと魔物達を屠っていく。
彼と入れ替わるようにして、シグルドとブリュンヒルデが僕の下へとやって来た。
アーサーとケイは僕の指示を待たずに、交戦状態へと入っている。
「旦那様、ご無事で?」
「うん。そっちは?」
「なんとか。……トリスタンとイゾルデは?」
「二人には西門の方を任せてる。そっちからも魔物が侵入したっぽいからね。数はそんなに多くはないと思うけど……」
「あの二人なら大丈夫でしょう」
「だね。だからとっととこっちの……」
……魔物達を片付けよう、と言おうとした次の瞬間、大地を震わす大きな咆哮が鳴り響いた。
思わず手で耳を塞ぐけど、それでも大きな音に変わりはなかった。
音のした方に目を向けると、空に黒い大きな影があった。
その影は大きな翼と漆黒の鱗を備え、発達した四肢と尻尾をゆらゆらと揺らしていた。
そして長い首と、威圧感を感じさせる顔は僕達の方をジッと見つめていた。
その影は誰がどう見ても――ドラゴンの姿そのものだった。
それと恐らく、あの黒竜がこのスタンピードの元凶に違いない。でなければこんなことが起きた理由が付かない。
「あのドラゴンは僕と僕の従騎士達に任せて! 騎士団の面々は他の魔物達を倒すことに集中を!」
そう叫び、彼等の返事を待たずにドラゴンへと突っ込んで行く。
するとドラゴンは僕に視点を合わせ、息を大きく吸い込むような動作をする。
そして口を大きく開き、蒼い炎のブレスが放たれた―――。
◇◇◇◇◇
「避難してきた皆さんは大広間へ! 体調が悪くなった方は近くの使用人にお声掛けを! 使用人のみんなは住人達のサポートを全力で! 大丈夫です、落ち着いてください! 我が屋敷は安全です!」
この屋敷の主であるカストールの代わりに、領主夫人であるわたしが避難してきた人達を落ち着かせるための声掛けをする。
それと屋敷が安全というのも嘘じゃない。
わたしの創造魔法で屋敷の塀の外に新たに壁を造り、その壁をスルーズの強化魔法で強度を上昇、ヒルドの反射魔法で攻撃してきた敵に対して自動的に攻撃を反射、そしてオルトリンデの鉄壁魔法で塀と壁の強度を最大限にまで強化していた。
だから生半可な攻撃じゃあ、壁も塀も突破することは困難だった。
すると西門の方角と南の方角から、一際大きい音がわたし達の下まで届いてきた。
ここはたぶん大丈夫だろうけど、楽観視して良い状況でもないことも確かだった。
「……っ! 外にいる皆さんは早く中に入ってください! スルーズ、ヒルド、オルトリンデ! 足の遅い住人達の誘導をお願い!」
「畏まりました!」
三人を代表してスルーズがそう返事をすると、三人共塀の外へと出て住人達の避難のサポートを開始する。
三人の動きを見守る中、わたしは密かに祈っていた。
……カストール。どうか無事でいて―――。
◇◇◇◇◇
魔物から上手く距離を取りつつ、矢を放つ。
もう何体倒したか分からないけど、魔物はまだまだ湧いてくる。
次の矢を……と思って矢筒に手を伸ばすけど、何の感触も無かった。
まさかと思い目を向けると、矢はいつの間にか一本も残っていなかった。さっき放ったので最後だったみたいだ。
それを好機と見たのか、オオカミのような魔物があたしの方に突撃してくる。
それを回避し、魔物の襲撃で半壊した建物の残骸に手を触れる。
一部とはいえ、建築材に木材が使われていて助かった。
「《メイキング:アロー》!」
木材は一瞬で矢へと変わり、それを魔物に向かって速射する。
これがあたしの魔法、狩猟魔法だった。
狩猟魔法は手に触れたモノを、術者の好きな形に瞬時に変換出来る魔法だった。
だからこの魔法で、木材から矢を作り出した。
街中に侵入してきた魔物はだいたい討伐出来たし、念には念を入れて門があった場所へと向かう。
その場に手を着き、再び狩猟魔法を発動させる。
今度は、魔物がこの場を通った瞬間に地面が陥没するような罠を仕掛けた。
見た目はただの地面だから、魔物に勘付かれることはほとんどないだろう。
と思っていた次の瞬間、何者かに地面に押し潰された。
うつ伏せで地面に押し付けられている中顔だけ動かすと、ガルーダと呼ばれるでっかい鳥の魔物がその足であたしを押さえ付けていた。
……空からの襲撃は予想してないわよ……。
なんて思っていると、ドガン! という大きい音と共にガルーダの頭が吹き飛んだ。
血肉が飛んでこないのは、恐らく断面が焼かれたか何かしたからだろう。
……って、そんなことより……。
そう思い、ガルーダを仕留めた者がいないか辺りを確認する。
するとまだ無事だった建物の屋根に、弓を構えたトリスタンと彼の肩に手を置いているイゾルデの姿があった―――。
トリスタンとイゾルデの魔法の詳細は次回にでも。
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