第106話 騎士奮闘
前回のあらすじ
戦闘に協力することにした
土地勘のあるアストルフォの案内で件の防衛線までやって来ると、誰がどう見てもこちら側が劣勢に立たされていた。
その中でもブラダマンテは奮戦していたけど、それにだって限度がある。
「ローラン、アストルフォ。無理しない程度にね」
「それはこっちの台詞だ。お前こそ無理はするなよ」
「ローランの言う通りですよ。シャルルさんの方がぼく達より無理するんですから」
「言ってろ。……それじゃあ、散開!」
そう言うとローランは右翼側に、アストルフォは左翼側に向かって行く。
僕はブラダマンテが戦っている中央部へと向かい、初手にとりあえず創剣魔法で相手陣営に攻撃を仕掛ける。
不意打ちの攻撃に相手は反応出来ず、半数以上の敵が負傷していた。
生み出した剣の中から長剣を二本手に取り、ブラダマンテに声を掛ける。
「大丈夫だった?」
「あ……はい! 大丈夫です、助かりました!」
「僕達も街の防衛に協力するよ。ベオウルフさんにはもう伝えてある」
「なら、お願いします」
「お願いされた」
左右の剣を構え直し、手近にいた敵に接近してそのまま斬りつける。
X字に斬りつけた相手はそのまま地面に倒れ伏し、僕は流れるようにして隣の敵も斬りつける。
その間にも創剣魔法で相手陣営に攻撃を仕掛け続け、僕自身もダメージを与えた相手を確実に葬っていく。
そうしている間に、両手の剣が耐久値を超えてポキリと折れてしまった。
まあ、耐久値なんてそんなに高くしていなかったから壊れて当然とも言える。
だから、壊れた剣を捨てて近くに突き刺さったままの剣を二本引き抜いて攻撃を再開する。
初めは劣勢だったこちら側だったけど、僕達が加わったお陰なのか徐々に押し返していた。
まあ、相手の戦力が百人くらいしかいなかったっていうのも幸いしていた。
チラリと周囲の戦況を確認すると、ローランとアストルフォが先頭に立ちつつ、崩れ掛かっていた防衛線を何とか立て直していた。
流石に戦線を押し返すとまではいかないまでも、拮抗状態に近い形にまで持っていっていた。流石、僕の自慢の部下達。
僕の方も、僕が先頭に立ち敵を蹴散らして、倒し損ねた敵をブラダマンテ達が確実に仕留めてくれていた。
……ココだな。
そう判断し、ブラダマンテに素早く指示を出す。
「ブラダマンテ! ほんの少しの間で良い! 敵を足止めしておいて欲しい!」
「はい!」
入れ替わるようにしてブラダマンテが僕の先頭に躍り出て、反対に僕は前線から少し後退する。
左右の剣を投げ捨て、僕は右腰に携えていた剣の柄に手を掛ける。
そして鞘から勢い良く引き抜く。
複雑な紋様が刻まれた刀身は黄金に輝き、刃の部分は炎を連想させるように真っ赤に光輝いている。
そしてナックルガードの中央部とグリップエンドにはそれぞれ魔石が埋め込まれていた。
この剣は……と言うか武器は魔武器と呼ばれ、簡単に言えば武器の魔道具版だ。
武器に刻まれている紋様によって発揮する効力が異なっている。
僕のこの魔武器、魔剣レーヴァテインも数ある魔武器の一つだった。
ただ、レーヴァテインが他の魔武器と異なる点が一つだけ存在する。
それは、魔石が二つ埋め込まれている点だ。
魔武器も普通の魔道具と同じく、基本的に魔石を一つ埋め込まれている。
それだけで魔武器として問題無く稼働するのに、二つ埋め込まれている理由。
それは単純で、二つ使わないと出力不足に陥るからだ。
その分、レーヴァテインの火力は強力無比なモノとなっている。
閑話休題。
レーヴァテインの柄を両手で握り、僕の魔力を流す。
僕の魔力を取り込んだ二つの魔石は炎のように赤く輝き、刀身に炎が纏わりついていく。
煌々と燃え盛る炎から視線を外し、ブラダマンテ達に指示を出す。
「みんなすぐに後退して! 僕の魔剣の攻撃に巻き込まれても知らないからね!」
「……っ! 総員、退避ーーー!!」
僕の魔剣がタダモノじゃないと感じ取ったのか、ブラダマンテがそう指示を出す。
その指示に従ってこちら側の兵士達が後退したのを見計らい、数歩前に出てレーヴァテインを最上段に構える。
「ハアアアアアアッ!!」
そんな掛け声と共に、レーヴァテインを勢い良く振り下ろす。
刀身から炎が伸び、放射状に広がっていく。
炎は相手陣営を呑み込み、包み込み、そして焼き尽くしていく。
炎の威力が収まった後に残ったのは赤熱化した地面と倒れ伏している敵、それと運良く炎の範囲外にいた敵だけだった。
「ぐっ……全軍撤退、撤退ーーー!!」
残存していた敵で恐らく一番位の高い兵士がそう指示を出すと、敵は一斉に撤退を始めた。
こっちはどうするのだろう? とブラダマンテの方を見ると、彼女も素早く指示を出していた。
「引くと言うのなら追撃はしないわ! 全軍撤退! 負傷した兵士達の人数の把握もお願い!」
「「「ハッ!」」」
訓練された動きで、兵士達は撤退の準備を進める。
僕はレーヴァテインの炎を消し、鞘に納める。
「お疲れ、シャルル」
「お疲れ様です、シャルルさん」
「ローラン、アストルフォ。そっちもお疲れ様。休憩らしい休憩も無いままに戦闘に参加したけど、大丈夫だった?」
「ああ、どうって事は無い」
「ぼくはちょっと疲れましたね」
ケロッとした様子のローランとは対照的に、アストルフォは自己申告通り少し疲労の色を覗かせていた。
すると、ブラダマンテが近付いてきた。
彼女は僕の前で立ち止まると、深々と頭を下げてくる。
「シャルルさん。助力ありがとうございました。シャルルさん達がいなかったらどうなっていたか……」
「役に立ったのなら良かったよ」
「それに最後の攻撃……もしや、右腰の剣は魔武器ですか?」
「うん、そうだよ。ついでに言えば左腰の剣もね」
「ああ……だから魔武器を使わずに戦っていたのですね。普及してきてるとは言え、魔武器はまだまだ希少な武器ですから」
「そうだね」
もし万が一にも何かの拍子に魔武器が壊れでもしたら、普通は魔武器専門の鍛冶師に修復をお願いするんだけど、こんな辺境の地にそんな人がいるとは思えない。
だからこれからも、今回みたいに戦局を決定付ける場面でしか使わないと決めている。
まあ、騎士団に所属していた時から、そんなような使い方をしていたのだけど……。
それからブラダマンテさんが率いていた兵士達と、ベオウルフさんが率いてきた兵士達がやって来て鉢合わせる事になり、ブラダマンテがベオウルフさんに説明をする。
ベオウルフさんにもお礼を言われた後、僕達はクリスタルの街へと戻って行った―――。
奮闘と言うか圧倒してましたね……。
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