導く道
雨宿りをするために屋敷に入ってもう2時間以上がたっただろう。
使用人さんは「自由に歩き回っていいよ」と言ってくれて、私はその言葉を聞いて書庫を出て他のところを探索することにした。
「そういえば…まだ二階に行ってなかったな…」
ふとそう思い屋敷の入り口から見えた幅の広い階段を上がる。
二階に上がると一階とは雰囲気ががらりと変わり壁紙は剥がれコンクリートがむき出しの状態、天井の隅には蜘蛛の巣が張り巡らされていた。
「なんか、息苦しいような」
一階とは違う雰囲気に不安がつのる
廊下を少し歩くと奥に扉を見つけその扉に近づいてみて見ると、扉は入り口の扉以上にボロボロで獣の爪で引っ掻いた跡が痛々しく残っていた。
ドアノブを捻って開けようとしても扉はびくともしない、私は無理矢理こじ開けようと扉に勢いをつけて飛び込んだ。
ガタンッと大きな音をたてて扉が開く
すると目の前には…
十字架に鎖で縛られている黒髪の男の人がいた_____
気を失っているのか首はだらんと力なく垂れ下がり髪の毛は長く伸びている
私は恐る恐る十字架の方に歩いてく。
歩いていると足下にあったガラスの板に気付かずパキンッと少し大きな音をたててしまった。
顔を上げて男の方を見るとその音に目が覚めたのかゆっくりと顔をあげる
男の顔は前髪で隠れて見えないが…
髪の毛の隙間から血のように赤い目がこちらを見ていた
「あ…」
その目を見てから私はそこを動くことができなくなった
「ナイナイナイ…大切ナモノガナイ……カエセ…ウゴクモノヲカエセ!!!」
最初の方はボソボソと言っていたのに最後の方には怒りにまかせた声で叫んだ。
「おっと、この部屋に入るとは…エフィちゃんは冒険家だね」
はははっと笑う聞いたことのある声、振り返ると…
さっきまで優しい目をしていた使用人さんの目は猫のような目をして怪しい雰囲気を出していた
「あははっ、そんなに怖がらなくてもいいじゃないか。言ったでしょ?君を取って喰ったりはしないよ」
口を三日月のようにして笑う
私は力を振り絞って使用人の横を通り扉の方に走った。
早くこの部屋から出よう。その一心で扉を開けると
そこは廊下ではなく何処までも続く暗闇だった
「もう逃げることはできないよ。君はこの道を選んだんだ、過去は変えられない」
私に背を向けた状態で明るい声で話す使用人。
「この道は君の未来を自由に変えられる道だよ、君が動くと未来が変わる動かなければ未来はそのまま時を刻むよ」
「まぁ、このまま行くと君の未来は最悪だよ。まず目の前の男は死ぬ。君は家に帰って泣き叫ぶ」
私のことを舐め回すように見てくる
「み、未来って?この人…死んじゃうの?」
「嗚呼、死ぬよ。でも君は動ける、コイツを助けることができる唯一の人材さ」
「私が動けば助けられるの?」
質問すると使用人は楽しそうにもちろんとうなずく
「コイツを助けて損はしない、むしろ君を幸福に導く」
幸福に導く?どういうことだろう…
「それは僕は教えられない。だって教えたら君が壊れるからね、ハハハハッ」
私を嘲笑うかのように笑い使用人は黒い霧のような物に包まれ姿が消える。
使用人だけではなく十字架に貼付けられていた男も消えていて、かわりに4つの扉があった。