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裏切りは良くないよ

昼休み、久しぶりに冬弥と屋上で昼食を食べていた。

「そういや冬弥は姉貴に告白しないの」

「啓介までなにを言うんだ。する。いつかはする。でもそれは今じゃない」

「他のやつにも言われたのか」

「直哉に言われた」

その直哉はなんやかんやで相内さんを彼女にしたみたいだけどな。

いったいどんな詐称を働いたのやら。

知りたくないので聞かなかったが、きっとそのうちうまくいかなくなるだろう。

「啓介は嘉木さんとどうなの」

「どうもこうもねえよ。というかその話、誰に聞いたんだよ」

「あれだけ所かまわず騒いでたら誰だって知ってると思うけどな」

「そうかよ。嘉木はなーー。なんか勝手に俺と姉貴が仲悪いと思い込んでて、嘉木自身は姉貴のこと恨んでて俺と傷の舐めあいしたかったらしい」

「ふーーん。啓介の一番嫌いな奴だ」

さすが冬弥。よくわかってる。

誰かと感情の押し付け合いなんてしたってろくなことなどないのだ。

それにあれだけきっぱり拒絶したんだから嘉木はもう俺には話しかけてこないだろう。

そう思っていた時期が俺にもありました。

「笹井君」

「……」

「嘉木さん」

冬弥はぽかんとしてるし、嘉木はなんか怒ってるし、もうそれだけで面倒で逃げ出したくなった。

これ以上、嘉木と話すことなんてないんだし。

「わたし、笹井君に謝らないといけないんだけど」

「今まで付きまとってきたこと?」

「そ、それもだけど。勝手に笹井君の考えを決めつけてわたしと同じだと思い込んだこと」

嘉木はそわそわしながら話を続ける。

別にそんなことどうでもいいんだけどな。

まあうざったいんだけどさ。基本、話しかけないでくれればそれでいいわけで。

「でも、わたしはもう少し笹井君と話したい」

「なにを」

「なんでもいい。授業のことでも、勉強のことでも、友達のことでも」

「なんで」

「笹井君が気になるから」

って、言われてもなあ。

俺は嘉木のこと1ミリも気にならない。

まったくぜんぜんこれっぽちも。

そんな相手と会話して一体何が生まれるというのだろう。

「啓介、とりあえず少しだけ話聞いてやれば?」

「無責任だぞ冬弥」

実際の対応は俺なんだから、俺が是と言わなければ意味がない。

そんなに気になるなら冬弥がかまってやればいいのだが、それもきっと意味がない。

「はーー。じゃあ、寝る前にチャットする」

「え?」

「10分そこらな。それ以上のコミュニケーションは面倒くさい」

「う、うん! 笹井君がそれでいいのなら!」

嘉木はぱあっと顔を輝かせた。

なんだ、こいつ普通に笑えるんだ。いっつも嫌な感じの笑顔とか、怒った顔、泣いた顔くらいしか見てなかったけど一応ちゃんと笑えるらしい。

その辺に転がしてあったスマートフォンを拾って連絡先を交換した。

横で冬弥まで嬉しそうな顔をしていたが無視する。

「嘉木、ひとつ約束だ。姉貴の話はしない。絶対に」

「わ、わかった」

「お前が抱える問題は、お前と姉貴の間で解決すべきことだから、俺は関わらないし立ち入らない。それを守れ」

こくりと嘉木が頷く。

それでいい。

俺は姉貴についてのいざこざには慣れてはいるが、自分から首を突っ込もうとは思わないのだ。

そういうことは両親の役目であり、弟である自分には不相応だと考えている。

「それじゃあ、ありがとう笹井君。お昼邪魔してごめん」

そういって彼女は去っていった。

「なあ冬弥、これでよかったのか」

「俺がいいっていったらいいのかよ」

「どうだろうな。まあこれで学校にいる間付きまとわれないならいいや」

「啓介はクールだなあ」

クールなんかじゃないさ。ただのめんどくさがりだ。

あとはそう。

約束を嘉木が守ってくれればそれでいい。


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