第107話 新たな騎士
前回のあらすじ
撃退した
クリスタルの街にやって来てから三ヶ月。
わたしはシャルと同じ一軒家で暮らしていた。
別に結婚したとか付き合ってるから同棲してるとかじゃなくて、単純にわたしが一国の王女で、何か起きた時にわたしを護衛するためにシャルと一緒に暮らす必要性を感じたからだった。
それはシャルも同様で、むしろ同棲の話はシャルの方から持ち掛けてきた。
わたしとしては何ら不自由も不安も無かったから、シャルの提案を受け入れた。
それに、男女が一つ屋根の下で一緒に暮らす事にはなるけど、お互いに幼馴染同士の関係だから万が一にもそんな事にはならないっていう確信があったし、シャルの事を男の子として意識した事なんて一度も無かったしね。
きっとシャルも、わたしの事なんて女の子として見ていないだろう。
ただ、流石に居候っていうのも居心地が悪い。
だから、一月くらいベオウルフさんの屋敷のメイドに家事を習っていた。
王城で暮らしていた時には出来なかった事だったから、何もかも新鮮な体験だった。
やっぱり最初の内は失敗ばかりだったけど、三ヶ月もすればたまにミスはするけど、そつなくこなせるようになっていた。
現に今も、わたしとシャル二人分の朝ご飯の準備を終えた所だった。
ちなみにアストルフォは自分の実家に、ローランは小ぢんまりとした一軒家にそれぞれ暮らしていて、そのどちらもわたし達の家の近所にあった。
閑話休題。
いつもならシャルは起きてリビングにいるハズなのに、今日はまだ起きていないみたいだ。
「……仕方無いなぁ」
そう呟き、シャルの部屋へと向かう。
廊下に出て階段を昇り、左側の書斎の隣の部屋がシャルの部屋だった。
ドアを軽くノックするけど、中から返事が返ってこない。
まだ寝てるのかな? と思いながらドアを開け、中に入る。
シャルはベッドで寝ておらず、机に突っ伏すような姿勢で眠っていた。
机の上には、何らかの書類が散らばっていた。
「シャル、起きて。もう朝だよ」
そう声を掛けながら肩を揺らすと、シャルは身動ぎをした後にゆっくりと顔を上げる。
銀髪は前髪が少しはねていて、赤い瞳もまだ寝ぼけているのか半開きだった。
「……あ、ミルト? 僕寝てた?」
「ええ。せめてベッドで眠りなさいよ。風邪引くわよ?」
「ごめん。寝落ちしちゃったみたいだ」
「まったく……朝ご飯出来てるから、着替えてから下に来てね」
そう言い残し、わたしはリビングへと戻っていった―――。
◇◇◇◇◇
ミルトが作ってくれた朝ご飯を食べた後、身支度を整えてから出掛ける。
ちなみにミルトの服はメイド服で、本人によれば「家事がしやすい服装だし、可愛いから」普段から着ているらしい。
仮にも一国の王女がメイド服なんて……と思ったけど、ここではそんなしがらみなんて無いも同然だから、本人の好きな格好をすれば良いと思って余計な口出しはしなかった。
この三ヶ月、何度もクリスタルの街の防衛に手を貸してきたからなのか、ベオウルフさんたっての願いで先月からクリスタル自警団の全権指揮を任されていた。
余所者にそんな大役を任せても良いのか疑問に思ったし、実際質問したけど、「この街でシャルル君ほどに実力のある指揮官などいないからな」と言う事らしい。
それならばとその役を引き受け、まず最初に取り掛かったのは戦力の再編成からだった。
ぶっちゃけて言うと個々の戦力に差があり、僕やローラン達と同程度の実力を持っているのはブラダマンテだけだった。
だからローラン、アストルフォ、ブラダマンテの三人を隊長に据えて三つの部隊に分け、それとは別に実力の高い者の内から三人、僕自ら指揮する特別部隊に編成しようと思っていたんだけど、その作業が思いの他難航していた。
だからそれは一旦諦めて、今は個々の実力を底上げする事を優先しようと朝ご飯を食べながら決めていた。
実際、あれから何度も戦闘を繰り返していたし、僕達がいなかったら負けてたんじゃないのかな? って思う戦闘も何度かあった。
だからこそ、個々の実力強化は急務でもあった。
それとゆくゆくは、自警団から騎士団に改名しようと密かに計画してもいる。
「よう、シャルル」
「ローラン、おはよう」
自警団の訓練場へと向かう途中、ローランと出会す。
その拍子に大きな欠伸をすると、ローランが尋ねてくる。
「なんだ、寝不足か?」
「……うん。部隊編成に結構手間取ってね」
「で? 決まったのか?」
「今はとりあえず、自警団の戦力強化を優先しようと思う」
「……問題は棚上げか?」
「そうだね」
それから他愛の無い雑談をしながら訓練場へと向かう。
現地に到着すると、昨日まではいなかった見知らぬ男性がいる事に気付いた。
青髪青目で何処か飄々とした印象を与える男性はブラダマンテと楽しそうに会話していて、彼女も心無しか楽しそうな笑顔を浮かべている。
ブラダマンテは僕達に気付くと、男性の手を取って僕達に近付いてくる。
「シャルルさん、ローランさん。おはようございます」
「おっす、ブラダマンテ」
「おはよう、ブラダマンテ。そちらは?」
「ああ……お二人はまだ知らないんでしたね。では紹介します。彼はロジェロ。ワタシの、その……旦那、です……」
「へぇ〜、旦那さんかぁ………………旦那さん?」
僕達よりも若いブラダマンテがまさか結婚しているとは思わず、驚きを隠せないでいた。
確かブラダマンテはアストルフォと同い年の十七才だったハズだから、世間的には随分と早い結婚だ。
それはローランも同じだったようで、驚きつつもブラダマンテに聞き返していた。
「冗談とかじゃなく?」
「はい。こんな事で冗談なんて言いませんよ」
「初めまして、ロジェロです。妻のブラダマンテがお世話になったようで」
「あ……いえいえ。こっちもブラダマンテには色々と助けられてもらってますから」
「昨日の夜にこの街に戻ってきて、ブラダマンテから話は聞いています。……シャルルさん。オレの力も自警団の連中と同じように使ってみませんか?」
この出来事がきっかけで、ロジェロも僕の騎士団の中でも有数の精鋭騎士となるけど、この時の僕は夢にも思っていなかった―――。
新キャラ登場です。
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