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第109話 同盟締結

前回のあらすじ

同盟相手が決まった

 

 ここで改めて北方領域について情報を整理しよう。


 パシフィス大陸北部は特定の国が統治している訳じゃなく、小国が乱立して北方領域の統一を目論む勢力が相争う戦国時代になっているけど、ちょっとだけ違う。


 ここで言う小国とは、一つの街を中心にして周辺の村を含めた領地の事を指す。

 だから正確には、都市国家と表現するのが適切だった。

 その為、街の領主はある意味では国王と同義という事になる。


 大きな街とかだと単独で周辺都市と()り合える戦力を備えているけど、クリスタルの街みたいな弱小都市だとそうはいかない。

 僕達が加わった事で戦力は多少改善されたとしても、焼け石に水にしかならないだろう。


 その様な街は大体、周辺の街と同盟を結んで大都市に抵抗出来るだけの戦力を整える。

 だからクリスタルの街も、周辺都市と同盟を結ぶ事は何ら不思議な事じゃなかった。


 ……同盟締結のその場に、僕も出席してなければ、の話だけど―――。




 ◇◇◇◇◇




 ロジェロとの初遭遇から一ヶ月後。

 同盟相手がベオウルフさん達の屋敷にやって来たとの事なので、何でかブラダマンテに屋敷まで連れて行かれた。

 理由を尋ねると、これから屋敷で同盟の締結が行われるかららしい。訳が分からない。


「いやいや、何で?」

「えっ? だってクリスタルの街の防衛隊……ああ、もう騎士団に改名したんでしたっけ。騎士団の団長なんですから、出席しても問題無いのでは?」

「だとしても、余所者が出席しちゃいけないと思うんだけど……」

「十分関係者ですよ。それにシャルルさんの出席はパ……父からの指示なので」


 そういう事なら出席しない訳にもいかない。

 理由も分かったし、納得もいった。

 でも……。


「……何でミルトもついて来てるのさ?」


 そう。

 何でか知らないけど、ミルトも僕達について来ていた。

 いつも通り(?)、メイド服を着たまま。


 ミルトは目をパチクリとすると、小首を傾げつつ答える。


「えっ? 面白そうだから?」

「面白そうって……」

「安心してよ、シャル。邪魔はしないし、シャルの雇われメイド役に徹するから」


 ……そういう事じゃないんだけど……。


 なんて思っている間に屋敷に着いてしまった。

 僕達はそのままブラダマンテの案内で、応接室へと向かう。


「そう言えば聞いてなかったけど、同盟相手って何処なの?」

「ルビスの街とサフィールの街です。それぞれクリスタルの街から北と北西に位置する街ですね」


 確かその二つの街も、クリスタルの街と似たり寄ったりな規模の街だったハズだ。

 だから今回同盟を結んだとしても不思議じゃない。


「ふぅ〜ん。他には?」

「現状、その二つの街だけですね。……失礼します」


 ブラダマンテはそう言ってから、応接室のドアを開ける。

 中には上座に座るベオウルフさんの他に、見慣れない人達の姿もあった。


 ベオウルフさんから見て右手側のソファーには赤紫の髪に紅色の瞳の爽やかイケメンが座っていて、左手側のソファーには青紫のロングヘアで藍色の瞳の妖艶な雰囲気の美女が腰掛けていた。


「シャルル君、よく来てくれた。……お二方、彼が先程まで話していた我が街の騎士団長だ」

「ふむ……我々とそう変わらない年頃に見えますね」

「フランソワ王国で騎士をされていたというのは本当?」

「ええ、まあ。事実ですよ」


 美女の問い掛けに、何ら隠すような事じゃないから素直に答える。

 すると二人の視線は、僕の隣にいるミルトの方へと移った。

 二人の顔は怪訝な、見ようによっては不服そうな表情を浮かべている。


「……それで、そのメイドは?」

「一介の使用人がこの場にいるのは場違いではなくて?」

「初めまして。わたしはミルト・サクレ・フランソワと申します。以後お見知りおきを」


 スカートの裾を軽く持ち上げ、それはそれは綺麗なお辞儀をする。

 こんなのでも歴とした王族だったんだなぁ……と再認識している中、二人は目を大きく見開いて驚愕の表情を浮かべる。


「フランソワって……あのフランソワ!?」

「こ、これはとんだ失礼をっ!」


 二人が慌てて跪きそうになるのを、僕が手で制す。


「畏まらなくて大丈夫ですよ。ここにいるのはフランソワ王国の王女じゃなくて、何処にでもいるただのメイドですから」

「彼の言う通りです。なので必要以上に畏まらなくて大丈夫ですからね」

「……で、では」

「そのように……あの、質問を許して下さいますか?」

「ええ、何なりと」

「何故王女殿下がこのような地に?」


 ミルトは女性の質問に即答はせず、何故か僕に伺いを立ててくる。


「……シャル、言わなきゃダメかなぁ?」

「ダメでしょ。理由を聞かれてるんだから」

「そっかぁ……端的に言えば、ロマンシア帝国の皇子を平手打ちしたから国外追放された、ですかね?」

「そ、それは、その……」

「その……アレですね……」

「率直に「馬鹿なんですか?」って言っても良いんですよ?」

「いやいや。追放されたとは言え、一国の王女にそんな不敬は」

「そういう貴方は、王女殿下とどのようなご関係で?」

「ただの幼馴染ですけど?」


 そう答えると、二人だけでなくベオウルフさんとブラダマンテも首を傾げていた。何故だ。


「えっと、その……本当に、ただの幼馴染?」

「はい」

「恋人関係などではなく?」

「僕とミルトが恋人? 冗談だとしてもゾッとしないですね。こんなお転婆娘、異性としてなんて見た事ないですよ」


 ハハハ、と笑い飛ばしていると、ミルトも僕と同意見なのかコクコクと大きく頷いている。


「……コホン。では本題に戻ろう。その前にシャルル君達に紹介しておかないとな。こちらがアダム・ドレッドノート殿で、こちらがリリス・ハイペリオン殿だ。それぞれルビスの街とサフィールの街の領主だ。……ではお二方、同盟の条件に異議は無いか?」

「はい。我々が不利になるような条項は見た所見当たらないので」

「わたくしも同意見です」

「では同盟締結だな。これで正式にルビスとサフィールの自警団はこちらの騎士団に編入され、その総指揮をシャルル君が引き続き務める事になるな」


 ……んんんんんん?

 初耳なんですけど???






(まだ)ミルトの事を異性として見ていないシャルル。

その代わり(?)、仕事は増えました。




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