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我、魔王城で生活する 2

「もっと魔王城の皆と仲良くしたい?」

「そうじゃ。我、怯えられておるみたいだからの」

 我、部屋に訪れたヴァーリスに相談をしてみる。ヴァーリスは魔王という魔族にとってみれば偉大な立場である。だというのに我よりも怯えられておらずに、友好的な態度で皆が”魔王様”と話しかけているのである。

 我もそんな風に気軽に話しかけられる方がいいのである。

 ちなみに我、ヴァーリスの膝の上に乗せられておる。嫌だと拒否したらとても悲しそうな顔をしていたので許可を出してしまった。雄だというのになよなよしよって。いやでも、こんなのでも我よりは強いのである。ギャップというやつが激しいヴァーリス。ちょっと愛いと思ったのは本人には内緒である。

「まだアーシェナに慣れていないからじゃないかな?」

「うむ、そうかの」

「多分、俺も最初からこんな態度されていたわけではないし」

 ヴァーリスはそういいながらにこにこしている。

「……うむ、そうか。我、頑張る」

「アーシェナは、そのままでもいいよ。正直俺の奥さんでいてくれるなら別に仲良くしなくても構わないから」

「いや、我はヴァーリスの奥さんとして頑張ると決めたのだから、もっと頑張るのだ」

 我は心からそう思っている。

 我は単独行動ばかりしておったし、正直我は自分が誰かと結婚することなんぞ考えていなかった。我より強い相手としか番にならぬと我自身が言い張っていたのもあったし、我自身、そんな相手が早々現れるとは思っていなかったのだ。

 ちらりとヴァーリスの方を見る。

 ヴァーリスは、美しい見目をしておる。美しい黒髪で、見ていて楽しい。

 それに、我よりも強い。

 強い雄に心惹かれるのは雌の本能であろう。

 ……それに、我のことを好きだと何度もいってくれる。

 そんなヴァーリスとは会ったばかりだが、一緒に居て我は楽しい。

 ヴァーリスのためなら、奥さんとして頑張ろうと我は素直に思えたのだ。相手がヴァーリスだから。

「アーシェナ、そんな可愛いこといって、可愛い目で見つめられたら俺手を出しそう!」

「出せばよかろう。我らは番となるのだから」

「うおおおお、アーシェナ、そんなこと言っちゃう? でもちゃんと手順は踏みたいから結婚式を終えてから! 俺我慢する。そして今はキスだけでもさせて」

「うむ、するがよい」

 そういって目を閉じたら、深い口づけをされた。



 その翌日から、我は一生懸命城で暮らすものたちと仲良くなろうとしてみた。



 とりあえず我の事を子供だとかいう連中には、我の強さと竜体を見せることにしたのだ。我が竜体を見せたら唖然とした顔をしておった。

 我の竜体は、自慢ではないが立派らしいからの。

 ヴァーリスは、我の竜体も綺麗などといっておった。……褒められ過ぎると正直本当、恥ずかしいのである。思わず竜体のまま、恥ずかしさをごまかすために火を噴きそうになってしまった。どうにか留めなかったら周りを燃やしてしまったかもしれぬ。

 あと兵士たちに関しては、我が剣で軽く相手してやったら、キラキラした目で見てきたから大丈夫だろう。我、竜体で戦う事の方が好きだが、人形で戦うのも嫌いではない。武器を持って戦うというのは竜体では出来ないことであるし、これはこれで楽しいのである。それにしてもヴァーリスも我と一緒に兵士を鍛えておったが、ヴァーリスの剣技も美しいものよの。

 強さを見せつければどうにかなる連中はこういうことをしていけば、「姐さん」的な目で見られるようになったのだが、びくびくと怯えている面々には一生懸命我は危害を加えたりしないということを伝えていくべきだろうか。

 そう思った我は三つ子を連れていろんな場所を見て回り、毎日の挨拶をし、会話を交わすことを目指した。

 そうしたら少しずつ、本当に少しずつであったが、我への警戒心などをなくしてくれた。そんな様子を見ながら我は、弟の子達にも最初は怯えられていたことを思い出した。我の力は竜族の中でも強いものだ。だから幼竜たちにとっては我はとても恐ろしい存在に映ると弟に言われたのを覚えている。というか、弟も「姉貴を怒らせるとか絶対無理」とかいっておったし。しばらくあっておらぬがどうしておるだろうか。

 それにしても、そうか、弟の子たちに接したように少しずつやれば友好的な態度になってくれるかと我は結論を出した。どうすればいいかわかればあとは我が頑張るだけである。

 それに加え、三つ子と仲良くなることも出来た。

「まぁ、アーシェナ様には弟様がいるのですね」

 などと、そういった個人的なものまで三つ子と話す仲になっていた。

 三つ子と仲良くしすぎていれば、ヴァーリスに「俺とももっと仲良くして!」と謎の嫉妬をされたりしてしまった。



 そんな今までの生活からは考えられないような人に囲まれ、人と接する日々を我は魔王城で過ごしていた。



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