表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

120/133

近衛隊の現隊長と未来の隊長

「『王子様を守る人』、とはきみのことか?」

「う、うん」


 隊長が彼を見下ろして低い声で尋ねると、ニコラスは小さくうなずいた。


 恐怖で泣きださないのはえらいわ。


 もしかすると、隊長が近衛隊の礼服を着用しているからかもしれない。憧れの「王子様を守る人」を目の前にしているからかも。


「名は?」

「ニ、ニコラス。ニコラス・ヴェルキ」

「よし、ニコラス。だったら、きみも今日は王子様を守るんだ」


 隊長は、そう言うなりニコラスの小さな体をひょいと抱き上げた。それから、先頭を馬で進む部下に駆け寄った。


 そのままその部下の前にニコラスを乗せてやる。


「未来の近衛隊隊長だ」


 隊長が宣言すると、参列者たちからさらなる歓声が起こった。


「うわあああっ!高いな。カッコいいな」


 ニコラスは落馬するんじゃないかというほど興奮して暴れている。


「いいなー」

「ぼくも乗りたい」

「ぼくも」


 そして、男の子たちはうらやましがっている。


「なんてことだ。ダンテは、こんなところで復讐してきた。アマートとディーノを奪った腹いせに違いない」


 王太子殿下は、主役の座を奪われてしまってすっかりいじけてしまっている。


「殿下、違いますよ。隊長の行動は、そのまま王太子殿下のそれに結び付くのです」

「そ、そうかな」

「そうですよ。でも、いまの隊長の対応は素晴らしかったですね。これも、王太子殿下が日頃から思いやりのある行動をされているからです」


 おべんちゃらや元気付ける為の慰めなどではない。本心である。


 言葉に笑みを添えると、彼は機嫌を直したみたい。


 いつものようにやさしさあふれる笑みを見せてくれた。


 そうね。すべての行事が終わって落ち着いたら、図書館の絵本と児童書のチェックをした方がいいかもしれない。


 そして、王子様が最強最高全肯定されている作品を推薦図書にするのよ。


 密かに決意してしまった。



 急遽、図書館前に祭壇を造ってもらった。バラで飾られたそれは、王太子殿下たちがみずから大工仕事をして造ってくれたのである。


 そして、いまは王太子殿下付きの執事をしているラファエロが、クースコスキ家から移植したバラで飾ってくれた。


 王太子殿下が先にサンダーから降り、わたしが降りるのを手伝ってくれた。そして、さっとお姫様抱っこをしてくれた。


 気恥ずかしい。子どもだったころの夢であるお姫様抱っこが、こんなに照れ臭いものだとは思いもしなかった。


 参列者たちの歓声が、さらに恥ずかしさを増す。


 重すぎないとは思うけど、けっして軽くもない。


 そんなわたしを、王太子殿下は涼しい表情で抱っこしてくれている。


 あらためて頼もしさを感じる。


 視線を周囲に送ると、ディーノがカーラをお姫様抱っこしているのが見えた。


 これも、付き合わせてしまっている。


 そして、アマートもソフィアを……。


 二人とも、お姫様抱っこを嫌がっていた。


 ソフィアは、そんな乙女チックなことは絶対にイヤだと主張していた。そして、アマートはソフィアが重すぎて出来ないと断言した。


 当然、彼はソフィアにデコピンの刑を受けたけど。


 結局、王太子殿下とディーノがお姫様抱っこをおし通した。


 女の子たちに見せたい。


 二人は、そう言ってくれたのである。


 ソフィアとアマートは、渋々了承してくれた。


 そんな二人だったけど、アマートは軽々とソフィアを抱っこしている。すくなくとも、アマートは見た目には軽々抱っこしているように見える。


 そして、抱っこされているソフィアの表情が「フフフン」って感じに見えるのは、きっと気のせいね。


 アマートに抱っこをさせて、優越感に浸っている?


 ダメダメ。それは邪推だわ。もしかしたら、ソフィアもほんとうは憧れていたのかもしれない。彼女はちょっとだけ意地っ張りだから、それを認めたくないだけだったのかも。


 だから、うれしいのかもしれないわよね。


 そんなわたしの推測をよそに、王太子殿下は祭壇前までお姫様抱っこで運んでくれた。


 女の子たちだけではない。女性たちの黄色い声が飛び交っている。


 祭壇で牧師が待ってくれている。


 婚儀は、王族付きの司祭がとり行ってくれた。だけど、この結婚式では街の牧師にお願いをした。


 彼も図書館の常連の一人で、ぜひともと申しでてくれたのである。


 厚かましいけれど、即座にお願いをした。


 そして、三組のカップルが神の祝福を受けることになった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ