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視線

「寿直、大丈夫か」

「あ、直哉。うん、ぜんぜんへーき」

朝、部活を終えて教室に行くと啓介と寿直が喋っていた。

それはいい。それはいいんだが、寿直が怪我だらけでぼろぼろになっていた。

一体なにがあったのか聞いても

「喧嘩した」

としか言わないし、なんだってんだ。

時折、硯さんがこちらを睨んでいるところから察するに彼女となにかあったのだろうけど。

昨日の英語の授業で寿直が硯さんに声をかけていたのは目立っていたし、硯さんはクラス内の馬鹿な連中に絡まれている節もあったから、そのあたりだろうか。

だってその連中、今日全員休みなんておかしいでしょ。

もしかして硯さんに好意を寄せるあまり連中を全員病院送りにしたんじゃなかろうか。

いやいやいや、まさか寿直でもまさかそんな、ねえ。

ねえ?

啓介に視線を送っても、なにも知らない、という顔しかしないのでこいつは本当になにも知らないし聞く気もないのだろう。

だとしたら俺も黙っているしかない。

それは寿直の問題だから、寿直が自分でなんとかするだろうし、もしどうしようもなくなったらなんか言ってくるだろう。

「それはそれとしてだ」

俺は彼らに言わなくてはいけないことがあるのだ。

啓介と寿直が話を中断してこちらに顔を向ける。

「俺、京子ちゃんと付き合うことになったから」

「えー、うっそだー」

「相内さんそういうタイプじゃないだろ」

否定速いよ?

もうちょっと友達のこと信じような?

「そこまで否定しなくてもいいじゃねえか。まあそうなんだけどさ。

付き合うっていうのは建前だ。付き合っているふりをするっていうのが正解だな」

「それ、あいうちさんにメリットあるの?」

「手駒が増える」

「相内さん何者だよ」

「聞くな。聞いたら後戻りできなくなるぞ」

俺にだって結局京子ちゃんがなにをしたいのかはわからないのだ。

他人を裏から煽るような真似なんてどんな理由があってやろうと思うのか全然わからん。

だとしても、そういうところもかわいいということで良いことにする。

恋は惚れた方が負けなのだ。

「ていうか、あいうちさんはけいすけが好きなのかと思ってた」

「いや? 相内さんは俺に興味はあるがただ観察したいだけみたいだったぞ。

そういう最悪な趣味を持つ女が彼女でいいのか直哉は」

「いいんだよ。そこもかわいい。それにあんまり変なことしそうなら止めるし」

「直哉に言われて止めるタイプには見えないけど」

言うな。俺だってそう思う。

京子ちゃんは芯が強いから、他人がちょっとやそっとなにか言ったくらいで行動を改めたりはしない。

でもなんにも言わないよりはましだ。

それが彼氏からの進言ともあれば多少は耳を傾けてくれるかもしれない。

進言って自分で言っちゃってるのがまた微妙なんだけど。

「なおやがいいならいいけどさーー」

「いいんだよ。にしても寿直も気をつけろよ。

なにがあったのかは知らねえけど、次はその程度の怪我じゃ済まないかもしれないんだからな」

「気をつける。まあちょっとやそっとじゃ反撃できないだろうけど、少年法ってのがあるから厄介だよね」

「まて、寿直。お前は本当になにをしてきたんだ」

啓介がドン引きながらも寿直を問いただしている。

しかし寿直はなにも答えず、のらりくらりと躱している。

言いたくないなら仕方がないとはいえ、友達にあまり無茶はしてほしくないんだがな。

「そういや、なおやってさー」

啓介をあしらいつつ寿直が首をかしげる。

「あいうちさんのなにがいいの?」

「なにって。顔。器量、容姿」

「全部同じじゃねえか」

呆れたように啓介がつぶやいた。

ばっか、それくらい大事な要素なんだよ。

外見がきらいなやつとは一緒にいられないだろうが。

「啓介は見かけが身が手な奴と並んで歩きたいか?」

「そうは言わないけど」

「だろ? 見かけ大事。人間気に入るか気に入らないかなんて外見が9割を占めるんだよ」

なんて勝手な持論だけど。

そもそも京子ちゃんは全然見かけどおりの内面じゃないし。

なんにせよ、これ以上問題がないといいなあ。

怪我だらけの寿直を見ていると、そう思わずにはいられなかった。


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