優しすぎる君
グランタール王国の王女は有名だ。
第一王女は賢く聡明で
第二王女は明るく民の人気者
第三王女は神に愛され巫女になり
その誰もが美しく。
縁談の話は後を絶たないとか。
ある日、第三王女のカナリア姫が、魔族にさらわれた。王国の内外の者は慌て、悲しみ、怒りに燃えた。
そして、王はこう言った。
「娘を助けだした者には叶えられる範囲で一つ、願いを叶えよう。」
たくさんの人が助けに行ったが、戻ってきたものはいなかった。
そんな時、聖魔法学園に通う一人の男がたまたま授業の実習中に見つけ、魔族を倒し、助けだした。
国中が喜びにあふれた。
ーーそして、それを期にカナリア姫はその男、アレンフォルトに恋をしたのだ。
恋した乙女の行動力は凄い。
カナリア姫はすぐに父と母、つまり、王と王妃を説得し聖魔法学園に編入した。
しかしここで、思わぬ誤算が出現する。
アレンフォルトに恋した女性は自分だけではなかったのだ。しかも、身近にいるのは自分と同じくらいの美貌を備えている女性が数人。
しかし、カナリア姫は諦めなかった。
周りの女性を蹴散らし、アレンフォルトにアピールしまくった。
…が、アレンフォルトが恋愛に関して鈍感だったため、全て失敗に終わった。
ある日、カナリア姫にとって最大のチャンスが訪れる。
授業の実践で、パートナーになることができたのだ。
「ここで良い所をみせよう!」
カナリア姫ははりきった……が、はりきりすぎた。
ーードンッ
アレンフォルトに思いっきりおされる。
「危ない!」
カナリア姫は後ろにせまっていた魔獣に気づかなかったのだ。
結果、アレンフォルトは重症を追ってしまった。
「ごめんなさい!」
「いやいや!気にしなくていいよ。」
アレンフォルトは笑顔で許した。
アレンフォルトはどうしょうもないくらい、強かった。
……どうしょうもないくらい優しかった。
だから知らなかったのだ。
それは、たまたまだった。
夕方の6時頃、カナリア姫は帰る予定だった。
でも、途中で保健室に忘れ物をしたことに気づいたのだ。
初めてだった。
アレンフォルトが泣いていた。
アレンフォルトを抱きしめている女の子。
カナリア姫は理解した。
恋に関して、鈍感だったのではない。
アレンフォルトは、はじめからあの子だけをみていた。
だから、気づかなかったのだと。
どんな可愛い女の子でも、
どんな美人な女性でも、
アレンフォルトにかかれば普通の女の子に過ぎないのだろう。
だって、もう、恋をしていたんですもの。