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妹に欲しいな

朝、昇降口で靴を履き替えようとすると声をかけられた。

「おはよう、笹井君」

無視だ、無視。

こういうのに関わるとろくなことにならないし、それを昨日実証しちゃったし。

「ちょっと、挨拶くらい返してよね。はい、復唱。

『おはよう嘉木真下さん。今日も可愛らしいね』。リピートアフタミー」

「お前のどこが可愛らしいんだ? このちんちくりん」

「なっ」

あ、うっかり返事をしてしまった。

関わるまいと誓ったばかりなのに。

ちんちくりんこと嘉木真下はショックそうな顔でこちらを睨んでいる。

本当に機嫌の悪いネコ科動物みたいな女だな。

「わたしのどこがちんちくりんなのよ! そりゃ背は低いし胸もないし、お腹もぺったんこだけど、だけど!」

「完全なるちんちくりんじゃねえかよ。

あーー、また返事しちまった。もういい。で? 今日はなんなんですか、可愛らしい(笑)嘉木さん?」

「(笑)とかつけるな!! 別になんでもないわよ。かわいそうな同胞を見かけたから挨拶しとこうと思っただけで」

誰がかわいそうだこの女。

他人に可哀想とか失礼すぎるだろうがよ。

「俺が悪かった。お前は可愛い(笑)なんかじゃないな」

「わかってくれればいいのよ」

「お前は1ミリたりとも可愛くなんかなかった。お前に可愛らしい要素など一欠けらもない。

ただの失礼なちんちくりんだったな」

そう言って立ち去ることにする。

なんだって朝っぱらからこんな胸糞悪い気持ちにならなくてはならないのだ。

気分最悪。

後で昼食用の菓子パンむしゃむしゃしてやる。

「ちょ、笹井君! ごめんって。わたしが悪かったーー」

「うるせえ、人の名前を大声で呼ぶな! 俺は騒がず目立たず地味な高校生活を送るんだ!」

「いや、それは無理だと思うよ」

「冷静に言うんじゃねえよ。とにかく、悪いと思うなら今後俺に話しかけるな。お前の言動はいちいち腹が立つ」

「図星だからじゃないかな」

だ、か、ら!

そういうのがむかつくんだよ、この馬鹿女!

しかしこれ以上ここで言いあうのも目立ってしょうがない。

俺は嘉木を見捨てて教室まで走った。


幸い嘉木は追ってこず、無事に一人で2年2組の教室まで到着する。

すでに寿直と直哉は室内にいて雑談していた。

「はよ」

「おはよー、けいすけ」

「おはよう啓介」

鞄を机に放りだして二人の席の隣に座る。

なんていうか、朝からめっちゃ疲れた。

「んんん? けいすけ疲れてるね?」

「疲れてるよ。朝っぱらから嘉木にあっちまった」

「それでなんでそんなに疲れるんだ」

「絡まれて、煽られた」

寿直はその場面を想像したのかけたけた笑い、直哉は残念そうな顔をした。

いいよな。俺もそんな部外者みたいな顔したいわ。

「で? 嘉木さんがなんで啓介に絡むか理由はわかった?」

「一応な。嘉木にもいろいろあるみたいだ。しかし俺がそれにかかわってやる義理はない」

「へえ、理由言わないんだ」

直哉は面白そうな表情でこちらを見ている。

そりゃなあ。言うのは身内の恥をさらすだけな気がするし、嘉木にも悪い気がするし。

俺は嘉木が嫌いだが、わざわざ彼女の心の内を他人様に言いふらすほど屑ではない。

嘉木と違ってな!!

「ま、人にはそれぞれ事情があるわな」

「そりゃね。でも啓介は嘉木さんとは相いれない」

「無理無理。だって性格最悪だもんあいつ」

「おれには同類に見えるけどね?」

は?

今、寿直はなにを言ったのか。

俺と嘉木が同類?

「おい待て寿直」

「似てるでしょーー。口が悪いところとか、しょうこ先輩に悪い意味で影響受けちゃって性格歪んでるところとか」

「あはは」

寿直はぺらぺらと似ているところを上げて、直哉は爆笑している。

ふざけんな!!

あんな屑と俺を一緒にすんなっての!!

そりゃ口の悪さは認めるし、性格もいいとは言えない。しかしだな。

「ほら、けいすけ反論できない」

「う」

確かに反論しかねる。

俺と嘉木は同類だったのか?

つまり俺が嘉木を嫌うのは同族嫌悪?

なんてこった。

「傍から見てると嘉木さんと啓介って兄妹みたいだからね。啓介が気付いてないだけで」

「あんな妹いらねえよ!!」

そこでHR開始のチャイムが鳴る。

俺はそれ以上の反論の機会を失ってしまった。

妹。妹だと。

考えてもみなかったが、考えると背筋が寒くなるな。

いやいやいや、あれが妹はない。

同学年ってだけでも無理なのに家でまで一緒だなんて、ほんと無理。


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