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魔王に我さらわれた。

※元々短編であげていた魔王と我の連載版です。短編と同じです。

「のぉ、魔王よ。お主は何故に我を攫ったのじゃ?」

 我は今、ひどく困惑しておった。

 人形<ヒトガタ>の姿で森をうろついておった所、魔界の王である魔王に連れ攫われてしまったのじゃ。

 別に抵抗するぐらい我には簡単であったが、我は面倒だった。魔王なるものとやり合うのは面倒であった。我は面倒な事は嫌いである。

 それに加えて、魔王のその目ときたら、我に危害を加えるようには見えなかったのだ。

 そうしてそのまま何故かお城に我は連れてこられた。魔王は側近であろう魔族の言葉など聞きもせずに我を抱えたまま寝室に連れてきてしまったのだ。

 そして我は何故かソファに座った魔王の膝の上に乗せられてしまった。こ奴は何をしたいのだろうか。我には心底わからなかった。

 なので、口を開いてみたのである。

 そうすれば何故か魔王は固まっておるではないか。何を顔面を崩壊させて、緩みきった頬で我を見ているのだ。

「こ、声も可愛い…」

「お主、我の話を聞いておるのか。何故我はこんな所に連れ込まれておるのだ。詳細を述べよといっておるのだ」

 下から魔王の顔を覗き込むように見れば、魔王は何だか顔を押えてしまった。こ奴は何をしたいのだ。

「…う、上目遣い半端ねぇ!」

「お主、我の言葉に答える気はあるのか? 用事がないというならば我は帰りたいのだが」

「はっ、あ、あまりの可愛さにフリーズしてしまっていた」

「おーい、魔王よ。我は何故に連れてこられたのか、答えよ」

 しかし、この魔王はバカなのだろうか。我は住処に居る頃から魔王の噂は度々聞いておった。関わりはなかったものの、姿形は知っておった。

 外見は噂通り、美形である。ふむ、これは沢山の女子おなごに求婚をされているという噂は本当なのだろう。

 強さもピカ一だという噂だ。ふむ、確かにこのまがまがしい魔力から強い事はわかるだろう。

 頭脳明晰だとも聞く、魔国をその力でおさめているらしい。ふむ、本当なのだろうか。見ている限り頭脳明晰? という感じである。

「ああ、そうだ、そうだ」

「うむ、ようやく我の問いに答えてくれるのかの」

 何だかブツブツ言いながら我の方を真っすぐ見てくる魔王。ふむ、そもそも何故我はひざの上に乗せられているのだろうか。

 この魔王は何がしたいのだろう?

「俺と結婚してください!」

「ふむ?」

 何だか真っすぐに目を見て言われた言葉に我は首をかしげた。

「我は求婚されておるのか、魔王よ」

「はい、結婚してください!」

「ふむ? お主ロリコンという奴なのか?」

 我はキラキラした目でこちらを見ている魔王を膝の上に乗ったまま見上げて問いかけた。

 我は長い時を生きているが、人形の時は人間で言う幼女の姿をしておる。竜族である我は人形とドラゴンの姿を両方とれるわけであるのだが、人形の時は何故だか我は幼女である。

 ドラゴンの時は我は立派な正体であるというのに摩訶不思議な事である。

 魔王は幼女の姿の我を見て求婚してきたのだ。という事は魔王はロリコンという奴なのであろうか。我は驚いてしまった。

 ふむ、魔王が求婚されて断っていたのはロリコンだったからなのであろうか。

「俺はロリコンじゃない! 君に一目ぼれしただけだ!」

「ふむ、我に一目ぼれ? まぁ、それはよかろう。しかし、一目ぼれしたからと攫ったのはどういう事じゃ?」

「だ、だって君可愛いし! 欲しかったからというか、うーん、急に攫った事は悪かったと思ってるけど!」

「ふむ、欲しいから攫うとは…、せっかちな奴なのじゃの」

「だって、本当に君可愛いもん!」

「ふむ、我はお主にとって可愛いのかの。魔国の王である魔王はどんな美女や美少女にも目も向けないと噂じゃったが」

「いや、君のが絶対可愛い! その銀色の髪も、大きな目も、真っ白な肌も、超ドストライク! ああ、可愛い可愛い可愛い!! 今すぐキスしたい。俺のお嫁さんなってください!」

「うむ?」

 そんなに褒められても照れるではないか。

 しかし、急にキスしたいだの、こ奴は変態なのだろうか?

「あああ、照れてて可愛い!」

 うむ、しかし求婚されるとは思わなかった。ふむ、一目ぼれとは予想外である。

 ふむ、興奮したように我を抱き締めだした魔王は確かに美形である。我は美形は好きである。

 しかしだ、我は結婚するなら、という一つの条件を持っておる。

「ふむ、魔王よ。我に勝てるならばその求婚受けてもよかろう。表に出るがよい」

 そうである。我が長い時の中で、一度も求婚を受けなかったのは一重にそれが理由なのである。

 我は弱い奴は好かん。美形は好きだが、弱い奴は好かんのだ。

 我より強くなければ結婚なんてものはしたくないのである。

「君に勝てばいいの?」

「うむ。この我に勝てるのなら受けてやろう」

 ふむ、ぶっちゃけ我は竜族最強である。我に勝てる竜族には今まで出会った事がないのである。

 魔王とは戦った事がないので、我はわくわくしておる。

 戦いは好きである。魔王に喧嘩を売る事は魔国全体に喧嘩を売ることになるため、戦った事はなかったのだ。魔国の連中は強い連中ばかりである。丁度良い機会である。




 ―――そうして、魔王と我はその後戦った。

 竜化した我と魔王の戦いの結果はというと、


「うむぅ、はじめての負けだの」

「これでいいんだよね!」

 うむ、負けた。

 人形に戻った我は魔王に抱きかかえられていた。うむ、我も魔王も負傷している。が、魔王強すぎた。我は自慢じゃないが、竜族最強であり、その辺の魔族になら普通に勝てるぐらいである。

 しかし、負けた。魔王は異常であった。

「うむ……」

「結婚式はいつにしようか?」

「悔しいである」

 うむ、この魔王我より若造であるというのに我より強いなどとは、悔しいである。

「ドレスは何色がいいかな、やっぱ白かな」

「…我は何色でもいいである」

 うむ、まぁ実際我より強いのだから結婚に異論でない。我は強い男は好きである。美形も好きである。魔王は条件にぴったりである。

 だが、やはり悔しいである。

「ちょ、魔王様、何やってるんですかぁああああ」

「森が焼け野原ってどういう事ですかあああああ」

 竜化した我と、魔王との戦いでこの周辺の森はすっかり焼け野原とかしていた。

 その中心で悔しがる我と我を抱きかかえて嬉しそうに笑っている魔王に向かって、魔族が騒いでいるが我にとってはどうでもいい事であった。


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