第11話 確認と報告
前回のあらすじ
アタランテを使用人として雇った
アタランテちゃんがウチで働くようになってから、二週間が経過していた。
アタランテちゃんの事情はすぐに使用人達に共有し、みんな大なり小なり驚きはしていたけど、彼女を使用人の一人として快く迎え入れていた。
それから、使用人として街中に買い出しに行くこともあるからと、カストールが「アタランテちゃんへの危害を一切認めない」ような触れを出していた。
アタランテちゃんの見た目は迫害の対象になると考えたからだ。
幸いにも住人から不満の声が上がることは無く、逆に子供を持つ母親達から、「是非ともこのままこの街に居させてください」といったような内容の嘆願書が上がってくるくらいだった。
その理由が分からず、アタランテちゃんが買い出しに出掛けたのと同時に、わたしとカストールは彼女の後を追ってその理由を探ることにした―――。
◇◇◇◇◇
今日の護衛は、シグルドとオルトリンデの二人だった。
実はシグルド達わたしの元々の従騎士達は、同じ孤児院出身だった。
その中でもシグルドとブリュンヒルデは年長組だったから、オルトリンデ達からは実の兄・姉のように慕われていた。
閑話休題。
わたし達は人混みに紛れ、アタランテちゃんの行方を追う。
アタランテちゃんは機嫌が良いのか、尻尾が左右にふりふりと揺れていた。
すると……。
「あーっ! アタランテちゃん! 遊んで遊んで!」
「アタランテお姉ちゃん! 今日は何して遊ぶ?」
「今日はあっちで一緒に遊ぼう!」
アタランテちゃんの周りには、みるみる内に子供達が集まって来ていた。
母親達からなんであんなお願いが上がってきたのかの理由を垣間見た気がする。
きっと、アタランテちゃんが子供達の遊び相手になってくれているからだろう。
それと、アタランテちゃんも子供達に囲まれて満更でもなさそうだった。
「なるほどね。アレならあんな嘆願書が上がってきても不思議じゃないかな?」
カストールもアタランテちゃんの方を見て、うんうんと頷いている。
「じゃあ……」
「うん。理由も分かったことだし、僕達は帰ろうか」
「いいけど、その前に何処か寄ってかない? せっかく街中に繰り出したんだしさ」
「それなら近くにオシャレな喫茶店がありますよ。最近見つけたんです」
すると、オルトリンデがそう提案してくる。
彼女の提案は悪くないように思えるし、喫茶店巡りが趣味の彼女がオススメするくらいだから本当にオシャレな喫茶店なのだろう。
「わたしは良いと思うけど、カストールは?」
「僕も良いよ。せっかくだから行ってみようか」
「それじゃあ、案内任せても良い?」
「お任せください!」
オルトリンデは薄い胸を張って答える。
それから、彼女オススメの喫茶店を訪れた。
オススメするだけあって、自家製パウンドケーキは美味しかったし、それに合うような風味の紅茶も美味しかった―――。
◇◇◇◇◇
「ふむ……そうか。報告ご苦労。引き続き警戒を厳に。少しの変化でもあったら至急報告を」
「ハッ!」
私の部下の一人であり、ジェミニ騎士団の副団長でもあるアグラヴェインは敬礼をすると、団長室を出ていく。
一人残った私は椅子に身体を預け、先程アグラヴェインから受けた報告を整理する。
先の凶暴化した魔物の群れの生き残りの討伐を、彼をリーダーにした部隊に任せていた。
生き残りは難なく討伐出来たらしいが、その時アグラヴェインは気になることがあったという。
それは――生き残った魔物の何体かは、何者かに喰い千切られた跡を遺して死んでいたらしい。歯形からしてドラゴン系の魔物とのことだった。
ドラゴン系の魔物は通常、火山や雪山などの山岳地帯を住処としている。
地上を活動圏にする種類もいなくはないが、この街周辺には棲息していない。
それを不審に思ったアグラヴェインは、部下に命じて周囲の探索を任せたらしい。
その結果、近くにも似たような魔物の死骸がいくつか見受けられ、普段よりも魔物の個体数が少なかったらしい。
強力な魔物の出現予測と、それに呼応するかのような目撃される魔物の個体数の減少。
先の事件があれ単発の事件ではなく、ソレの前哨戦だということなら魔物が凶暴化していたことにも納得がいく。
あれは魔物が暴れていたのではなく、逃げていたのだろう。
何に? もちろん自分よりも強い魔物――この場合、未確認のドラゴン種に、だろう。
そして今の状況は、ソレが起こりうる嵐の前の静けさと言っても過言ではない。
ソレとは――魔物の群れによる大暴走、スタンピードだった―――。
辺境の地にスタンピードは付き物(偏見)。
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