第八話:兄の追及と絶対領域の危機! タナカVSレオンハルト
第一節 兄の疑惑と監視体制
アイリスが騎士団の任務で屋敷を空けている間、兄レオンハルトはタナカへの監視を強化していた。リナとタナカが秘密裏に外出していた事実は、レオンハルトの警戒心を極限まで高めていた。
「タナカ。私の妹リナと勝手に出歩いたこと、どういうつもりだ」
レオンハルトは、侯爵家の応接室でタナカを呼び出し、鋭い眼光で追及した。レオンハルト自身も王立騎士団に所属しており、その威圧感は強烈だった。
タナカ(田中一郎)は冷や汗をかきながらも、ポーカーフェイスを保った。
「失礼しました。リナ様のご要望で、彼女の魔導適性向上のための実地調査を行ったまでです。彼女の才能は類まれなるものですから」
「魔導適性だと?お前の目的は何だ。なぜ貴様が出現してから、アイリスの『絶対領域』の性能がわずかに落ちたように感じる?」
レオンハルトは勘が鋭い。アイリスには気のせいだと思わせている変化まで見抜かれていた。
(まずい、レオンハルトは騎士団でも特に優秀な魔力探知能力を持つ。俺の存在の根源であるブラジャー本体に近づきすぎている!)
第二節 魔力探知と核心への接近
レオンハルトは立ち上がり、タナカに近づいた。
「答えられないなら、力ずくで調べるまでだ」
レオンハルトは、魔力探知のユニークスキルを発動させた。彼の魔力は、タナカの全身をくまなくスキャンする。タナカは必死で、人化の核である「コア」の存在を隠そうとした。
「貴様から感じる魔力は、異質だ。まるで、別の魔導具の核を強引に貼り付けたような…」
核心に迫るレオンハルトの追及に、タナカは焦りを感じた。アイリスにはバレていない秘密が、彼女の兄に暴かれようとしている。
その時、リナが慌てて応接室に飛び込んできた。
「お兄様、やめて!田中さんは怪しい人じゃない!私の先生なの!」
リナは必死にタナカをかばい、レオンハルトとタナカの間に割って入った。
「リナ!邪魔をするな!こいつは危険な存在かもしれないんだ!」
「違う!田中さんは…田中さんはお姉様と同じくらい、私にとって大切なの!」
リナの純粋な叫びは、タナカの胸を打った。そして、その叫びとリナの体から溢れた微かな魔力は、レオンハルトの探知スキルを一時的に混乱させた。
第三節 決別と新たな協力体制
レオンハルトは妹の魔力の乱れに驚き、探知を中断せざるを得なかった。リナの魔力の純粋さが、レオンハルトの探知を妨害したのだ。
「…リナ。お前がそこまで言うなら、一旦引こう。だが、タナカ。貴様から目を離さない。もし妹たちに危害を加えるようなことがあれば、この手で切り捨てる」
レオンハルトはそう言い残し、立ち去った。タナカは、心臓の鼓動が収まらないまま、リナに感謝した。
「リナ様、助かりました。ありがとうございます」
「ううん。田中さんがお姉ちゃんと同じくらい大切なの、本当だもん。でも、お兄様、すごく疑っているよ…」
タナカは、このまま侯爵家に滞在し続けることは困難だと悟った。
(俺が侯爵家にいれば、アイリス様が騎士団の任務に集中できない。それに、レオンハルトの探知能力は危険すぎる。騎士団でのアイリス様のサポートと、リナ様の特訓を両立するには…)
タナカは決意した。「リナ様。俺は侯爵家を離れます。このままではアイリス様とレオンハルトに迷惑がかかる」
リナは寂しそうな顔をしたが、すぐに強い目つきになった。
「分かった。でも、絶対、私と連絡を取ってね!私の騎士学園の受験準備、田中さんなしじゃ無理だもん!」
タナカは力強く頷いた。「もちろんです。俺は、あなたとアイリス様の秘密の守護者ですから」
第四節 騎士団への潜入
その日の夜、タナカは侯爵家を抜け出した。向かう先は、アイリス様が所属する王立騎士団の駐屯地だ。
(アイリス様が騎士団にいるなら、俺もその近くにいなければならない。人化したこの体で、アイリス様に警戒されない形でサポートする…)
タナカは人化の姿と能力を利用し、騎士団の雑用係として潜り込むことを計画した。騎士団の雑務は多忙であり、不審な魔力に満ちたタナカのような存在は、その多忙さにかき消されやすい。
数日後。王立騎士団の駐屯地で、タナカという名の、物腰の柔らかい青年が雑用係として働き始めた。
アイリス様は、騎士団で見かけたタナカに驚きつつも、「まさか本当に魔導師か何かで、装備の調整に来たのか?」と半信半疑だった。しかし、タナカが雑用係として常に周囲をうろついていることに、どこかブラジャーの時と同じような安心感を覚えている自分に気づき、首を傾げるのだった。
(まさか、このタナカという男が、私のブラジャーの意識だなんて、絶対にあり得ないわ。きっと、あの高性能装備の影響で、私の心が変な妄想を抱いているんだわ!)
アイリス様は、タナカへの警戒を解かないまま、今日も騎士団の任務に向かった。秘密の守護者であるタナカは、ブラジャー本体と人化後の姿の二重体制で、最強の姉妹の守護者としての道を歩み始めたのだった。
皆様、物語をお読みいただきありがとうございます。王立騎士団所属のアイリス・ライトです。
兄のレオンハルトがタナカを激しく追及していましたが、リナのおかげで、タナカはなんとか屋敷を追い出されることなく済みました。本当に兄は過保護で困ります。
しかし、そのタナカが、今度は騎士団の駐屯地に現れたのには驚きました。彼は雑用係として働いているようですが、私としてはまだ警戒を解いていません。
ただ、不思議なことに、彼が近くにいると、私の絶対領域の性能がなぜか安定しているように感じるのです。以前は彼が屋敷に来てから少し性能が落ちたような気がしていたのですが、今はむしろ、最高のコンディションに戻ったような……。やはり彼は、私の魔導装備に何らかの形で関わっている魔導師なのでしょうか?
兄はまだタナカを強く疑っていますが、リナはタナカを先生として信頼していますし、騎士団の雑務を熱心にこなす姿を見ていると、私も少しだけ警戒を緩めてもいいのかな、と思えてきました。
これからは騎士団での任務も本格化します。タナカが近くにいるという、この奇妙な状況が、私の騎士としての成長にどう影響するのか。そして、私の大切なリナの受験も控えています。
これからも、私の最強の装備と、妹の成長、そしてこの怪しい雑用係タナカの動向を、どうぞ見守っていてくださいね。




