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第104話 北方領域 前編

前回のあらすじ

国外追放処分になった

 

 王都から北の国境線まで二週間、そこからアストルフォの故郷までは更に一週間ほど掛かるらしい。

 しかも、国境を越えてからは宿屋らしい宿屋も無いそうだから、必然野宿をする必要がある。


 だから今、そうしていた。


「野宿って初めてなんだけど、結構面白いわね」

「そう?」


 焚き火に枝を追加しつつ、隣に座るミルトを見る。

 ミルトはカップを両手で抱え、夜空を見上げていた。


 ちなみにローランは真夜中の見張り番のために今テントの中で眠っていて、アストルフォは近くの水場に水浴びしに行っていた。


 そういえば、アストルフォって「子供の時に背中に大火傷を負って、直視するのも躊躇われるくらいの跡が残ってるから他の人と一緒に水浴びとかしたくないです。相手の気分を害しちゃうので」って入団早々に告白してたから、今も一人で水浴びしてる事に疑問は抱かなかった。

 アストルフォなりの気遣いっていうのは分かりきっているからだ。


「だってお城にいた頃は、こんな経験なんて出来なかったんだもの。やっぱり初めての経験は心躍るわね」

「こんな経験してたら驚きだけど……まあ、楽しめてるなら何よりだよ」

「それよりも、さっきから何の枝放り込んでるの?」


 ミルトが僕の持っている枝に目を向けてくる。

 それを軽く振りつつ、ミルトに説明してあげる。


「この枝って、燃やすと魔物の嫌う臭いを出すんだよ。人には無害で、臭いも殆ど感じないんだけどね」

「……虫除けの香の魔物版って事?」

「言い得て妙だね。だから野宿する時は、夜行性の魔物に襲われないようにするためにこの枝、確か……トネリコの木だったかな? その木の枝を必ず燃やすようにしてるんだよ。まあ、絶対の守りってほどじゃないけど、殆どの魔物は近寄って来なくなるんだ」

「へぇ〜、そんな木があるのね」


 ミルトは感心したように頷いた後、カップを傾ける。

 中身を飲み干し、空になったカップを差し出してくる。


「そろそろ寝るわ。良い感じに眠くなってきたから」

「分かった。おやすみ、ミルト」

「おやすみなさい、シャル」


 ミルトはそう言い、軽く欠伸をしつつ自分のテントへと入っていった―――。




 ◇◇◇◇◇




 その後の旅路も順調だったけど、もうそろそろアストルフォの故郷に着くらしいといった所で魔物に襲われていた。


 魔物はブラッディウルフと呼ばれる種類で、狼型の魔物らしく基本的に群れで行動する。

 中でも特徴的なのは、とてつもなく獰猛な性格な所だ。


 具体的には、目に映った敵は徹底的に排除しようとしてくる。

 全力で逃げている僕達を追い掛けてくるのも、その性格から来るモノだった。


「アストルフォ! あとどれくらい!?」

「全力で走っても最低でも五分は!」

「長くねえか!?」

「仕方ないでしょ、ローラン! こんな所にブラッディウルフの縄張りがあったなんて気付かなかったんだから!」


 ちなみに、ミルトは僕が今お姫様抱っこで抱き抱えている。

 ミルトの足だと僕達に追い付けないからだ。


 チラリと背後を振り向くと、真紅の毛並みの狼の群れが執拗に僕達を追い掛けている。

 魔術で脚力を強化しているとはいえ、このままだと追い付かれる。


「《クリエイト:ソード》!」


 だから、僕の魔法である創剣魔法で剣をいくつか生み出し、それらをブラッディウルフ目掛けて射出する。


 足止めになれば上々、運良くブラッディウルフに命中すれば良いな、程度で発動したけど、五本くらいはブラッディウルフに命中した。

 それでも、倒れたのは二、三体だけだった。

 他の個体達は、剣の盾を避けて僕達に迫ってくる。


「ダメか……」

「俺が殿を務める! アストルフォ、シャルルと姫さんをお前の故郷に無事に連れていけ!」

「……分かった!」


 ローランの言葉にアストルフォは頷き、ローランはその場で反転して腰に提げた鞘から長剣を引き抜いてブラッディウルフ達と対峙する。


 次の瞬間――赤い旋風が僕達のすぐ傍を駆け抜けた。

 その旋風は瞬く間にブラッディウルフ達を屠っていく。


 随分と慣れた動きでブラッディウルフ達を蹴散らすから、僕もアストルフォもその場で足を止め、ローランも呆気に取られたように身動ぎ一つしていなかった。


「ふぅ……こんな所かな?」


 怪我一つ無くブラッディウルフを全て蹴散らしたその人は持っていた槍をビュッと振り、付着していた血を飛ばす。

 そして僕達の方を振り向く。


 その人は赤い髪を長く伸ばしており、その瞳も真っ赤に輝いており、丸みを帯びた身体のラインから女性だと伺える。

 奇妙な既視感を抱くその顔付きに内心首を傾げていると、アストルフォがその女性に声を掛ける。


「久しぶり、ブラちゃん。元気にしてた?」

「あれ、アーちゃん? アーちゃんじゃない!」


 ブラちゃんと呼ばれたその女性はアストルフォに近付くと、槍を地面に突き刺してからぎゅっと抱き締める。


「久しぶり! 帰ってくるのは「フランソワ王国で騎士になるんだ〜!」って言って出て行った時以来じゃない?」

「そうだったっけ?」

「そうよ。……それで、こちらの方々は?」

「ここは僕が説明を」


 そう言い、ここまでやって来た経緯を説明する。


「……なるほど。それは随分と大変な目に……って、まだ名乗ってませんでしたね。ワタシはブラダマンテ。アーちゃん……アストルフォの従姉です。以後お見知りおきを」


 これが、後に僕に仕える騎士の一人となるブラダマンテとの、最初の出会いだった―――。






ローラン達の魔法もいつかお披露目出来たらいいなぁ……。




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