我と魔王のハネムーン 1
我の背にヴァーリスを乗せて空の旅をして、一つ目の目的地にたどり着いた。ここは、港町である。この場所にたどり着くまでの間、我の姿を見て騒いでいた連中もいた。まぁ、我の竜体は中々大きいからの。竜体で突然街に近づいたので驚かせたらしい。
我、竜の姿で街にあんまり近づくことはなくて知らなかったけど、竜体で近づくとこんなに騒がされてしまうのだなと初めて知った。まぁ、我が人形になったら拍子抜けしたような顔をしていたけど。
港町に降り立つと、海の香りがした。我はあまり、海辺には近づいてこなかった。特に意味はないけど、必要がなかったから。
「うむ、結構海の香りがするの」
「アーシェナ、嬉しそうだね」
「……我はあんまりこうして、人形で街の中をうろうろすることもなかったからの」
「ふふ、俺もアーシェナとここにこれて嬉しいよ」
ヴァーリスはにこにこと笑いながら、我の手を取る。宿も取ってないので、まずは宿を取ることになった。我はこうして出かけることをしたことがなかったから、正直、何が何だかわかっていない。宿というものに泊まったことは、ない。
全部ヴァーリスに任せておいた。我はよくわからないからの。
我が人形だと幼体にしか見えないからか、親子かと間違えられたりしたけど、ちゃんと我が番だといってくれてた。恥ずかしかったけど、嬉しいものだった。
宿を取った。とても高い部屋らしいが、ヴァーリスはぽんと支払いをしていた。ヴァーリスは金というものを多く持っている。
宿を取ったあとは、港街の中をうろうろした。此処は、人間も魔族も、獣人族も色々な人がいる街だ。人間だけの国とか、魔族だけの国とか、いろんな国や町があるけれど我らが今居るのは中立国だ。
「港町ということは、魚が美味しいのかの? 我、あんまり魚は食べた事がない」
「なら思いっきり魚を食べようか」
我の言葉にヴァーリスはにこにこと笑っている。我の言葉一つ一つを聞いて、我のことを思って言葉をかける。ヴァーリスは……我の思い違いではなければ、我のことを好いていてくれている。
そのことが、ヴァーリスの態度や声からすぐにわかる。
ヴァーリスと共に、我は歩く。その場にいる雌たちがヴァーリスのことを良く見ている。ヴァーリスは美しい顔をしているから。
ヴァーリスは魔王という立場で、我はその番。
だから阻害魔法をヴァーリスはかけてくれている。我らが騒がれないようにしてくれている。我とヴァーリスがのんびりとハネムーンを楽しめるように。
そういう心遣いが我は嬉しいと思う。
ヴァーリスと共に美味しい魚を食べようとお店に向かったのだが、少しだけ予想外の出来事があった。何でも、魚の料理があまり出せないのだという。何でも獰猛な魔物が海に出没していて漁が思ったように出来ないという話だった。なんという軟弱な。そんなもの退治してしまえばよいと思う我だが、この街の者達にとって厳しいらしい。
意思疎通の出来ない野蛮なる魔物のせいで、我が美味しい魚を思う存分食べれないとはちょっともやもやする。もやもやするので我はヴァーリスにいった。
「ヴァーリス、我は魚というものを思いっきり食べてみたい。その魔物、葬るとする」
「うんうん、だよねー。俺もアーシェナにめいいっぱい美味しいお魚食べてもらいたいもん。一緒に魔物退治しようか」
「うむ。我とヴァーリスであるならば、どんな魔物が来ようと問題はなかろう」
そんな会話を我とヴァーリスがしていれば、聞いていた住民たちに「あの魔物はそんなに簡単なものではない」だの、「嬢ちゃんみたいな小さな子が倒せるわけない」だの言われてしまったが、何も問題はない。
なんせ、我は竜族最強と謳われている竜である。そして我が番は魔族の王である魔王である。我ら二人が揃って倒せない魔物など、居たらそれこそ人類の滅亡の危機とかそういうものであると思う。
「問題ない。我とヴァーリスが揃って倒せぬものなどおらぬ」
「俺とアーシェナが揃って倒せないとかありえないからね」
二人してばっさりと止めてきたものたちにそういった。全く我の人形の姿が如何に幼体であろうとも、人は見かけによらないものだというのにどうしてこうも心配されねばならぬのか。
そんなわけで二人で魔物退治に勤しむことにした。
ただ竜体の姿になるとこの街のものたちを混乱させてしまうかもしれないということで、我は人形で向かうことにした。
海にいる魔物を倒すために空から行った方が早そうだが、ひとまず船を借りて向かうことになった我とヴァーリスである。
魔物退治を生業としている連中も一緒に向かうことになったのは不満だが、とりあえずささっと魔物退治をして魚を思いっきり我は食べるのである。




