39話 家族揃って侯爵家へ行った1
お父様とお母様を連れて侯爵家へお邪魔した。
お母様は馬車の中から庭を眺めている。
お父様は外も眺めず平然とした態度でいるが、お母様は少しばかり緊張しているようだ。
「これくらいの庭がある家を建ててもらいたいわねぇ~」
「バカを言うな! いくら俺でもこんな広い家を買う金などない! が……これだけ広ければ外でレストランを営業というのも悪くなさそうだがなぁ……ううむ!!」
お父様は外の庭を眺めながら、商売のことを考えているようだった。
お父様が作る料理は私の中では世界一だと思っているし、料理に関しては私の師匠でもある。
サバス様との縁もお父様がいたからこそだ。
いずれ恩返しができるようにしたいなぁ。
「ライアンちゃんったら……、こんなに素晴らしい庭を持っている王族と結婚するなんて、今更だけど凄いわねぇ」
「おいおい、庭と結婚するわけじゃないんだぞ? もっと人柄を見て感動したらどうなんだ?」
「あら、あなたのことは性格を見て結婚するって決めたのよ~?」
「そ、そうか? なら良いんだがなー」
お父様が照れていた。
お父様とお母様のラブラブな雰囲気を見ていて恥ずかしくなってしまう。
でも、今後私とサバス様でこのようなシチュエーションがやってきたら……と考えるだけで頭の中が沸騰してしまいそうだ。
屋敷の前に到着し、出迎えてくれたのは使用人ではなく、この家の主人だった。
「ハイファルレ家の皆様、ようこそ来てくださった」
「しばらくですなダイル侯爵よ」
「話は後にして、妻とサバスが待っている早速リビングへとご案内しよう。ソルト殿の口に合えばいいのだが」
「はっはっは! またまたご冗談を!」
仲の良さそうな二人の会話を聞きながら、リビングへと向かう。
私はこの家に大分なれたが、お母様はかなりテンパっている。
これって、かなりヤバいんじゃないだろうか。
こんな状態でサバス様やアリアと対面してしまったら……。
リビングに案内され入ると、サバス様、それからアリアの姿に変装しているダリア様がそこで待っていた。
「ひゃぁぁぁぁぁああああああああ~~~!!!!」
「ななななななななっ!!」
二人とも完全に驚愕していた。
そりゃそうなるか。
あれだけ好きだと言っていた歌手と気絶するくらいのカッコよさを持っているサバス様を見てしまったのだから。
「あああ……あなたは歌手のアリア様では!? なななな……なぜここに……!?」
お父様ですら焦っていて、呂律がまわっていない。
お母様はすでに何も喋れない状態になっていて、サバス様に視線が向いたまま固まっていた。
「はじめまして、サバスの母、アリアこと本名はダリアと申しますのよ。以後よろしくお願いしますね~」
アリアが頭を下げるのと同時に、サバス様も頭を下げた。
すると、アリアの顔がダリア様に戻っていたのだ。
手品かよ。
お父様は更に美しくなった姿を見て仰天してしてしまい、その場で固まった。
うんうん、私だけじゃなくてよかったよ!
私がおかしいんじゃないってことはこれで証明されたね。
誰でもこの二人を見たらそうなっちゃうんだって!
「ま……まさかアリア様がお前の婚約者の母親だとは……」
ここまでパニックになっているお父様を見たのは初めてかもしれない。
国王陛下相手にだって平然とした態度でいられるのに、アリアの前ではダメだったようだ。
お母様は今も固まったまま動かないので、顔の前で手を叩いて意識を取り戻させた。
「は……! 今天使と女神が見えたような……」
なんだかんだで二人とも流石だなと思ってしまう。
私が初めてお会いしたときは気絶してしまったんだ。
二人は驚いたり固まったりする程度で済んでいるのだから……。
「ライアンちゃんはこんなに美しいお二人を見ていて、よく平気でいられるわね……」
「さ、さすが俺の娘だ!」
「いえ、最初は同じような状態になっていましたけど、失礼のないようにしたかったので」
とは言っても、今だってサバス様やアリアの素顔を見ているだけで心臓が潰れそうになる。
今は至近距離ではないから、なんとか顔を合わせていても大丈夫なだけだ。
「はははっ! まさかソルト殿がそんなに焦るとはな。まぁ焦らず座りたまえ。今日はハイファルレ家とトリコロエル家の親睦を深める食事会なのだからな」
余裕に言っているけれど、ダイル様だってアリアを見て今だって緊張しているのでしょう?
「あら、あなたはこっちに座るのよ?」
「う……うむ」
アリアの真横にダイル様を座らせた。
ダイル様の顔が真っ赤っかになっている。
サバス様は相変わらず平然とした態度で冷静だ。
「私は今日はライアンの横で食べるとしよう」
「は、はひぃぃいっ! よろしくお願いしますっ!!
私の真横にサバス様が座る。
やっぱり緊張してしまうーーー!!
普段は四角いテーブルなのに、どうして今日に限って円形のテーブルを用意したんだ!?
お父様たちもようやく座り、親睦会という名の食事会が始まった。
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