第六十四話:日常が修羅! レベル9999の住民たちと、狂った朝の市場
魔王との死闘を終えた姉妹は、修羅の世界で最も栄えている中立都市「アシュラ」の宿屋で朝を迎えました。
窓を開けた瞬間、アイリス様が眉をひそめます。
「……お姉様、見てください。あそこで八百屋の店主が、『音速』でキャベツを千切りにしていますわ」
窓の下では、レベル9992の店主が、目にも留まらぬ包丁さばきで野菜を加工中。 あまりの速さに空気が摩擦熱で発火し、キャベツが切れると同時に「焼きそば」に変わっています。
(……効率的ですね。ですが、あの包丁、神話級の魔鋼でできていませんか?)
二人が朝食を求めて街へ出ると、さらなる「異様な光景」が次々と目に飛び込んできました。
犬の散歩: 飼い主の老婆(レベル9995)が、散歩中の大型犬(レベル9990)に引きずられています。 しかし、引きずられる老婆の体がアスファルトの地面を削り取り、さながら道路工事のようになっています。
公園の子供: 「たかいたかーい!」と親に放り投げられた赤ん坊が、 そのまま雲を突き抜け、衛星軌道まで到達。 数分後、正確に親の手にキャッチされました。重力仕事しろ。
街角の喧嘩: 「お前の顔が気に入らない」と始まった若者同士の殴り合い。 一撃ごとに空間にヒビが入り、次元の裂け目から異世界の魔物がこぼれ落ちていますが、 通りすがりの掃除婦(レベル9999)がほうき一本で魔物を塵にしています。
「……この世界、やっぱり何かが根本的に狂っているわ」
アイリス様が、飛んできた「音速のチラシ」を素手で真剣白刃取りしながら呟きました。
「ええ。ですが、この異常な環境こそが、私たちの数値を1億へと導く糧なのですわ」
リナ様は、自動販売機(レベル9999・耐衝撃仕様)に、 指一本のデコピンで硬貨を叩き込み、ジュース(魔力回復薬・極)を購入。
(……お二人とも、すっかりこの光景に馴染んでしまいましたね。 前の世界の聖騎士が見たら、泡を吹いて気絶しますよ)
観測者ナルミ様が、空中モニターでポテトチップスを食べながら現れました。
「おっはよー! どう? 修羅の日常。 ここの住民、『朝のジョギングで大陸半周』とか普通にするからね。 あんたたちも負けてらんないよ!」
「……当たり前でしょ。 タナカを支える者として、せめてあの『赤ん坊』よりは高く跳べるようにならないと」
アイリス様が、真顔でとんでもない目標を掲げました。
最強姉妹の「普通」が、着実に修羅の基準へと上書きされていく。 そんな平和(?)な一日の始まりでした。
あとがき 観測者 ナルミ
おはー! 観測者のナルミだよ!
修羅の街「アシュラ」、相変わらずカオスだね。 さっき、アイリスさんが「このリンゴ、硬いわね」って言いながら噛み砕いてたけど、 あれ、実は「金剛石より硬い魔石」なんだよね。
それを普通のリンゴ感覚で完食するあたり、 彼女たちの数値も順調に「人間離れ」してきてるよ。
タナカ君も、あの「衛星軌道まで飛んだ赤ん坊」を見て、 「今の滞空時間なら、ブラジャーの通気性を試すのに最適ですね」 とか分析してたでしょ? 君も立派な修羅だよ!
さあ、日常を楽しんだら、次はもっと数値が稼げる「ヤバい場所」へ行こっか。 あ、ちなみに明日のゴミ出しは、「爆発物」がデフォだから気をつけてね!




