俺と嫁の話
ノンフィクションです。
酔った勢いで書く。
登場人物、俺、嫁、子供一人。
夜勤を終えて家に帰ってきた。もう午前1時だ。
玄関で靴を脱ぎ、洗濯機を見る。
蓋が閉まっているので、洗濯物は干されていないのだろう。
台所を見る。食器は洗われていない。
俺は自室に戻ってカバンとスーツを置き、かごを持って洗濯機から洗濯物を取り、寝室に向かう。
リビングは電気をつけず、自室の明かりを間接照明として寝室を薄暗く照らす。
嫁と子供は寝ている。起こさないように注意して、室内に洗濯物を干す。
寝室はクーラーが掛かっており、Yシャツを脱いで肌着だけになった俺には肌寒い。
子供の小さな服に顔がほころぶ。まだ3歳にもなっていない、一粒種だ。
10分ほどで干し終わった。朝までには乾燥するだろう。
子供が生まれてから、俺の服と嫁子の服は一緒に洗濯されなくなった。
タバコのにおいが付いていると言うのだ。
でも構わない。そういうもんなんだろう。
俺は風呂に入り、自分の服だけを洗濯機に入れ、乾燥機能を使って洗濯機を動かした。
朝には乾いているはずだ。
風呂に入ったから手は綺麗だ。食器を5分ほどで洗い、自分の部屋に戻る。
紙パック入りの酒をコップに注ぎ、水道の水で割る。
足音を立てないように気をつけながら自室に戻り、PCの電源を入れる。
明日も夜勤だ。遅くまで起きて居たって良い。
隣の部屋で物音がする。嫁が起きたか。
嫁は自室の扉を開けて、おかえりなさい、と言ってトイレに行った。
俺は嫁の背に、ただいま、と声をかけてパソコンに目線を移す。
嫁が寝室に戻ったので、足音を立てないように寝室に入る。
寝室と言っても俺が寝る部屋ではない。嫁子が寝る部屋だ。
生活時間帯が合わないので寝室を別にしているのだ。
家庭内別居というのはこういうところから始まるんだろうか、と思いながら、横になる嫁に声をかける。
「今日、どうだった」
子供の保育園での出来事を聞き、日々子供が成長しているのを間接的に感じた。
寝ている子供の頭を撫でる。
ついでというわけではないが、嫁の体にも手を伸ばす。
しかし、跳ね除けられてしまった。眠いのだろうか、と思うかもしれないが、嫁は普段から触られるのを嫌う。元々一時接触を好まないのだ。
子供が出来てからはそれが加速した。
「ねえ」
横になったまま、嫁が言う。
言ったらあなたが怒るかもしれないけど、と前置きがある。
「浮気しても良いんだよ」
どういう心情でそういう発言にいたったのかは分からなかったが
しないよ、と返した。
「浮気するならしてもいいけど、相手を養う位の甲斐性を見せてよね」
続けてそう言った。
誓って俺は浮気をしていないし、するつもりもない。
でも、そう言わせた何かの原因があるかもしれない、とも思った。
「だって、わたしはこんなんだし」
そういう嫁に対して、俺は、嫁の事を好きだよ、と囁いた。
あらそう、と嫁は返し、嫁の親の状況、あまり病状が芳しくない事を話した。
最近睡眠時間が減っている事、毎朝親に心配して電話をしている事。
きっと不安定になっているのか、と考え、嫁を抱きしめようとする。かわされる。
嫁はもう一度、浮気しても良いんだよ、という。
俺は、自分の部屋にあるシリコンの筒の話をし、だから浮気なんて市内から安心してほしいと伝えた。
嫁が笑った。
良かった、笑ってくれた。
眠れないなら羊を数えたらいい。
月並みな事を言って、嫁の頭をなでる。
頭だけは嫌がらない。
「そうする、おやすみ」
と言って嫁は俺に背を向けた。
俺も、おやすみ、と言って自室に戻った。
なんだかやるせない気持ちになりつつも、パソコンに向かう。
コップに入った酒を、ぐびりと飲み、キーボードを叩き始める。
15分ほどで書いた、リアルタイムのお話。