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第101話 騎士と姫君

今回から登場人物を一新した新章開幕です!

 

 パシフィス大陸の西部を治める王国、フランソワ王国。

 その王都であるディアマンテの中央に聳え立つ王城の廊下を、僕は一人で歩いていた。


 十五才から王国騎士団の騎士として王国に仕え始めてから早三年。

 その実力を買われ、若干十八才という若さでありながら第三部隊の部隊長を任されていた。


 今日王城に来たのはこの間の任務の報告と、近々この王城で開かれる催し物に関する警備配置について話し合うからだった。


「あ、隊長」


 すると曲がり角の先から、僕の部隊の部下が二人現れる。


 金髪碧眼の美丈夫はローランで、僕より一つ年上の従兄だった。

 僕の部隊の副隊長と言う立場とそのルックス、それと分け隔て無く誰とでも気軽に接する性格から、女性人気がとても高かった。

 もちろん、副隊長と言う立場に相応しい剣の腕前も持っている。


 長い赤髪を三つ編みにしているのはアストルフォで、女性に見間違えられるくらいに線の細い男性だった。

 やや垂れ目の赤い瞳も原因なのか、尚更女性的な印象を与える。

 そんなアストルフォは槍の名手で、普段はローランと一緒に行動して僕のサポートをしてくれている。


 ローランもアストルフォも、僕が最も信頼を寄せる部下だった。

 そしてそれ以前に二人共僕の親友で、仕事外では二人共僕の事を普通に名前で呼んでくれる。


「お疲れ様、ローラン。そっちの任務は大丈夫だった?」

「ああ。今回もアストルフォに助けてもらったからな。結構スムーズに終わったぞ」

「ちょっ、ローラン!?」


 ローランに頭をガシガシと撫でられ、アストルフォは恥ずかしいのか顔を真っ赤にしているが、嫌がる素振りは見せなかった。仲が良いのは良い事だ。


「僕はこれから総隊長の所に行くけど、二人はどうするの?」

「俺達も丁度向かおうとしてた所だ」

「じゃあ行こうか」


 そう言い、二人を連れて総隊長室へと向かう。

 ちなみに総隊長は元第三部隊の部隊長で、総隊長に就任した際に総隊長に実力等を買われて、半ば指名する形で隊長に就任した。


 すると、曲がり角で誰かとぶつかった。


「おっと……」

「イタタ……あれ、シャル?」


 僕の事を「シャル」と呼ぶのは、家族以外では一人しかいないし、今目の前で鼻を押さえている相手がそうだった。


 セミロングに伸ばされた金色の髪は輝いており、青い瞳は青空を連想させるかの如く澄んでいる。

 そして誰もが一目見ただけで超が付くほどの一級品だと分かる、豪奢なドレスを身に纏っていた。


 彼女の名はミルト・サクレ・フランソワ。

 このフランソワ王国の第一王女で、僕の幼馴染でもあった。


「……ミルト。今日は何の授業を抜け出したんだ?」

「えっ? えっと……ダンスの授業を……」

「ハァ……一応曲がりなりにも一国の王女なんだから、それに相応しい振る舞いは身に着けて欲しいんだけど? ついでに少しは落ち着いてくれると助かるんだけど……」

「むぅ……シャルもお母様みたいな事言う……」


 他人から見たら膨れっ面のミルトも可愛らしいと思うんだろうけど、小さい頃から見てきた僕からしたら、もう何の感情も抱かなかった。


 ミルトはちょっと、少し……いや、かなりお転婆だけど、天性の王族のカリスマからか、周囲の人間からは愛されお転婆姫として人気を得ていた。


「それで? シャル達は?」

「僕達は総隊長に任務の報告に行く所だよ」

「そう、お疲れ様。それじゃあね」

「待った」


 自然な流れで僕達の前から立ち去ろうとするミルトの細腕を掴んで引き留める。


「えっ、何?」

「何逃げようとしてるの? ダンスの授業はきちんと受けなよ。そんなでも一応王族でしょ?」

「そんなって失礼な! わたしはれっきとした王族よ!」

「なら尚更だよ。……ローラン、アストルフォ。先に総隊長に報告しに行ってて。僕はこのバカ王女をダンスの先生の所に連れてくから」

「バカ王女って失礼な! せめてお転婆姫にして!」


 ……それで良いのか? と思いながらも、僕はミルトをダンスの先生の所まで連行……ゲフンゲフン。

 丁寧にエスコートして行った―――。




 ◇◇◇◇◇




 見知ったダンスの先生にお礼を言われた後、僕はローラン達に遅れて総隊長室へと辿り着く。

 ドアを軽くノックすると、中から返事が返ってくる。


「開いてるよ」

「失礼します」


 中に入り、窓際にある執務机に座る総隊長に目を向ける。


 総隊長はアッシュブロンドの長い髪を襟足の辺りで一つに縛り、アメジストの瞳は知的さを感じさせる眼差しだった。

 そして服の上からでも分かる立派な双丘をお持ちだった。


 凛々しさを感じさせる顔付きのこの女性の名はデオン・シュヴァリエールさんで、フランソワ王国騎士団の総隊長を務める女傑であり、第三部隊の元部隊長だった。


 総隊長を任せられるだけあって武術の腕前は王国一で、僕の魔法込みでも未だにデオンさんには敵わずにいた。


 そんなデオンさんだからか、国王陛下から直々に『白百合の騎士』という異名を与えられていた。

 確かに、凛とした佇まいを連想させる白百合の称号はデオンさんの雰囲気にとても似合っている。


 閑話休題。

 姿勢を正し、右手を左胸に当てるこの国の騎士の敬礼をデオンさんに向かってする。


「総隊長。任務の報告に来ました」

「シャルルの任務は確か……王国北部に現れた北方部族の撃退、若しくは鎮圧だったよね?」

「はい。と言っても、あまり苦労はしませんでしたけどね。こちらの被害も軽傷者がいくらか出ただけで、死者は出ませんでしたから」

「だろうね。シャルルの魔法は相手が多人数であればあるほど真価を発揮するからね」


 デオンさんの言う通り、僕の魔法はどちらかと言えば一対多で真価を発揮する。

 だからと言って、タイマンで弱体化する訳じゃないけど……。


「それで? 北方部族はどうなったの?」

「撃退はしました。結構な大打撃は与えたつもりなので、しばらくは侵攻して来ないと思いますよ。と言うか、そのつもりで撃退したので」

「そっか……なら王国北部はしばらくは安泰かな?」

「恐らくは」

「シャルルがそう言うなら大丈夫だね。ご苦労様、シャルル。やっぱりシャルルを部隊長にして良かったよ」

「デオンさんの期待に応えられたなら何よりです」


 そう答えると、デオンさんは机の上に肘をつく。


「それじゃあ今度は、近々この王城でミルト第一王女の婚約披露パーティーの警備について話そうか」






主人公シャルルのモチーフはその名の通り(?)シャルルマーニュ=カール大帝です。

わあ、ビッグネーム……。




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