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エピローグ

昼休みの教室で寿直と直哉と昼飯を食べる。

姉貴の作った不格好な弁当は味はそんなに悪くなかった。

「で、寿直は硯さんといい感じなんだ」

「うん。けいかはなかなか笑わないし冷たいけど、やっぱりかわいいよ」

「くっそ、のろけやがって」

自分で振っておいて嫌そうな顔をする直哉。

その矛先は俺にも向いていて。

「啓介は嘉木さんとどうなわけ」

「どうもこうもねえよ。前より連絡が来る頻度が下がったくらいで普通に友達してる」

そうなのだ。

前は毎日のように来ていた嘉木からのメッセージは、今では2、3日に一回に減っている。

それでいい。そうやって俺や姉貴以外のことに関心を向けてくれればいいんだ。

「……で」

「うん?」

直哉がじとっとこちらを見ている。

「どうなんだよ」

「なにが」

「相内さん」

「は?」

「あはは、なおやすなおじゃなーーい。あいうちさんがその後けいすけにコンタクト取ったか聞きたいんだよねーー」

けらけらと寿直に笑われてようやく気がついた。

そういうことか。

「どうもないよ。連絡も接触もなし。あっさりしたもんだ。

でもそんなこと聞くってことは、直哉はまだ相内さんに興味あんのか」

「……。ねえよ」

「なおやーー」

「ねえってば!!」

ぷーーと膨れて直哉はそっぽを向いた。

別に興味くらいあったっていいと思うけどな。

まあ直哉が言いたくないならなにも言わないけどさ。


放課後、帰ろうとしたら呼び止められた。

「笹井君、ちょっといい?」

「なんだよ嘉木。俺は忙しいんだ」

「嘘つけ。帰るだけでしょ。ちょっと付き合ってよ」

結局強引に嘉木に連行されて屋上までやってきた。

少し涼しくなった風が吹き抜ける。

空は前よりも高い気がして、なんだかワクワクした。

「なんだ」

「相内さんと話したんだ」

「へえ?」

そういえばこいつは相内さんに焚き付けられて俺のところにやってきたんだっけ。

本当に迷惑な後輩だ。

「謝られたよ。人間で遊ぶようなことをしてごめんなさいってさ。

笹井君にも謝っておいてほしいって言われた」

「そうか。実際迷惑だったからその言葉は受け取っておく」

「迷惑だった?」

「すごく」

困ったように嘉木が笑った。

笑い事じゃなかったんだけどな。結構な迷惑だったし。

「相内さんのこと嫌い?」

「あんまり興味ない」

「わたしは?」

「普通」

「そっか」

ならよかった、とやっぱり嘉木は笑った。

なにがよかったんだろうな。

俺が嘉木を嫌いでなくなったことだろうか。

それとも。

「ねえ笹井君」

「うん」

「わたしまた陸上やろうと思うんだ」

「うん」

「応援してくれるかな」

「いいんじゃねえの」

「ありがとう」

三度目の嘉木の笑顔はそれまでの笑顔なんかより全然キラキラしていて、ああ、こいつも女の子なんだなとか意外とかわいい顔してるんだなとかそんなことを思った。

きっと嘉木は陸上がすごく好きなんだ。

すごく好きなことをやれるというのなら、やりたいというのなら、俺は応援するしかないじゃないか。

「頑張れよ」

「うん。それじゃあさようなら、笹井君」

そういって嘉木は屋上から出ていった。

その日から、嘉木から連絡が来ることはなくなった。

きっとそれでいいんだ。


日々は続くし、人間関係は面倒くさい。

でもそれらを切り捨てることはできなくて、だらしがない俺はずるずるとかまってしまう。

そういうことを積み重ねた先に、きっと本物を見つけられると信じてる。


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