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クレンセシア領主 決闘

 私はクレンセシアの領主、エッカルト・クレンセシア。

 我が領で起きた重大な問題を皇帝陛下へ報告するために帝都に来た。


 問題が起こったのは1週間前。

 我が領の門で兵長をしているドナートが急ぎでと面会を申し入れてきたのだ。

 ドナートが部屋に来るまではスタンピードか? 騎士団を出さなければいけないほどの強力な魔物が出たのか? と考えていたのだが、実際は全く予想だにしていないことだった。

 まさか、今この瞬間我が領にグリフォンとフェンリルがいるなんで。

 はじめはヘタクソな冗談かと思ったが、ドナートの様子を見るかぎりどうやら事実らしい。


 とても自分だけでは判断できない。

 ドナートに、グリフォンとフェンリルとその従魔たちを連れてきた冒険者について急ぎ調べてまとめるよう指示をした。

 そして私はその間に帝都へと向かう準備をする。

 ドナートの話ではその冒険者と従魔たちは問題を起こさず大人しくしているようだが、とてもじゃないがゆっくり帝都に行っている場合ではない。グリフォンとフェンリルがいるのに領を離れることを考えると胃がキリキリしてくる。

 出来るだけ短期間で行って帰ってくるために、メンバーは精鋭を数人、馬車ではなく馬で駆けていくことにした。


「急ぎ準備にとりかかれ。明日の朝には領を出る!」


「「「はっ!」」」


 あぁ。皇帝陛下へ説明するのが気が重い。

 グリフォンとフェンリルを従魔にしている冒険者がいるなどと信じてもらえるだろうか。


「イテテテテッ」


 考えただけで胃がキリキリする。

 エッカルトは胃薬瓶を外套のポケットに入れて部屋を出た。










「こんにちはー! 肉を受け取りに来ました!」


「……おぉぅ。ここに、できてるぞ……。


「ひぃ!」


 2日前にやつれてクマのできていたソビェスさんは、さらに顔色も悪くなり口もひび割れやつれきっていた。

 他の解体スタッフさんもなんだかよろよろとしている。


「どうだ、クレンセシア冒険者ギルドの解体スタッフの底力は……!」


「す、素晴らしいです! またよろしくお願いします!」


 その一言を聞いたソビェスさんは、「ま、また……?」と言いひっくり返って運ばれて行った。

 申し訳ないので次回からはもう少し回数を分けて解体を頼もうと反省する。


 買取金額は前回よりも魔物が多かった分多かった。皮袋がズッシリ!

 そして冒険者ランクもAランク、冒険者カードも銀から金に! ピッカピカ!

 2日前にBランクになったばかりなのにいいのだろうか?と思ったのだが、ナディアさんには「むしろリアさんほどの人なら早く上がってもらわないと困ります!」と言われてしまった。


「ありがとうございます。一旦町を出てまた狩った魔物が貯まったら来ますね。それではまた」


「今回も傷が少ないものばかりで良い素材が取れました! またのお取引きをお待ちしております」


 今回もノアとネージュのお陰でたくさんお金が入った。

 町を出てまた自炊生活に戻るし、お礼にいいお肉でも出してあげようかな。


「おいおい嬢ちゃん、どうやってあんな大金稼いだんだ?」


「ずいぶん景気が良さそうじゃねぇか」


 外に出ようと扉に向かおうというところで目の前に数人の冒険者が立ち塞がる。

 先程からニヤニヤとこっちを見てると思ったが、ギルド内で絡んでくるなんて馬鹿なのだろうか。


「嬢ちゃんがAランクだって? なんの冗談だ? じゃあ俺らはSランクか!? ここのギルドは見る目がねぇなぁ。どう考えたってこの嬢ちゃんが何か不正してるに決まってるだろうが!!」


 ふーん。この人たちは年下で女の私が自分達より稼いでいてランクが高いのが気に食わないのね。


「おいおい、やめねぇか。お前たち見ない顔だな。この嬢ちゃんは強い従魔が2匹もいるんだ。不正していないのはクレンセシアの冒険者なら誰だって知っている」


「そうですよ。冒険者ギルドで問題を起こすのはやめてください」


「ゴンザレスさん! ナディアさん!」


「あ? なんだこのオッサン? その強い従魔がどこにいるってんだよ! それに俺たちは問題なんて起こしてないぜ! ただどうやって嬢ちゃん1人でそんなに稼いだのか聞いてるだけさ!」

 

 ナディアさんと酒場で飲んでいたゴンザレスさんが見かねて声をかけてくれたがあまり効果はなさそうだ。

 この人たちはこの町に来たばかり見たいだから、ノアとネージュを知らないのだろう。

 それにもし本当に強い従魔がいたとしてもギルドの中なら従魔は入れないから気にしていないのかも。


「いいからどうやってその金を稼いだのか教えろよ!」


いや、別に何も隠してないから教えるのはいいんだけど……。


「大森林で狩りをしたんですよ」


 その一言を聞いた冒険者たちは額に筋を浮かべ顔を真っ赤にする。


「お前、俺たちをバカにしてるな!!!」


「本当のことですよ。私には強い従魔がいるのでその子たちと大森林で狩りをしています」


「ふ〜ん、じゃあその従魔を俺たちにくれよ。2匹いるんだろ? ほら、金も払うぜ!」


 そう言って投げて寄越した皮袋は、軽くまともなお金が入っているとは思えない。

 まぁそもそもノアとネージュを売る気なんてないけど。


「お断りします。家族を売る気はありません」


「は? 俺たちの提案を断るってのか? せっかく金まで払ってやったってのによ!

金だけ奪って従魔を寄越さないたぁどういうことだ?

流石にこんな騙すようなことされたら俺らも黙ってられねぇなぁ」


こいつら! 無理矢理投げて寄越したくせに!

流石にムカついてきた。


「ギルドの裏には演習場があります。そこで戦って、私が負けたら従魔をお譲りします。そのかわり私が勝ったら貴方たちの持ち物全ていただきます。それでどうですか?」


 腹が立ったのでこいつらの身ぐるみ剥いでやることにする。

 これだけ大切なノアとネージュを物みたいに言われて時間まで取られたんだし、いいよね?


「おう! それでいいぜぇ。ただし、戦うのはお前だけだ。従魔が相当強いらしいからなぁ! それじゃぁフェアじゃないからな!」


「なっ、あなた達は5人じゃないですか! それなのに普段従魔と一緒に戦っている方に1人で戦えなんて卑怯です!」


「うるせぇよ! その嬢ちゃんが本当に実力でAランクだってなら問題ねぇだろ!」


「おい、なんの騒ぎだ?」


 上まで騒ぎの声が響いていたのか、2階から様子を見に男性が降りて来る。


「ギルド長!!」


 この人がギルド長なのか。

 冒険者ギルドのギルド長は引退した高ランク冒険者がなるって聞いたことがある。

 高い身長に鍛えられた体、鋭い視線。そしてあちこちに現役時代についたであろう傷がある。たしかにこのギルド長さん、強そうだ。


 ナディアさんから事情を聞いたギルド長は、へぇ。と言いながらこちらを見る。


「嬢ちゃん、本当にその条件でいいのか?

本人達が納得して決めちまったら俺らギルドも手出しできなくなる。どうにかするなら今のうちだぞ」


「なっ! これは俺たちの問題だぞ!」


「そうだ! ギルドが勝手に口出しするな!」


 ピーピーうるさい冒険者たちもギルド長のひと睨みで大人しくなる。

 どうやらギルド長は助けに入ろうとしてくれているらしいが、私はイライラが溜まっているのでこの冒険者達に一泡吹かせたいのだ。


「このままで結構です」


ギルド長はその鋭い目を細め、ふーん。と笑う。


「じゃ、演習場に行くか。ついてこい」


 ギルド長、ゴンザレスさん、私、絡んできた冒険者パーティに続いて、なぜかギルド中の冒険者がついてきている。


 演習場は広いから大丈夫だろうけど、こんな大騒ぎになっちゃっていいの!?

 なんだか冒険者さん達が賭けとかはじめてイベントみたいになってしまっている。

 サクッと倒して身包み剥いで帰ろうと思っていたんだけど、それじゃ面白くないかしら?


「それじゃ、冒険者パーティ小鬼殺しとAランク冒険者リア。

ルールは小鬼殺し5人vsリアで、リアは従魔の参加は禁止だ。相手が全員気絶するか、敗北を宣言した時点で終了。小鬼殺しが負けた場合は持ち物全てがリアのものに、リアが負けた場合は従魔2匹が小鬼殺しのものになる。間違いないか?」


「はい」


「「「「「おう!」」」」」


 パーティ名小鬼殺しって……、小鬼ってなに?

 まさかゴブリンのこと?? え、ゴブリンって初心者がよく狩るやつじゃなかったっけ??

この人たち予想以上に弱いかもしれない。

 よくパーティ名小鬼殺しでAランク冒険者と戦おうと思ったなぁ。

 まぁ私の見た目で判断して本当に不正してAランクになったと思ってる? それか従魔頼りで私は弱いと思ってるのかも。

 大森林に入ってるって言ってるんだから、そんなわけないのに。


 小鬼殺しのメンバーはもう勝った気でいるのか従魔を手に入れたら俺たちも大森林に行ってみようとか、Aランク冒険者になれるかもとか言ってて自分達が負けることは考えていないみたい。


「審判はクレンセシア冒険者ギルド長ジルドが務める。それじゃ、準備はいいか?」


 小鬼殺しのメンバーと私が頷く。


「はじめ!!」

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