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第2章 白い空
住宅街の朝は静かだ。
自転車。ゴミ収集車。遠くの犬。
そんな朝の中を由香は歩く。
急がない。遅すぎもしない。
空を見上げる。白い。
青でも灰色でもない。ただ白い。
ノートを開く。
7:10 白い空
閉じる。
また歩く。
歩道橋。
通勤の人が増えている。
車の流れ。電車の音。町が動き始める。
手すりの影。朝の光が長く伸びる。
ノートを開く。
7:24 歩道橋の影
昼。
小さなカフェ。ベルが鳴る。店のマスター片桐が顔を上げる。
「おはよう」
「おはようございます」
由香は窓際の席へ座るといれたてのコーヒーがそっと差し出される。
窓からの光がテーブルの端に落ちる。
ノートを開く。
11:18 カフェの光。
片桐はそれを見るが何も聞かない。由香はその静けさに慣れていた。
書き終えると由香はコーヒーを口に含んだ。この苦さは変わらない。




