屋敷と謎の男
私はお母さんとお父さんの言う事を聞かないで大好きな遊び場に行くため家を飛び出した。
森の中にある遊び場、そこは家より高いところにあって山を登らないと行けない。
登らないと行けないからか大人が遊び場に来る事はほとんどない、子供の絶好の遊び場になっている。今日はどんなことをして遊ぼう
そんなことを考えて歩いていると…
突然、地面を鋭く突き刺すような雨が降ってきた
お母さんたちの言う事を聞かなかったから罰が当たったんだと思い酷く後悔した
遊び場にある大木の下で雨宿りしよう、無我夢中で獣道を走り続ける。
通い詰めた道だ感覚で行けるはず、雨が目に入らないように目を瞑り走った
気がつくと体を打ち付けていた雨はなくなっていた。
靴は雨水を多く染み込んでいて靴下は気持ち悪いほどびしょ濡れだ
ふと顔をあげて前を見てみるとそこには……
そこには大木の樹皮ではなく大きく今にも外れそうな扉があった。
後ろを振り返るとまだ雨は降っていて家に帰れそうにない。
しばらくだけこの屋敷の中で雨宿りしようと思い大きく重い扉を開けようとしたら扉はギギギと軋む音をたてながらやっと開いた
屋敷の中に入ると中は外見と正反対でとても綺麗で今も誰かが住んでいそうな雰囲気を残していた。
少しだけ屋敷の中を探索していると私はある扉が気になりだした。
好奇心旺盛な私は開けられずにはいられずその扉を開けて部屋に入る
中は書庫のようなところで本棚には難しそうな本がたくさん並んでいた。
「難しそうな本ばっかりだ…読めない」
書庫のような部屋を歩き回っていたら
「やあ」
いきなり私の後ろから声が聞こえて振り返ってみると
扉の前に背が高く黒いフードを被っている男の人が立っていた
「だ、誰…」
「そんなに身構えなくてもいいよ、君を取って喰ったりはしないから」
男の人はクスクスと笑った
この屋敷に住んでいる人だろうか
それならあいさつをしないと、お母さんにお世話になる人にはきちんとあいさつをしなさいと教えられたから
「わ、私はエフィっていいます…」
「僕は使用人、ここに住んでいるモノさ」
使用人さんは私のぎこちないあいさつに気がついたのか「そんなにかしこまらないでいいよ」と笑ってくれた
しばらくすると使用人さんは私にホットミルクを作ってくれた
出来立てのホットミルクを飲むと冷えきった体が少しずつ溶けていくような感覚に襲われ心地好くなる
使用人さんはフードをとると整った顔立ちをしていて綺麗な茶色い髪色をしているが寝癖のようにボザボザな髪型をしていて残念だ
「君…エフィちゃんはなんでこんな所にきたの?」
「えっと…大好きな遊び場に行こうとしたら雨が降ってきて、それで気がついたらここについてた」
そう言うと使用人さんはうーんと眉間にしわをよせて「アイツが道を変えた…いや、でも」とブツブツと何かを呟き始める
「何か難しいことでも考えてるの?」
「え?」
いきなりの私の言葉に驚いたのかポカンとした顔をしている
「なんでそう思うのかな?」
「えっと…私のお母さんがいつも本や紙に何かを書いているときそんな顔するの」
少し片言になりながらも言うと使用人さんはへぇ、と呟き
「エフィちゃんはよくお母さんの事をよく見ているね。お母さんが大切かい?」
「うん!お母さんもお父さんも大好き!大切だよ!」
質問に私は考えもせずすぐにその答えを言った
すると使用人さんからは笑顔が消え真剣な顔になり
「その大切なお母さんやお父さんが急にいなくなったらどうする?君は…保つことができるかな?」
お母さんとお父さんが急にいなくなる…
私にとって信じられないことだった
毎日一緒に暮らしていて家族三人幸せに暮らしている
それが私一人だけになる
そんな事を考えたら私の目には涙が溜まりそれが自分の膝に落ちた
「ごめんね、嫌な事を考えさせて。大丈夫だよ」
大丈夫と私の頭を大きな手で優しく撫でて微笑んでくれた
でも…その手は氷のように冷たかった