双子が側近になってくれた
アマートとディーノが、正式に側近になってくれた。近衛隊の隊長ダンテ・マッカーニと揉めに揉めたが、やっとのことで了承してくれた。
ありがたいことである。
じつは、プレスティ侯爵家の五男、つまりアマートとディーノのすぐ上の兄さんが軍を退役し、隊長見習いとして近衛隊に入隊してくれることになった。現在の隊長であるダンテが引退したら、彼がその任に就くことになる。
五男のジャンルカは、プレスティ侯爵家の七人の中で一番優秀だと言われている。他の六人も優秀は優秀である。が、どちらかといえば武に長けていたり文に長けていたりと偏りがある。が、ジャンルカはオールマイティに長けていて、しかもカリスマ性や状況判断力、それから統率力が半端ない。このような逸材を、兄たちの下で眠らせておくのはもったいない。というわけで、近衛隊で活躍の場があればということになった。
それに、彼が軍を去った方がいい理由は他にもある。
このままいけば、軍はプレスティ侯爵家の五兄弟で動かすことになる。当然、ほかの貴族や官僚は面白くない。一番優秀なジャンルカを退役させ、その分他の優秀であろう人材を彼のあとがまに据えようというわけである。
もっとも、それもまた思いきった賭けではあるのだが。というのも、彼ら以外にこれといった素晴らしい上級将校がいないからである。
平和なときはかまわない。しかし、このさきどうなるかわからない。こちらから他国へ攻め入る、などとということは出来るだけしたくない。が、他国が侵攻してきたり、なんらかの理由でやむを得ず軍を動かさなくてはならない状況が発生しないとは、けっして言えない。
戦争に備えるというよりかは、天災や人災などから国民とその生活や財産を守るのは、軍が中心になる。
そのような危急に備える為にも、軍は万全の体制にしなくてはならない。
もしもジャンルカのかわりが役に立たなかったとしても、プレスティ侯爵家の残り四人がなんとかしてくれるはずだ。最悪、ジャンルカを復帰させてもいい。
いろいろかんがえ、みなで話し合ってようやく決まった。
とはいえ、軍を動かすのも近衛隊を動かすのも、それからわたし自身を動かすのも、プレスティ侯爵家の七人兄弟であることにかわりはない。
わたしも自身も、側近であるアマートとディーノに動かされることになるのだ。
彼らがさまざまな方面で活躍することに、なんら変更はない。
わたし自身、彼らに対する疑いはまったくない。微塵もない。長男から七男まで、父上やわたしを裏切ったりはしないと思っている。そして、彼らは忠誠心より野心が勝るなんてことはけっしてないと断言出来る。
それほど信頼しているというのも、不可思議なことではあるのだが。
ユベールとサラの息子たちだから?それとも、幼馴染とその兄さんたちだから?
いいや、それだけではない。
ゆるぎない絆のようなものを感じているからである。
あるとすれば、それはわたしがダメダメな王太子、もしくは国王になってこの国や人々に災厄をもたらせるときである。
そのときには、彼らは容赦なくわたしを排除するだろう。あるいは、命を絶つだろう。
彼らは、わたしがよりよき王太子や国王であるかぎり、ずっと味方でいてくれるはずだ。
側近の件は、ほぼ片付いた。
そのつぎの問題は、クースコスキ伯爵家である。
金貸しのパトリスとその息子のお蔭で、調査は進んでいる。
実行犯がつかまったのである。現在、裏をとっている。
後見人問題は、もう間もなく決着がつく。
その後のクースコスキ伯爵家をどうするか、である。叔母と叔父を除けば、伯爵家の血縁はアリサだけになってしまう。そのアリサは、わたしの妻になる。
屋敷や伯爵家個人の持ち物である土地をどうするか。
クースコスキ伯爵夫妻が保護して育て、メイドとして働いているカーラを養女とし、彼女とその夫になるディーノに管理を任せられるか。それが可能かどうか、も視野に入れるつもりである。
それは、カーラを姉のように慕っているアリサの希望でもあるからだ。
それを実現するには、かなりの時間と労力がかかりそうである。
まぁいずれにせよ、そこはいますぐどうにかしなければならない問題ではない。とりあえずは、クースコスキ伯爵家の執事ラファエルに管理を任せ、おいおいどうにかするつもりである。
その夜、執務室はにぎやかすぎた。
アマートとディーノはもちろんのこと、彼らの五人の兄さんたちが防衛地や配属地から帰還して訪問してくれたからである。
そして、ソフィアの兄、つまりティーカネン侯爵家の嗣子も訪れてくれた。さらには、両家の子息の父親であるユベールとコルネリオも。
執務室は、それほど広くはない。だから、ガタイのいい男ばかりがこれだけ集まると、子ども部屋みたいに狭く感じられる。
革張りの長椅子に座っているのは、ユベールとコルネリオとティーカネン侯爵家の嗣子クリスティアーノの三人だけで、プレスティ侯爵家の七人兄弟は立っている。
アマートは、ひとり扉の近くに立たされている。
気の毒に、彼はしょげ返っている。




