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第12話 スタンピード①

前回のあらすじ

アタランテは子供達になつかれてる

 

 アタランテちゃんが街の子供達になつかれているのを確認した一週間後。

 ランスロット騎士団長が突然ウチの屋敷にやって来た。


 余程急いで来たのか、肩で息をしている。

 それを見て、わたしもカストールも只事じゃないことが起きているのを察する。


「どうしました?」

「……ほ、報告します! 南方の森林地帯でスタンピードの発生を確認しました!」

「なんだって!?」


 ランスロット騎士団長の報告にカストールは驚いたのか、椅子から立ち上がっていた。

 わたしは立ち上がらなかったけど、カストールと同じくらいには驚いていた。


 スタンピードは地震や嵐などと並ぶ天災の一種で、スタンピードの規模はどうあれ街に甚大な被害をもたらす。

 最悪の場合、スタンピードによって一つの街が滅びることもある。というか、実際過去に何回かあった。

 スタンピードはそれほど恐ろしい災害だ。


 カストールは努めて冷静に、ランスロット騎士団長に状況を確認する。


「……群れは今どの辺りに?」

「先の事件で、領主様がほとんどの魔物を葬った場所の近くです」

「あそこか……街への到達予測時間は?」

「最短で二……いえ、一時間半ほどかと」

「進行報告とかは?」

「北西方向へ進路を取ってますね」

「……街の南西部が被害に遭う、か……分かりました。南西部の住人の避難を最優先に。それから街全域の住人に避難を促してください。それと街の北西部に丘がありましたよね? 動ける住人にはそちらまで避難するように誘導を。避難が困難な住人は我が屋敷に誘導してください。街中よりは安全だと思うので」

「分かりました!」


 ランスロット騎士団長は敬礼すると、足早に執務室から去って行った。

 わたしは立ち上がり、カストールに近付く。

 そしてカストールに抱き着くと、カストールもわたしの身体に腕を回す。


「……行くの?」

「うん。この街の領主として、放っておける状況でもないしね」

「気を付けて。必ず帰って来てね?」

「うん。ポルクスも、家のことお願いね?」

「任せて」


 そう言い、カストールから少しだけ身体を離す。

 そしてカストールが必ず帰って来れるように、おまじないとしてカストールとキスをする。


 長くも短い時間の後に唇を離すと、カストールはもう一度わたしを抱き締める。


「行ってくるね、ポルクス」

「いってらっしゃい、カストール」


 抱擁を解くと、カストールは急ぐように執務室を出て行った―――。




 ◇◇◇◇◇




 アーサー、ケイ、トリスタン、イゾルデを連れてスタンピードが発生している現場へと向かう。

 シグルドとブリュンヒルデの二人には現場に先行してもらっていて、スルーズ、ヒルド、オルトリンデは屋敷とポルクスの警護のために置いてきていた。


 すれ違う住人達は幸いにもパニック状態になっておらず、ジェミニ騎士団の騎士達が丘がある北西方向へと誘導していた。

 落ち着いて避難しているのは、この状況下ならとてもありがたい。


 そう思っていた次の瞬間、西門がある方向から大きな破壊音が鳴り響いた。

 もしかしたら、群れからはぐれた魔物達が侵入してきたのかもしれない。

 それと、今の音を聞いて、避難していた住人達は我先にとパニックになったように逃げ惑っていた。


「トリスタン、イゾルデ! 西門の方頼む! くれぐれも無理はしないでね!」

「了解!」

「分かりました!」


 二人に素早く指示を出すと、二人共西門の方へと全速力で駆けて行った。

 僕達も僕達で、スタンピードの現場へと急行していった―――。




 ◇◇◇◇◇




 いつも通り街の子供達と、今日は西門前の広場で遊んでいたら、騎士団の人達がやって来て至急避難するようにと言われた。

 なんでも、街の南の方でスタンピードが発生したらしい。


 あたし達は大人しく騎士団の人達の指示に従って避難を始める……いや、始めようとした。

 次の瞬間、西門の門扉が大きな音と共に吹き飛ばされた。


 あたしは咄嗟に、近くにいた子供達の身体をも押し倒す形でその場に伏せる。

 門の方を見ると、大きなイノシシのような魔物が何体か侵入してきていた。


 魔物はあたし達を視界に収めると、こちらに向かって一直線に突進してくる。

 子供達は悲鳴を上げるけど、子供達を傷付けるような真似はこのあたしが許さない。


 いつも背負っている弓を構え、矢筒から矢を取り出す。

 そして弓につがえ、イノシシ型の魔物の眉間目掛けて矢を放つ。

 ヒュッという風切り音と共に矢は放たれ、狙いを過たずに魔物の眉間に突き刺さる。


 急所を撃ち抜かれた魔物はグラッと体勢を崩すと、あたし達のすぐ近くの民家に頭から突っ込んで行った。

 その隙に、あたしは子供達に指示を出す。


「さあ! アンタ達は早く避難しなさい!」

「お……おねえちゃんは!?」

「あたしは……あたしは、アンタ達を逃がすために、アイツらをこの場で食い止める!」


 立ち上がり、壊れた門の方に目を向ける。

 そこには、あたしに突進してこようと姿勢を整えている魔物達の姿があった―――。






大変な事態になってきましたね。




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