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ある地方の夏祭り

作者: ハマ

 最近の変身ヒーローの仮面を付けた少年が人混みを歩く。


 今日は山神様を崇める為の祭りの日。

 この夏祭りの行事の意味を知る者は少なくなっており、年配の方々が数名知る程度である。

 いずれはこの風習の意味も忘れ去られ、祭という行事だけが残るだろう。それは寂しい事でもあるが、過去の悲しい出来事を忘れる為には良い事なのかも知れない。


 少年はチョコバナナの屋台の前で足を止めると、一本頂戴と言って三百円を渡す。

 屋台の店主もまいどと答え、持ち手を紙に包んだチョコバナナを手渡した。


 少年はチョコバナナに齧り付き、初めての甘さに驚き、美味しいと言って大袈裟に喜ぶ。

 店主はハニカミ、喜ぶ少年を見ていた。

 こんなに喜んでもらえるなら、作った甲斐があると言うものだ。


 チョコバナナを食べ終えた少年は、ゴミを出店に設置されたゴミ箱に捨てるとまた歩き出した。


 ドンドンと太鼓の音が鳴り、もうすぐ盆踊りの時間だと知らせる。


 櫓の周りに人が集まり踊る。

 それは死者の霊魂を鎮め、あの世へ帰す踊り。

 難しくはないが、夜とはいえ夏の暑い日にやるのは、かなり疲れる。


 少年は櫓に行くために階段を登ろうとすると、階段の横でキョロキョロと不安そうにした少女を発見した。


 心配になった少年はどうしたんだと尋ねると、少女は親と逸れたと言う。


 泣きそうな少女の頭を撫でて落ち着かせると、少年は少女の手を掴む、そしてこっちに居るかもと言って櫓のある階段を登って行く。


 少女は本当にこっちに両親が居るのかと不安になるが、少年から伝わる手の温もりが不安を和らげ、何故か大丈夫だと思えた。


 櫓のある場所へと辿り着く。

 そこでは既に盆踊りが始まっており、音楽に合わせて踊っている。

 年配者が多く、若い人達は少ないが、それでも見ていて楽しくなる。


 少年は仮面の下で目を輝かせ、少女は初めて見る光景に圧倒された。


 少女の目からは、他の人達とは違う光景が見えていた。

 櫓の先、山の上から巨大な蛇が見下ろしているのが見えるのだ。


 少女を呼ぶ声が聞こえる。

 その声は少女の両親のものである。

 それと同時に少女の手から少年の手が離れる。

 あっと言って少年の方を振り向くと、そこには誰も居なくなっていた。

 そして、見ている光景はいつもの夏祭りのものになっていた。



 楽しめたかと少年に問う声がある。

 その声は、長年この地方を守って来た山神様のものだ。

 嘗て生贄にされた少年は楽しかったと答えると、山神様に感謝した。

千文字以内は難し過ぎる。

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