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第10話 事情聴取

前回のあらすじ

ケモミミ少女を捕まえた

 

「ただいま〜」


 不安は抱いてなかったけど、心配なモノは心配だった。

 だからカストールの声が聞こえた時、わたしは思わず玄関の方へと走って行った。


 玄関には無事な様子のカストールの他に、シグルドとブリュンヒルデの姿もあったけど……人影が一つ多い。

 その人影は女の子のモノで、わたしの目がおかしくなったのかケモミミが生えていた。


 目を擦ってもう一度見るけど、目がおかしくなったわけでも錯覚でもないようだった。

 もしかしたら夢かと思って頬っぺたをつねってみるけど、普通に痛かった。


「えっと……カストール。その娘は?」

「僕を襲ってきた娘だよ」

「じゃあカストール死んじゃったの?」

「勝手に殺すな、自分の夫を」

「冗談だって。どうせカストールのことだから、身体に当てられた武器を破壊魔法で壊したんじゃないの?」

「まあそうだけど……」


 わたし達の言葉を聞いて、女の子が驚いたような表情を向ける。


「短剣の刃が壊れたのはそういうことだったのね……」

「まあね。……それはそうと、ちょっと小汚ないから身体を綺麗にしてもらおうか。詳しい事情はそれから聞こう」

「じゃあブリュンヒルデにお願い――」


 ――しようかな? と言おうとした瞬間、女の子が首をブンブンと激しく左右に振る。

 女の子に怯えられるようなことでもしたのかなぁ? したんだろうなぁ……。


 仕方ないので、別の人にする。


「……するのもちょっとアレだし、ステンノとエウリュアレにお願いしようかな? シグルド。申し訳ないけど、二人を呼んできてもらえないかな?」

「了解っす」


 軽く返事をすると、シグルドは二人を呼びにこの場から離れて行った。

 するとすぐに二人を呼んできて、二人共女の子の姿を見て驚いたような表情を浮かべる。

 でもカストールが軽く事情を説明すると、二人共納得して女の子を浴室へと連れて行った―――。




 ◇◇◇◇◇




「……さて。詳しく話してもらおうか」


 応接室で、向かい側のソファーに座る少女にそう問い掛ける。

 少女はブラウスにスカートという比較的ラフな格好で、ボサボサだった髪もステンノとエウリュアレがやったのか、綺麗に整えられていた。


 ちなみにポルクスは僕の隣に座り、何かあった時のためにトリスタンとイゾルデが壁際に控えていた。

 シグルドとブリュンヒルデには、今回の騒動の報告書を貰いに騎士団の駐屯地へと遣いに出していて不在だった。


 ケイローンさんが淹れてくれた紅茶も出してはいるけど、少女は一口も口を付けていなかった。毒の類なんて入ってないのに……。

 そんなケイローンさんも、部屋の隅に控えていた。


「まずは名前から教えてもらおうかな?」

「……アタランテ」

「アタランテか。呪いを掛けられたらしいけど、心当たりは?」

「心当たり? そうねぇ……ある有力貴族に、「愛人にならないか?」って提案されたけど、それを断ったくらいかしらね。なんでそんな提案をしてきたのか分からないけどね、あたしには」


 少女―アタランテはそう言うけど、客観的に見てアタランテはとびきりの美少女と言っても過言ではないほどの美貌を兼ね備えている。

 そのことを当の本人が無自覚なのが、ある意味罪深いとは思うけど……。


「で、呪いを掛けられてそんな姿になったと」

「ええ、そうよ。この姿で何回か街の中に入ったことがあったけど、無理矢理追い出されたり、見世物にしようと捕まりかけたこともあったわね」

「よく無事だったね?」

「まあね。足の速さには自信があったから、今日まで運良く捕まらずに生きてこられたってわけ」

「なるほどね。……ケイローンさん。呪術師の知り合いっています?」


 駄目元でそう尋ねるけど、ケイローンさんは珍しく渋い顔をする。


「いるにはいますが……そこそこ、少し、いえかなり癖が強いですよ? 個人的にはあまり薦めたくはないですね」


 そこまで言われると、逆に会いたくなってくる不思議。


「一応呼んでもらえますか?」

「時間を頂いても?」

「はい」

「では後で手紙を出しておきます」


 ケイローンさんから視線を外し、再びアタランテの方へと顔を向ける。


「これでキミの呪い関係のことは片付いたとして……後はキミの処遇だね」

「それよそれ。騎士団に引き渡さなかったってことは犯罪者にするつもりは無いんでしょうけど……ハッ! まさか、あたしを慰み者にする気!?」


 アタランテはそう言うと、自分の身を守るように両腕で自分の身体を抱き締める。

 それに便乗する形で、ポルクスが尋ねてくる。


「そうなの、カストール?」

「そんなつもりは毛頭無いよ」

「こんなに可愛い女の子なのに、手を出したいとか思わないの?」

「全く、これっぽっちも。僕はポルクス以外の女性なんて眼中に無いから」

「……」


 ポルクスは黙ると、顔を真っ赤にしてそっぽを向いてしまった。

 見ると、何故かアタランテも顔を真っ赤にしていた。


「なんでキミも顔を赤くしてるんだい?」

「あ……人前でイチャイチャしないでよ! こっちが恥ずかしくなるから!」

「そう? イチャイチャなんてしてないけどなぁ……」

「これで……?」


 アタランテは怪訝そうな表情を浮かべるけど、僕は事実しか言っていない。

 そんなことよりも、アタランテの処遇を決める方が先だった。


「そんなことより……キミの処遇を決めないとね」

「そうよ。あたしはどうなるのよ?」

「そうだなぁ……ケイローンさんの知り合いの呪術師が来るまでの間、僕の家の使用人として働いてもらおうかな?」

「……それだけ?」

「もちろん変なことをしないよう監視は付けさせてもらうからね。ブリュンヒルデとか」

「精一杯働かせて頂きます!!」


 ブリュンヒルデの名前が出た瞬間、アタランテは真面目と恐怖がない交ぜになった表情で勢い良く返事をする。余程ブリュンヒルデのことがトラウマになったらしい。


 こうして、しばらく間アタランテは使用人として働くことになった―――。






カストール達の家にアタランテが加わりました。




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