フィリベール2
『おはよう。ノア、起きてる? 』
着替えを済ませた私はノアに念話を飛ばす。
『起きているぞ。私は早起きだからな!』
ノアの準備はバッチリみたいだ。
朝食を食べたら厩舎に向かうねとノアに伝え、1階の食堂へと降りた。
昨日の夕食の時も思ったけれどここの宿は食事が美味しい。
食材は高級なわけじゃないけど、新鮮なものを使って手間をかけて料理しているみたい。
受付嬢の中にはお金をもらってその宿を紹介している人もいると聞くけれど、昨日の人は本当におすすめの宿を教えてくれたようだ。
今日の宿もここにしよう。
朝食を終えて今夜の予約も取り、ノアの元へ向かい宿をでる。ノアも綺麗な厩舎で美味しいお肉を出してもらえて満足そうだ。
『夕方冒険者ギルドに行くまではどうするんだ?』
『お金が必要だから、ジュエリーを買い取ってくれる店を探すの』
そういえばまだ私のことを話していなかったなと思い、店に向かいながらノアに私の事情を話す。
『な、なんてひどいヤツなのだ! その元婚約者のアンドレという男とシャルロッテとかいう女は!』
『家族に会えなくなったのは本当に悲しいけど、まぁこんなことがなければ旅にも出られなかったしノアにも会えなかったからね。なんだかんだ今は楽しいの』
そう言うと、リアは優しすぎるのだ!と怒っていたけど、ノアに会えてよかったと言うとなんだか嬉しそうだ。
『それにしてもリアがあのアデライトだったとはな』
どうやはノアは私のことを知っているようだ。
『ノア、私のこと知ってるの?』
『あぁ! リアは前世でグリフォンと戦ったことがあるだろう? 人語を話せる他の魔物にも。一時期ものすごく強い人間が現れたと魔物達の間で話題になっていたらしい。今でも知能の高い魔物たちの間では語り継がれているよ』
私の知らない間に魔物たちの間でも有名になっていたらしい。
前回テスパトールでジュエリーを買い取ってもらおうとしたら3店舗中2店舗が査定額を誤魔化してきたので今回も1日中店を回る覚悟だったが、なんと1店舗目からまともなお店に当たったので買取はすぐ済んでしまった。
今回はジュエリー3点を売り210万リルになった。
『思ったより早く予定が済んでしまったわ。ちょうどお昼時だからお昼を食べましょう』
『美味い肉がある店がいいな!』
ジュエリー店の近くにあったステーキ屋さんに入り、ノアの分の肉も出してくれるか聞いたところ大丈夫だと言うのでこの店に決めた。
ステーキ屋というだけあってお肉は新鮮で美味しかった。ノアも大満足だ。
食事を終えて店を出たが夕方冒険者ギルドに行くまでにまだ時間がある。
うーん、何をして時間を潰そうかしら。
『あ、そうだわ! ノアの従魔のタグをつけるチェーンを買わなきゃ!』
タグをつけるチェーンを探すが、ノアはグリフォンの時と鳥に擬態している時とサイズがかわるので普通のチェーンじゃ着けられそうにない。
考えた結果、大型用のチェーンを探して私が縮小の魔法を付与することにした。
『ここならノアでもつけられるチェーンがあるわ!』
動物や従魔専門の店で、ここで大型用のものを探せばあるはずだ。
首輪やブラシ、従魔用のアクセサリーまで、店に入ると動物や従魔に使うさまざまな道具が置いてある。
『ノアは首に着けるのと脚に着けるの、どっちが良い?』
『脚の方が落としづらいような気がするが、脚は攻撃する時に邪魔になるな。できれば首がいい』
たしかに。
ノアは鋭い爪と嘴、それと風魔法で戦っている。爪で攻撃する時に脚についていたら邪魔になるだろう。
『じゃあこのあたりね』
皮の首輪に、金、銀、銅のチェーンや首輪。中にはデザインが彫ってあるものもある。
『タグが金だからタグと同じ金色が入ったものがいいんじゃないかしら?』
『私は装飾品など着けたことがないからリアに任せる』
ノアがそう言うので金のものの中からノアに相応しいものを選ぼうと端から順番にじっくりと見る。
『うーん、どれも素敵で悩むわね。……あ、これなんかどうかしら? 』
皮に金の金具がついたら首輪でトップにノアの瞳と同じ空色の大きな魔石が付いている。この魔石、透明度も高くてこの美しさだものかなり上等なものね。
『ノアの瞳と同じ空色の魔石が付いているの。素敵じゃない?』
そう言うとこの首輪が気に入ったのか機嫌が良さそうに喉をクルルルと鳴らした。
『これにしよう!』
金に魔石もついているものだから結構な値段だったがこれからずっとノアが着けていくものなのだから必要経費だ。
それにノアほど立派なグリフォンに安っぽいものを着けさせるなんてできるわけがないものね。
お金はこれから大森林に近づくにつれて強い魔物が増えるから、それを狩ればすぐにまた貯まるだろう。
さっそくパパッと縮小の魔法を付与してノアの首にかける。
まだ少し早いが観光をしつつ冒険者ギルドに向かう。
途中で屋台が並んだ通りがあったのでチラッと見たら美味しそうな店がたくさんあって、ノアとあそこが美味しそうとかこっちのも買おうといろいろ回っていたら冒険者ギルドに着いた頃にはちょうど良い時間になっていた。
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